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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

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 ルヴァは慣れないことをしているせいか首まで赤く染め、しどろもどろ言葉を探しながら束ねたターバンをリュカのほうへぐいと押し付けた。
「あの……故郷のしきたりで、本当は一生を共にする女性の前でしか晒せないんですけど……皆さんには本当にお世話になりましたから、お見せしますね」
 頭を晒したことで落ち着かない様子で手櫛でさっと髪を梳いた。
 おおー、という声と共にリュカ一家の視線がルヴァの頭に集中していく。
 ビアンカがそっとアンジェリークへと囁いた。
「かっこいいじゃない、ルヴァさん。普段からああしてるほうが絶対いいのにね」
「そう? ターバン姿も素敵だから、わたしはあれでいいわ」
「おっとのろけが来たわよー。ご馳走様ぁ」
 そして二人で笑い合った後、ビアンカがぽつりと屁理屈を言い始める。
「でもその伴侶が真横にいるんだから、しきたりを完全に破ってはいないわよね、一応」
 えっ、とルヴァが驚くのをよそに、リュカと子供たちも一斉に喋りだす。
「そうそう。ぼくらは何も見ていませんって言い張ってればいいんじゃないか?」
「わたし見てませーん」
「ぼくも見てないよー」
 くるりと振り返ったリュカがニヤニヤしている。
「な、ピエールとプックルも見てないよなあ?」
「おう、なんも見てないぞ」
「は……私めも存じませんが」
 全員のあからさまなすっとぼけに、くすくすとアンジェリークが笑い出した。
「……ですって。良かったわね、ルヴァ」
 ルヴァはその間にさっさとターバンを巻きつけ、ようやく平常心に戻った。
 リュカは預かったルヴァのターバンを大事そうに名産品が入っている袋にしまい込む。
 アンジェリークのほうもリュカのターバンを丁寧にトランクへとしまっていた。
 少しだけはにかんだリュカが、ぽりぽりと頭を掻いていた。
「なんか無理言っちゃってすみません。……あなた方お二人の思い出のものが欲しかったんです」
「じゃあわたしからは、これくらいしかないけど」
 アンジェリークが両耳のピアスを外して、ビアンカに手渡した。
 嬉しそうな表情で雫型のそれに視線を落とし、ビアンカもすぐに自分のピアスを外してアンジェリークへと手渡した。
「いつかまた逢いましょ。そのときはのんびり旅行にでも行きましょうよ、今度は女だけで!」
「ふふ……そうね。いい温泉宿とか探しておくわ!」
 お互いのピアスを交換して、ビアンカが瞳を潤ませたままそっとアンジェリークを抱き締める。
「あなたに逢えて良かったわ。じゃあ……またね。ルヴァさんとずっと幸せにね」
「ありがとう、わたしもよ。ビアンカさんこそ皆とずっと幸せにね。もう石になっちゃだめよ?」
「金輪際ごめんだわ!」
 二人の明るい笑い声が響いて、ぎゅうと抱き締めあった体を離していく。
 そしてビアンカの肩を引き寄せたリュカが、穏やかな表情でアンジェリークへと手を差し出した。
「また逢いましょう。優秀なうちの娘がきっとなんとかしてくれると信じて」
「ええ。今度は皆さんでいらして下さいね、そのときは盛大におもてなしさせていただくわ」
 差し出された手を取ってしっかりと握手を交わし、微笑む。
 ルヴァが拳を握ってすいとリュカの前に持ってきた。
「リュカ」
 ごつりと大きな音を立てて、二人の拳がぶつかり合った。そしてそのままがっしりと握手を交わす。
「……お元気で」
 やはりさようならとは言わないリュカに、ルヴァは心からの感謝をこめてリュカの手を握り締めた。
「あなたもね。無事にお母上を救出できるよう、祈っていますよ。それでは……また」
作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち