冒険の書をあなたに
それは人がまだ存在すらしていない遠き昔のこと。
天と地と海がようやく出来たばかりの頃でした。
この世界を作りたもうた神は、ある日精霊たちに言いました。
「あなた方の息吹によってこの世界がどうなるのか、私は見守ることとしましょう」と。
まず初めに精霊イオルニス、ギランルード、メラノイが力を合わせて山々を作りました。
海底から新たな大地が生まれ出で、高き山々が出来ました。
そしてその山はひび割れて、すき間から真っ赤な溶岩が溢れました。
そこへ精霊ヒャダールが海から氷を作り、精霊バーギェラが疾風を送りました。
氷の粒は疾風と合わさって竜巻になり、火山から立ち昇る噴煙を吹き飛ばして雨を呼びました。
雨は噴煙を鎮めていきました。
そうして大地が穏やかになった頃、精霊ホミレシアが優しく命の息吹を送ります。
やがて小さき生き物が生まれました。
生き物たちは数を増やし、生と死を繰り返していきました。
そこで今まで黙っていた最後の精霊デインセラフが、神に問いました。
「私はどうしたらいいのでしょうか」と。
神はおごそかに言いました。
「あなたは見守りし者。もしもこの世界の均衡が崩れたなら、そのときにあなたの力をお使いなさい」と。
そうしてデインセラフは翼を持って、この世界を見回ることにしました。
それから何億年も経ったころ、この世界に二本足で歩き回る生き物が生まれていました。
役目を終えた精霊たちの魂は次々に作り上げた世界の中で永い眠りにつきました。
デインセラフの魂はやがて竜の中へと宿り、今もなおこの世界を見守っています────