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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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「うむ。南部! お前は敵の衛星を片っ端から狙い撃て! 太田はすべての衛星の位置や軌道を記録して新見に送れ! 相原、お前は衛星がどこからコントロールされているかを探れ! 森は引き続きビームの回避!」

「はい!」

若い者達が叫んだ。次いで沖田は徳川を向いた。

「機関長。船を少々振り回すぞ。エンジンの維持に努めてくれ」

「ふむ。全開にするわけにはいかんのじゃろうな」

「そうだ。罠がこれだけのはずもないことだからな。今は焼け付かすわけにはいかん」

「だからと言って、制動と急加速を繰り返していては長くもたんぞ」

「わかっているさ。長くはかけん」

沖田は言って、メインスクリーンを睨んだ。それから叫んだ。

「島! 船を転進させろ! ピッチ上20、ヨー右に40!」

「え? それって……」

島が言った。支持に従い操縦桿を動かしながらも、

「これは、冥王星への直進コースになりますよ」

「その通りだ。だが必要なことなのだ。あの衛星がなんなのかを知るためにもな。だからまずは突っ込みをかける」

「わざと敵に撃たせると?」新見が言う。「でも、少し分析すれば、あれが何かわかるかも……」

「いいや。敵は、そんな時間を決して与えてくれんだろう。森の眼も心配だ。長くかけたらまた昏倒しかねないのはわかりきっとる」

「そ、それは……ですが、これ以上近づいて、直撃を受けたら今度こそ致命傷になるかも!」

「そうです!」と島も叫んだ。「本当にこのまま行くんですか!」

〈ヤマト〉はすでにその船首を冥王星に向けている。星はすでに半月形に近いところまで欠けて窓の向こうにあった。さっきより少し大きくも見える。

そうだ、と真田も思った。星に近づけば近づくほどにビームの射程に深く入り込むということ。当たったときの威力もそれだけ増していき、遂に一発喰らっただけで〈ヤマト〉はふたつにヘシ折られるところにまで自(みずか)ら行くことになるだろう。あの奇妙な衛星が不完全な兵器であると思うなら、突撃は弱点を見極めてからにするべきでないか――真田としてはそう思えた。だが沖田は言った。

「いいや。やつらはこの〈ヤマト〉を一撃に仕留めることはできん」

「は?」と新見。「ですが……」

「砲の威力の問題ではない。そうはできんわけがあるのだ」沖田は言った。「考えてみろ。わかるはずだ」