二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

冒険の書をあなたに

INDEX|16ページ/150ページ|

次のページ前のページ
 

 なんとなく事情を把握し始めたアンジェリークが、ルヴァにそっと耳打ちをする。
「ルヴァ、魔物さんたちにはわたしに翼が生えて見えてるみたい」
「はあ、なるほど……彼の地の人々のように、あなたのサクリアが彼らにも形となって見えているんでしょうねぇ」
 その後マーリンが発した言葉に、リュカは絶句することになる。
「天使様はもちろん天空人ではない。エルヘブンの民でもない。この世界で唯一対等と言えるのは、竜の神マスタードラゴンだけじゃろうの」
 唖然としたリュカの口元がぱくぱくと金魚のように動き、そこから一拍おいてようやく言葉が紡がれた。
「マスタードラゴンと同格だって……!? ちょ、ちょっと待ってよマーリン、それって」
 雷にでも打たれたかのような驚愕の表情を浮かべ、ぎこちなくアンジェリークを見た。
「それほどの大いなる力をお持ちじゃよ。その気になればこの人間界、魔界、天界、そして妖精界を全てまとめあげてゆけるお方じゃ」
「それってマスタードラゴンの比じゃないだろ!」

 リュカとマーリンのやりとりを聞き、アンジェリークは困ったことになった、とこめかみを押さえて小声でルヴァに話しかけた。
「……どうしよう、ルヴァ……なんだかとても凄い話になってきちゃってるわ。わたしがこの世界の竜の神様と対等の魔力を持ってるって……」
「まあ……あなたは宇宙ごとどーんと移転させちゃった人ですからねー。実際に我々のサクリアをまとめてひとつの世界どころか宇宙規模で星々を導いていらっしゃるんですから」
 ルヴァはさして驚く様子もなく、淡々と会話の行方を見守っている。彼の中ではまだ想定の範囲内だということだろう。
 ふいにマーリンがじっとアンジェリークの瞳を見つめた。淡いグレーの瞳が優しく滲んだ。
「天使様、今から言う言葉を賢者様にお伝え願いたい。よろしいかな」
 神妙な顔でこくりと頷くアンジェリーク。
「賢者様に伺いたい。昨日南東の方角より大きな光の波動を感じましたが、あれはもしや天使様のお力ではないかの」
 アンジェリークは一言一句間違えないように気をつけながら、マーリンの言葉をルヴァに伝えた。
「ええ、その通りです。私が青い竜に掴まれていたときに……アンジェリークの背に翼が現れ、竜二匹が光の中で朽ちていきました」
 アンジェリークを中心に蠢いた大地、そして怒涛の光の波。抵抗できぬまま朽ちていった二匹の竜。目を閉じればまざまざと思い起こせるあの光景を、ルヴァはしばらくは忘れることなどできはしないだろう。
「あれは古い文献に載っていた究極の呪文、マダンテに良く似た特徴の波動じゃったが……昨日のは同時に回復の効果もあったと聞いておりますぞ」
 困った顔でルヴァに説明しようとしたとき、リュカがそっと手を挙げた。
「ここからはぼくに話させて下さい。アンジェリーク殿の波動が究極の呪文マダンテに似ているって? でも回復効果はない筈なんだろ?……それにマーリン、そんな呪文はベネット爺さんからも聞いたことがないよ」
 そう言って片眉を上げ腕を組んだリュカへ、マーリンはせせら笑う。
「わしをただの老いぼれと馬鹿にするでないぞリュカ、わしはあの爺さんの数十倍は生きておる。ルーラやパルプンテなぞ、このわしからすれば古代のうちに入らぬわ」
 マーリンはそう言ってゆったりとした動きでルイーダの元へ行き、薬草酒を片手に戻ってきた。
「天使様の発したお力は、マダンテのようで厳密にはマダンテではないのじゃろうな。あれは持てる魔力の全てを解放し、敵へとぶつけるものじゃ。同時に回復なぞできようもない」
 ぐびりと薬草酒を口に流し込み、顎をさすりながら考え込むマーリン。
「ふーむ……強大な力を持つお二人が異世界から来たのじゃから、何もかもこちらの世界の道理がまかり通るとは思わぬほうが良いのかもしれんの」
「…………」
 沈黙が四人を包む。
 一旦考え込むと黙る者が二人もいるのだから当然といえば当然だったが。
作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち