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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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白髭危機一髪



『わかりました。あの衛星はビームを反射させるんです』

山本が〈糸電話〉で告げてくる。けれども古代は何を言われたかわからず、「はん?」と聞き返した。自機の情報分析機器は冥王星表面の走査を続けており、古代も機の前方に何かあるなら見逃さぬよう注意を払っていなければならない。空の上の事については山本に任せていたのだが、

『あの衛星の四枚パネルは一種の人工重力装置で、空間を曲げる力を持っているようです。それも「曲げる」と言うよりも、カクッと折り曲げてしまうような……』

「カクッと?」

『ええ。それで宇宙に鏡を置くようにしてビームをカクカク反射させて敵を撃つ兵器なのだと思います』

「カクカクと」

『はい。そうやってひとつの砲で丸い星の全体をカバーするようにしてるのだと……』

「カクカクとか」

『ええ。カクカク……』

「そんな」と言った。「冗談みたいな兵器があるかよ」

『しかしそうとしか思えません。それで今〈ヤマト〉は狙い撃たれてるのだと……』

「わかるけど……でも、そんな。そんなのどうすりゃ躱せるんだ」

『躱せるとは思えません。星の遠くにいればともかく、近づいてしまった後は……おそらくこれは、〈ヤマト〉のような戦艦が星に取り付くのを防ぐための兵器です。敵は万全の備えをして我々を待ち受けていたのだとしか……』

「そんな」

とまた言った。だがそれ以上言葉が出ない。

〈ヤマト〉がビームに貫かれ、沈む光景が頭に浮かんだ。カクカクと鏡返しで星の周りをめぐるビーム? そんなものに狙われたら、逃げ場なんかあるわけがない。いや、何しろあれだけの船だ。一発二発たとえ直撃受けたとしても、よほどのことがない限りそれで沈みはしないかもしれんが。

だからと言って長くもつはずがない。〈ヤマト〉はナントカ危機一髪ゲームのオモチャの樽のように、四方八方からビームを刺され、あの白ヒゲを天辺からポンと飛ばしてオダブツとなってしまうに違いないのだ。

沖田!と思った。モール付ピーコートのあの老人が宙を舞うのをこの星の〈魔女〉が笑って眺める光景が頭に浮かび、古代は叫び上げそうになった。艦長、あんたが殺られたら――。

どうすればいいんだ。そう思った。そうなったら、おれも山本も〈タイガー〉に乗る者達も皆おしまいだ。たとえ基地を叩いたとしても――。

『隊長』山本から通信が来た。『コースを外れかけています』

「え?」

と言った。レーダーを見る。〈ゼロ〉はまっすぐに飛んでいて、渦巻コースからそれようとしていた。

「悪い」

と言って進路を戻す。前にあるのは白茶けた平原。

古代はそこに、うすら笑う女の顔が見える気がした。

あらためてレーダーの画面を見、自分と山本がまわるべきエリア全体をマップに出した。〈ココダの道〉をまだ半分も飛んではいない。

もしも敵の砲台がおれの受け持ち区画の中にあったとしても、しかしそれが端の方なら、今のままグルグル飛行を続けていてはたどり着くのに一時間もかかってしまう。その間に間違いなく〈ヤマト〉は殺られてしまうだろう。

しかしもし、砲台の位置がわかるなら? 古代は〈ヤマト〉を出る前に聞かされていた作戦の詳細に思いを巡らせてみた。細かな指示の中にひとつ、『対艦ビーム砲台の位置の見当がついたならまずはそれを攻撃に行け』との項目があった。〈ヤマト〉を狙う罠を討つのが最優先だ。

そのためには基地の索敵は後回しでいい。カクカク砲台かなんか知らんが、核をブチ込みゃ一発で粉々にしてやれるだろう。

「山本」と言った。「その砲台だけど、どこにあるかわかるのか」

『いいえ』と返事。『ですが、この白夜の圏内ではないでしょう。あればとっくに我々の誰かが見つけているはずです。基地から離して別に置いているのだと……』

「それじゃあ、せめてどこら辺か見当は?」

『ええと……カロンではないですね。夜の面ではあるのでしょうが、あまり高緯度とも思えません。たぶん低緯度の赤道付近。その程度しかまだ推定できません』

「そうか」

と言った。赤道付近? 星をグルリと一周か。どうする。それなら、このおれ達は34機。もし一機ずつバラバラに、一周三六〇度を十度ちょいずつ離れて飛べば、この星の赤道上をまんべんなくカバーできる計算だ。そこで敵が〈ヤマト〉めがけてビームを撃てば、一機か二機が地面から衛星に向かって飛び出すビームの軌跡を見ることだろう。後はそれを頼りに行けば、自(おの)ずと砲台は見つかると言うもの。実に単純な理屈だった。

しかし、と思う。それはダメだとすぐに気づいた。山本も、

『ただ、バラバラに分かれて飛べば、おそらく敵の……』

と〈糸電話〉で告げてくる。古代は、

「わかってる」と言った。「待ち伏せに遭うだけだ」