敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女
密接
〈目標3〉がビームを撃つ。その寸前に、〈ヤマト〉艦橋で沖田はまた「ロケットアンカー!」と叫んでいた。
〈目標1〉の残骸を、〈目標2〉めがけて投げてその後は宙を引きずってきたロケットアンカー。そのロケットがまた点火され、冥王星の白茶けた氷の大地に突き刺さる。
そのとき、〈ヤマト〉は〈目標3〉に、もう少しで球形艦首を追突させるところまで迫っていた。錨に繋がる鎖がピンと伸び切って、その〈ヤマト〉の動きを止める。
いや、止まるわけがなかった。〈ヤマト〉は宙でつんのめり、船体を大きく振ってでんぐりがえった。
一瞬前にいた空間を〈目標3〉のビームが撃つ。そのとき〈ヤマト〉はグルリとその巨体を一回転させながら、敵艦の上を飛び越えていた。
犬が鎖で繋がったまま、別の犬を飛び越えるようにだ。当然ながら〈ヤマト〉と地面を繋いでいる鎖は〈目標3〉の甲板を叩いて巻き付くようになった。
〈目標3〉もまたつんのめり、自(みずか)らその船体を鎖に絡(から)ますように捻(ねじ)る。
その凄まじい振動が、鎖を通して〈ヤマト〉に伝わってきた。けれどもこれらの動きはすべて予(あらかじ)め計算されたものでもあった。ビリビリ震える操縦桿を島は必死に操り、船を安定させる。
〈ヤマト〉は鎖で動けなくした〈目標3〉のガミラス戦艦のすぐ真横に、舳先を揃えてピタリと並んで停止した。それはまるで上から見れば一隻の双胴船のようでもあった。
ただし、〈目標3〉の砲はすべてが〈ヤマト〉と逆の方角に向けられているのに対し、〈ヤマト〉のそれはすべてが敵を向いている。
三掛ける三で主砲が九門。そして副砲が六門だ。合計十五のそのすべてが真横を向いて、すぐ真横の敵に対して突っつかんばかりにしているのである。
完全な零距離射撃の態勢だった。これで撃てばどうなるか、誰にも理解できるだろう。
「てーっ!」
艦橋で南部が叫んだ。
作品名:敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女 作家名:島田信之