敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
上出来
「〈面〉のものが〈線〉になるなら後はその上を行くだけでいい。敵がそのどこかにいるなら、ただまっすぐ前を見て進むだけ……」
〈ヤマト〉第一艦橋で真田が言った。眼はメインスクリーンの、南部が算出した地図上の〈線〉を見上げている。
遂にやった――そう思った。この〈線〉が出せたのならば上出来だろう。〈面〉どころか、最初は冥王星と言う大きな球体のどこに〈魔女〉が居るのか見当もつかなかったのだ。
けれどもやった。おれはやったぞ、古代守よ。おれは〈ジャヤの頂(いただき)〉を越える〈ココダ〉のルートを見つけたのだ。後はお前の弟が、お前の仇を取るのをここで見守るだけだ。
そうだ。行け、古代進。〈魔女〉に勝ってこの〈ヤマト〉に帰ってきてくれ。お前にはまだやることがあるはずだ。兄に代わって〈でっかい海苔巻〉を見る務めが……。
そしておれも、〈イスカンダル〉でサーシャがおれに見せる気だったすべての答を見ねばならない。そのためにもお前の力がきっとまだ必要なのだ。
だから行け、古代、と真田は思った。横で南部がペンを握って祈るようにつぶやいていた。
「頼む、頼む、頼む、頼むぞ……後は、君達が頼りだ!」
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之