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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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轟沈



「お……」

とシュルツは顎を半分外しかけ、ふたつの目玉を落としてしまいそうな顔になって言い、そこでピタリと固まってしまった。この男は皮膚の色が青い以外は地球人と変わらない――人種については地球のどれに似てるとも言い難いものがあるが――けれどもその頭はかつて、彼が若い頃には髪がフサフサであったのかもしれないけれど今はハゲ上がっており、両こめかみから襟足にかけて薄く残っているばかりとなっていた。地球人類の中にも一部にそうなってしまう者がいるのが知られているが、おそらく同じ遺伝だかホルモンだかの侵略を頭皮が受けてしまったのだろう。

それは気の毒なことである。残ったわずかな毛が白いのも、やはり遺伝とかホルモンとか、親から受け継いだ体質や内分秘腺に問題があるのだろうと思われるが、ただ気の毒と言う他にない。

けれどもたとえ彼の髪が黒々のフサフサであったとしても、今のこの瞬間に白くなってバサバサとみな抜け落ちているかもしれない。今のシュルツが顔に浮かべる恐怖の表情は、横で見る者にそんな思いを与えるのに充分だった。

「おお……」

とまたシュルツは言う。この男の髪が、いや、この男が今こんなふうになってしまうのも無理はなかった。彼が見つめる画面の中で、自軍の戦艦三隻が、地球の〈ヤマト〉一隻に瞬(またた)くうちに殺られてしまったのである。

特に三隻目が沈む光景は、彼の心を打ち砕いた。〈ヤマト〉が真横に向け並べた砲身から、一斉に光が伸びて船を撃つ。それはなんだか〈ヤマト〉に櫛で、ハゲと知ってる己の頭を突っつかれたように彼は感じた。

「そんな……」

とつぶやく。十五のビームを零距離で喰らった船が死なずに済むはずがなかった。それはまさに轟沈だった。

攻撃を受けて一分と経たずに船がドーンと沈む。それを地球の日本語では〈轟沈〉と言う。無論シュルツはそんなことは知らなかったが、十五の穴が開けられた船はもはや船ではなく、一瞬にして弾けてすべてバラバラに飛び散らばるしかないものだった。

爆発四散。船が轟沈するさまをシュルツは眺めやるしかなかった。