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同調率99%の少女(8) - 鎮守府Aの物語

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 放課後、すぐさま教室を出て帰る者、教室に残って雑談し続ける者、部活に行く者と、生徒たちの行動は様々である。那美恵と三千花は艦娘部の展示のため、生徒会室に向かうために教室を出た。1年生である三戸と和子も、お互い違うクラスながら同じように生徒会室へ向かう。
 その頃、1年生の流留は教室に残って数人の男子生徒と雑談をしばらくしていたが、用事があると言って男子生徒の輪の中から一人離脱して、あるところへ足を運んだ。

 那美恵たちは4人揃ったところで、先週までと同様にパネルや資料、そして川内の艤装を運び出して視聴覚室へ向かった。土曜日の艤装のデモを行なったおかげか、視聴覚室前には数人がすでに展示の開始を待っている。それを見た那美恵と三千花はひそかに手を合わせて喜びを表し合った。
 展示見学者をひとまず外で待たせ、那美恵たちは急いで展示の設置を始めた。
「いや〜まさかの効果ですよ、みっちゃんさん。」
「ホントよね。百聞は一見にしかずってことね。デモやってよかったじゃない!」
 パネルや資料を並べつつ二人は話す。それを視聴覚室の仕切りを動かしつつ聞いていた三戸が会話に入り込む。
「俺も会長の艤装デモ見たかったなぁ〜会長の麗しい姿を一目見られたらなぁ。」
「私も見たかったです。」
 三戸に続いて和子も実は思うところは同じらしく、希望してくる。そんな書記の二人の様を見て那美恵は苦笑しつつ、二人を慰めつつ提案した。

「また近いうちにやったげるから、その時は一緒にね!」
「私と四ツ原先生だけ見る形になって、二人にはなんか申し訳ないことしたわね。」
 三千花は肩をすくめつつ言い、三戸と和子に謝った。
「いえ、気にしないでください。私達は鎮守府で一度しっかり見てますから。」
 そう言って和子は副会長の三千花をフォローする。
「じゃあ次やるときこそみっちゃんに艤装つけて動いてもらおー。」
「……あんた、あの時私に艦娘になってほしくないって言ったの嘘なの?」
「もちろんホントだよ〜。でもちょっと試すだけならいいでしょ?ね?ね?」
 親友のどうしてもやらせたい欲求バリバリの言い方を聞いて、三千花は半分諦めた。一度従ってやってみれば那美恵の気が収まるかもしれない。三千花は肯定とも否定ともつかない曖昧な返事で那美恵の反応を受け流すことにした。
 展示の準備が終わり、その日の展示がスタートした。


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 先週よりも大盛況っぷりに那美恵たち4人は驚いたが、それぞれ役割を決めていたのでいつもどおり見学者を捌く。そして先週までと違ったのは、艤装の同調を試したいという生徒がいたことだ。その日は結果10数人来て、4人同調を試した。
 いずれの生徒も合格水準の同調率を出せなかったが一人だけ、合格レベルの生徒がいた。

 放課後の1時間少々ではあるが、10数人の見学者が来て、それぞれ思い思いに艦娘のことを見聞きして帰っていった。那美恵と三千花による説明も回数を繰り返して慣れてきたのか、わかりやすさと説明のスピードが安定して、誰が聞いてもある程度分かってもらえる口調になっていた。艦娘である那美恵はもちろんのこと、艦娘でない三千花もあたかも自分が艦娘であるかのように熱を込めて説明をする。
 表で案内役をしていた三戸は、日中に流留を誘ったことを思い出していた。彼女は(男)友達が多いし、なんだかんだで都合があって今日は来られなかったのだろうと。会長である那美恵に任せてくださいと大見えきったはいいが、目的の生徒に来てもらえないのは(那美恵も三千花もそんなことは気にしない性格なのは三戸自身もわかってはいたが)少々気まずく感じる。
 展示を締め切る10分前。厳密な時間ではないしその時間に先生が来るわけではないが、一応借りている時間はその時間までなので、生徒会自ら破る訳にはいかない。見学者の大半がいなくなり、視聴覚室付近は静かになった。和子は艤装デモや資料配布の手伝いのため視聴覚室におり、廊下には三戸しかいない。三戸は大きく背伸びをし、自分も視聴覚室に入ってそろそろ展示片付けの準備を手伝おうかと思って扉の方に方向転換したとき、少し離れた階段の辺りから一人の女子生徒が小走りで近づいてきているのに気づいた。
 内田流留である。

 流留は少し息を切らしており、三戸の前で胸に手を当てて呼吸を整えた後ようやく口を開いた。
「ゴメンゴメン、遅れて!もう展示終わっちゃった?」
「いいや。ギリギリだけどまだやってるよ。そんな走ってくることないのに。どうしたの?」
 三戸は、小走りではそこまで息切れしないだろうとなんとなく違和感があったので彼女に尋ねてみた。が、流留はちょっとねと言葉を濁すだけで、三戸にそれ以上の説明をしようとしない。三戸もそれ以上は聞く気はなく、すぐに思考を切り替える。
「じゃあ、中見ていく?今なら他の見学する人いないからゆっくりできるよ。」
「OK〜。じゃあ三戸くんも一緒に来て。どうせもう人来ないんでしょ?」
 流留から見学の付き添いをお願いされて、本人的には内心鼻の下が少し伸びた状態な気持ちになって、快く承諾して二人で視聴覚室に入った。

 視聴覚室に入った三戸は那美恵たちに声をかけた。
「会長、次の見学者の方っす。」
「こんちはー」と流留。
「こんにちは〜。あ!あなたは確か……内田さんだったよね?」
 那美恵は自分が三戸づてに来るように催促してはいたが、そんな素振りは一切感じさせず、今初めて来てくれたのに気づいたというふうに振る舞う。当然そんな策略なぞ流留が気づくわけがない。

「内田さん、艦娘に興味あるの?」那美恵は入って早々の流留に尋ねる。
「うーん。よくわからないんですけど、三戸くんに誘われて、なんだか面白そうだから見るだけみてみようかなって。」
 流留自身の興味のレベルはそう大して変わっていない様子が伺えた。誘われたから来たということは、少なからず揺れ動いたのだろうと那美恵は想像してみる。早速那美恵は流留に直接説明することにした。
「おっけ〜じゃああたしが説明してあげる!」
「よろしくお願いしまーす、会長。」
「内田さ〜ん?今のあたしは生徒会長じゃなくて、艦娘部部員の光主那美恵なんで、そこんところよろしくね〜。」
 流留が何気なく言った会長という言葉を頭をブンブンと振って那美恵は否定する。
「へ?あぁ……はぁ。」
 流留は生徒会長である那美恵のことをほとんど知らなかったので、そのずいぶん砕けた感じに少し戸惑いを隠せない様子を見せて適当な相槌を打った。