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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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そうだ。百の船を避難させ、〈ヤマト〉が来れる状況を自(みずか)ら作ったのはそのためだ。それは決して、波動砲一発で星が吹き飛ばされるのを恐れたというだけではない。何より〈ヤマト〉を捕まえて、波動砲を調べたい――その考えがあるからなのだ。タイタンでは囲い込みが充分にできず〈ヤマト〉が脱出するのを許した。けれどもこの冥王星でそうはさせない。万全の態勢で待ち構え、今度は逃がさず生け捕ってやる――敵はそのように考えているに違いないのだ。

「諸君。しかしこれもまた、むしろわしが仕組んだことだ。敵がこのような作戦で〈ヤマト〉を攻撃してくるのは、わしは予想していたのだ。そしてこうも予想した――敵は必ず強力なビーム砲台を持ってるだろうが、その力は加減される。〈ヤマト〉に深手を負わせないようビームの力を弱めてくる、と」

そうだ。思った通りだった。この奇妙な衛星ビームは、間違いなく直撃すれば〈ヤマト〉を大破させるだけの威力を本来持っている。にもかかわらず、強烈な一打をまだ受けていない。喰らってきたのはすべて〈ジャブ〉だ。

撃てないのだ。船の芯まで届くような強いビームを敵は撃てない。撃てるのに撃てない。そうであろうと沖田は予想していたが、確かめなければならなかった。この戦いに勝てるかどうかは、何よりそこにかかっていたのだ。

冥王星には罠がある。いつか〈ヤマト〉のような船が来ると想定して備えた武器が――そんなことはわかっていた。それは〈ヤマト〉を決して逃がさず、確実に仕留めうるものであるだろう。まともにやれば勝ち目はない。

だがしかし、その力を充分に生かせぬようにしてやれたなら? 罠の実体を突き止めて打ち破る策を講じるだけの時間を稼ぐことができたら?

〈スタンレーの魔女〉に勝つ望みはそこにしかあるまい。だから賭けるしかなかった。

敵は〈ヤマト〉にジャブしか撃てない――まずはひとつの賭けに勝った。後はどこまでこの船が敵のそのジャブに耐えられるかだ。

「すまん。諸君。今しばらくこらえてくれ。この戦いに勝つためには、敵に『〈ヤマト〉を捕獲できる』と思わすことが必要なのだ。この罠を抜け出せるかもその一点にかかっている」沖田は言った。「そうだ。抜け出す道はある。これは決して完璧な罠などではない――わしはそう確信している。ガミラスは実はまともにやったならむしろ〈ヤマト〉に勝てないために、こんな仕掛けを使ってくるのだ。星全体を隈なく覆うシステムなど必ずどこかに無理があり、弱点を抱えているに違いない。だから、そこを見つけて突けば勝てる!」

言った半分は強がりだった。それでも決して間違ってはいないはずと言える考えでもあった。ともかく、敵の罠の刃をナマらすことには成功した――後はナマクラ攻撃に船がどれだけ耐えられるかだ。

それはクルーひとりひとりの力にかかっているのだから、今はこう言うしかない――『すまん』と。そう胸に唱えつつ、沖田は腹が捻(ね)じ切れるような痛みをこらえ、最後の声を絞り出した。

「以上だ。諸君、力を合わせ、この状況をしのいでくれ」