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Green Hills 第3幕 「砂嵐」

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 立てた膝に肘をつき、頭を落として、本気で項垂れていた。



***

「おい!」
 衛宮邸の家主の部屋と縁側にまたがって、シロウが倒れている。発見したのはもちろんアーチャーだ。
 平日昼間、家主の士郎と凛は学校なので、この家にはサーヴァントが二体いるだけ。買い出しから戻ると、その家主のサーヴァントであるシロウが倒れていた。
「おい?」
 肩を揺すって、頬を叩いてアーチャーは起こそうとするが、すう、と寝息が聞こえるだけだ。
 この状態は、とアーチャーはシロウの顎を取る。
「魔力不足か……」
 仕方のないことなのだ、シロウが受け取ることのできる士郎の魔力供給量はごく僅か。
 首を捻るような不思議さよね、と凛に言わしめた、同一人の同調率だけでどうにか魔力が流れているという状態。
「仕方がない」
 シロウの口を開け、唇を重ねる。アーチャーは人工呼吸の要領で魔力を乗せて息を吹き込む。
 びく、とシロウの身体が跳ねた。
 薄っすらと開いた瞼から琥珀色が覗き、アーチャーはほっとしてシロウを離そうとした。が、いきなりその胸元のシャツを握りしめたシロウはアーチャーを引き寄せる。
「っ……おい、待――」
 唇を押し付けてきて舌を吸ってくるシロウに、アーチャーはその肩を掴んで引き離そうとするが、さらにキツく吸いついてくる。
 引き離すことを諦め、掴んだ肩から背中に手を回した。そのままシロウの項を支えて抱き込み、シロウのやりたいようにさせることにした。
 濡れた音がやたらと響く。
 何をしているのだろうか、と頭の片隅で思いながらも、アーチャーに嫌悪感はなかった。
 元を正せば同一だからか、大人の男にディープに口づけられても、なんら拒絶反応は起きなかった。むしろ、少しまずい、と思っている節がある。
(下手をすると勃つな、これは……)
 などと安穏と思いながら、こいつが正気に戻ったらどんな顔をするだろう、と、じっくり観察してみる。
 エサをせがむ雛鳥のようにシロウはアーチャーの魔力を含んだ唾液を貪っている。アーチャーの胸元のシャツを握りしめて、放すまいと必死なのが窺える。
 やがて意識が戻ってきたのか、大きく目を見開いた。琥珀色の瞳が揺れている。シロウは吸いついたアーチャーの舌を離し、
「わるい……」
 と吐息交じりに謝った。
「それほど、飢えているのか、貴様」
「……っ…………」
 瞬いて、伏せた瞼から覗く潤んだ琥珀色に、アーチャーは軽く眩暈を覚えた。
 掴んだシャツを放したシロウは、アーチャーの腕の中から逃れようと身体を捻るが、まだ力が入らないようだ。さほどの力をこめなくても、アーチャーはがっしりとシロウを抱き込んでいられる。
 もがくシロウを放すこともせず、訊ねた。
「なぜ、衛宮士郎に言わない」
「……寝ていれば、すむ……から……、いい加減、放せ」
 離れようとしたシロウにムッとして、アーチャーはその身体をさらに抱き込む。
「アーチャー?」
 不思議そうに見上げるシロウに、アーチャーはすっと目を細めた。
「提供してやる」
「は? え?」
「魔力をやる」
「何……言って……」
 アーチャーの言っている意味がわからず、シロウは困惑したまま見上げていることしかできない。抵抗もせず、身動きもしないことを了解ととったのか、アーチャーはシロウを畳に押し付けた。
「え?」
「どちらに突っ込まれるのがいい」
「はい? 突っ込まれる?」
 畳に肩を押し付けられ、静かな声でアーチャーに問われ、シロウはなんのことかわからず訊き返す。
「上か下か」
「上? 下?」
 苛立ったように舌を打ち、アーチャーはシロウの口に右手の親指を突っ込み、横に引く。
「この口か、」
 そして、左手でシロウの尻を握り、
「この口か、どちらだ」
 とシロウに選択を迫った。
「なに……どういう……」
 全く意を解さないシロウに、アーチャーはさらに眉間にシワを刻んだ。
「魔力をやると言っているのだ。わかるだろう、魔力を多分に含んだ体液など限られている」
「体液? 血、じゃ……なく……?」
 そうだ、と頷くアーチャーにシロウはようやく気づいたようだ。真っ赤になって目が泳ぎはじめた。
「なに、遠慮などすることはない。あいにく私は十分に満たされている。恵んでやろうというのだから、ありがたく受け取れ」
「い、いらない! そ、そんなの、いらない!」
 魔力をくれるというのは正直シロウにはありがたいのだが、冗談ではない。そんなやり方で魔力を提供されるくらいなら、魔力切れを起こして消えた方がマシだ。
 シロウは本気で逃げようともがきはじめた。
「お前は望まれてここにいるのだろう。マスターの意に反して勝手に消えるなど、そんな薄情な真似が許されるとは思えんが?」
 ぐ、とシロウは詰まって、動きを止めた。痛いところを突かれた、とその顔が物語っている。
 このまま魔力切れを起こして消えてもいいと思ったが、マスターである士郎に黙って突然消えたりするのは、彼を裏切ってしまうようで嫌だった。だいいち、いつも自分のことを気にかけてくれている士郎に申し訳が立たない。
「どうする、私はどちらでもいいが? まあそれでも還ると言うのなら、そうだな、私の好意を無視して消えてしまったとでも説明しておいてやるが?」
「こ、この……、腐れ英霊……」
「なんとでも言え」
 悠然と笑うアーチャーをひと睨みして、シロウはため息をつく。
「どっちが……、簡単だ?」
「さあ? お前次第だな」
「いや、あんたが、だ」
「私が?」
 アーチャーは首を捻る。
「あんたがやりやすいのは、どっちだ?」
 琥珀色の瞳が真っ直ぐにアーチャーを見つめる。その瞳を見返すことができず、アーチャーは視線を逸らした。
「どちらでも。……まあ、時間がかからないのは、こちらだな」
 言ってシロウの頬を引っ張る。
「わかった。じゃあ、口で」
 シロウの潔さに内心驚きつつ、アーチャーは少し身体を起こした。
「本当に、わかっているか?」
 アーチャーが確認すると、シロウは顔を背けたままだ。
「の、飲めば、いいんだろ、あんたの……体液……」
 その目元は恥ずかしさからか赤く染まっている。
「まあ、そうだが」
「や、やったこと、ない、けど……、どう、するんだ?」
 シロウの質問にしばし額を押さえ、アーチャーはため息をついた。
「……お前は、じっとしていればいい」
 アーチャーが呆れながら言ったのを、恥ずかしさといたたまれなさから、シロウはムッとして聞いているだけだった。

 ごくん、と嚥下する音がひどく大きく聞こえた気がした。
(熱い、苦い……………………甘い……)
 アーチャーの魔力で内側から満たされていく。いつになく調子の良くなる身体をシロウは感じた。
「これで、しばらくはもつだろう」
 シロウの口から自らを引き抜いたアーチャーは静かな声を降らせる。その声を心地いいと感じているのは、自分が酔ったように酩酊しているからなのか、とシロウはイマイチはっきりしない頭で思う。
「魔力供給について、マスターと話し合った方がいいぞ。一応、忠告しておいてやる」
 そう言ってアーチャーは霊体化していなくなった。
 シロウは、ぼんやりとそれを見送っただけだ。