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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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古代が一番、山本が二番



「ここはおれがやるしかない……」古代は言った。「そういうことだな」

『隊長』と、山本の声が通信で入ってきた。『わたしが……』

「いや、ここはおれが行く」

『しかし』

とまた山本が言った。けれどもそこで加藤の声が、

『いや、おれも、ここはアタマの仕事と思うよ。山本、お前はよく見ていろ。ダメなら次はお前がやるんだ』

『わかりました』山本は言った。『ですが隊長。その代わり、敵を討つより、回避を優先してください。そのデータを元にして、死ぬ覚悟でわたしが突っ込む。それで成功の率が上がる』

「待て。そんな……」

言ったけれども、

『いいえ。そういうもののはずです』

と返された。古代は言葉を続けることができなかった。

そうだ。そういうものなのだ。言われずとも半ば承知していたことを、あらためて山本に釘を刺されただけなのだ。ここはどう見てもおれがまず敵に向かわねばならぬ局面だが、それは山本に見せるためのリハーサルの意味もある。

おれはダメならあきらめて次に任せても構わない。それが指揮官と言うものだから――最初に死ぬことはむしろ許されぬのだ。

けれど、山本は違う――そういうことになってしまう。あの穴ぼこの中にミサイルを射ち込むのは、〈タイガー〉では難しかろう。おれがダメなら、山本が何がなんでもやらねばならない。

そういうことになってしまう。〈ゼロ〉は二機しかないのだからだ。当然、たとえ自分が死んでも、と言う話になってしまい、事は〈カミカゼ同然〉どころか、〈カミカゼそのもの〉と言うことに――。

そんな、と思った。いつか見た光景が古代の頭をよぎった。地球だ。沖縄の海が干上がった赤い地の上で、基地が爆発した後に空高くから九十度の垂直降下をしてきた機体。〈コスモゼロ〉。おれの〈がんもどき〉を狙う無人戦闘機に体当たりしてそのまま墜ちていった――。

本来ならばこの機ではなく、それが〈アルファー・ワン〉だった。山本は、昨日に言った。おれに向かって、『二度と隊長を失いはしない。あなたはわたしが護る』と。

今この〈ゼロ〉がやろうとするのはあれの再現と言ってもいい。急降下制限速度ギリギリの、機体が空中分解するか自分がGで失神するか手前の衝撃降下を掛け、地面に激突せずに済む寸前でミサイルを射って機を引き起こす――それができねば、対空砲火で蜂の巣だ。そしておれが失敗したら――。

山本は、あの日、本当の〈アルファー・ワン〉がしたのとまったく同じことをやらねばならないことになる。

確かにおれがまず最初にやるのを見届け、その後からやったなら、敵に核を喰らわせられる確率は上がることだろう。しかしおれがやるのを見るのは、敵もまた同じなのだ。対空ビームを撃つ者達に、上空で待つ戦闘機ども――。

〈二番手〉として飛ぶ山本の方がはるかに危険だ。本当ならば、おれが死に、山本が生きるべきなのに。

そうだろう。本当ならばおれなんて、〈アルファー・ワン〉を名乗る資格なんかない。隊長らしいことなんて、この作戦でもやっぱりてんでできちゃいないんだから。

それでも、と思った。「わかった」と言った。要するに、おれが一度で成功させればいいことなんだ。

そうだろう。ならば危険な〈二番手〉を山本がやる必要なんてない。それでこそ隊長。〈アルファー・ワン〉。

それがあの日に沖縄でおれを護って死んだ真の隊長に報(むく)いる道だ。

そう心に思い決めた。古代は機器を操作した。火器管制装置のモードを〈対地攻撃〉に変え、〈核ミサイル〉を選択する。照準器の表示が合わせて切り替えられる。

上昇。即座にレーダーが対空砲火の警告を鳴らす。

古代は構わず高度を上げた。