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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

INDEX|80ページ/150ページ|

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 再び、ルヴァとリュカ────

 ルーラで命拾いをした────と、街の前に着いた瞬間に心の底から思えた。
 満面の笑みを浮かべているリュカが支えていた手を緩めた途端に、ルヴァはずるずると地面に頽れた。
「これ、ぼくが考えた遊びなんですよ! エルヘブンの崖は眺めもいいしもう理想的で────あ、ルヴァ殿大丈夫ですか」
 ルヴァの全身からどっと冷や汗が出てきた。青褪めた額にハンカチを当てながらそっと立ち上がる。少し腰が抜けていた。膝に至っては笑うを通り越して爆笑中だ。
「だ……大丈夫とは言い難く……どうしてあんな危険なことを……?」
 リュカが少しだけ目を丸くさせて、けろりと告げる。
「だってほら、今頭の中が真っ白になっていませんか」
「はっ? ……そ、そう……言われてみれば」
「頭で考えても答えが見つからないのに、ずっと悩んでしまうことってあるじゃないですか。例えばぼくなら、ぼくの中にある消せない過去のことで苦しくなったら、ああやって忘れちゃうことにしてるんです。ルーラが使える人しかできない遊びですけどね」
 リュカはそうと言わないが、言葉を濁しながら戸惑い悩むルヴァを気遣ってのことだったのだと、彼にも分かった。
「しかし、あれはとても危険な行為ですよー。あなたがいなければ魔王との戦いが危うくなってしまいます」
 街の中へ歩き出したリュカが足を止め、振り返った────不敵な微笑を頬に乗せて。
「あんな崖くらいどうってことないですよ。ぼくはもっともっと高い山から樽詰めで落っこちましたから。あのときは見事に気絶しましたけどね、三人とも」
 三人────ということは、奴隷にされていたという大神殿から脱出を図ったときの話だろうか。
「ちょっとはスッキリしませんでした?」
 リュカは不思議そうにルヴァの顔を覗き込む。どこか憎めないその表情に、怒る気も失せてしまう。
「はは……確かに、悩むどころではありませんでしたねぇ。私はああいう刺激的なことには慣れていないので、寿命がちょっと縮んでしまった気がしますよー」
 強張った肩をとんとんと叩きながら、ルヴァはゆるりと微笑んだ。
「あはは、結構きつかったですか? すみません。さて、温泉に行く前にちょっと街へ寄りますよ」
 くるりと背を向けて再びすたすたと歩き出すリュカの後を、ルヴァは慌ててついていく。
「先程の崖から飛び降りの件は分かりましたけど、あの、なぜ温泉なんです? さっきも言いましたように、後で皆さんと行けばいいじゃないですか」
「それじゃ間に合わない」
 短くきっぱりと告げられた言葉に首を傾げるルヴァ。
「え……?」
 並んで歩いているリュカが横目でルヴァのほうへと視線を投げ、きゅっと口元を引き結んだ。
「いいですよ、ぼくたちの企みを暴露しましょう。きっと納得して下さるでしょうから」

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち