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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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ラジオの時間



今や地下東京の誰もがラジオの声に耳を傾け、石崎の声に聞き入っていた。聞き入っていたが、しかし同時に誰もがイラつく思いでいた。石崎の語る言葉はどこかの学校の校長先生の話のように長くダラダラと要領を得ず、〈ハイペロン爆弾〉なる兵器がどのようなシロモノで、使うとどういうことになるかまったくサッパリわからない。石崎は〈愛〉の説法モードに入ってしまってオンオンと泣きながら、自分が今していることはすべて〈愛〉のためなのだ、と訴えるばかりなのである。

『〈愛〉の力を信ぜよ! 〈愛〉を信じる者のみ〈愛〉によって救われる!』

この男の頭の中では、きっと花火がパンパンと打ち上がっているに違いないのだが、

「それでその、なんとか爆弾ってなんなんだよ」

「さあ。そもそも、何爆弾って言ったっけ」

「いや、おれには、なんとかペロンしかわからなかった」

「おれも」

などと言う会話があちこちで交わされている。市民球場のスタンドだ。

近藤に、野球選手の仲間が言った。

「そのペロン爆弾だけど……」

「おれに聞いても知らないぞ」

「とにかく使えば、この地下都市は消えてなくなるものなんだろうな」

「かもな」

「でなきゃ脅しにならないだろう」

「うん」と言った。「でもなんだか本人は死なないつもりでいるみたいだな」

「だからそういう爆弾てことだろ。爆発すればこの街の人間みんな死ぬけれど、石崎とその〈僕(しもべ)〉だけは死なない爆弾……」

「そんな爆弾があってたまるか」

「あるかどうかの問題じゃない。肝心なのは石崎自身がそのつもりでいるってことだ。それがそういう爆弾だと本気で信じ込んでいる……」

「うん」

と言ったときだった。球場の外で『うおお』と歓声が上がっているのが聞こえてきた。酸素が足りずに苦しげだが、『石崎先生〜、石崎先生〜』とコールが叫ばれているらしい。

「やれやれ。どうやら〈僕〉どもも、同じ結論に飛びついたようだぞ」

『そうだーっ!』

と、ひときわ大きな集団の叫ぶ声が聞こえてきた。地下東京の都庁のある方角だ。

『石崎先生ーっ!』

「ありゃ都知事の原口じゃねえのか」

「あれも石崎のシンパだからな」

と近藤は言った。せんせー、せんせー、せんせー……と、〈おっぱいヒトラー〉と呼ばれる男の声が地下都市に谺している。