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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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冒険の書をあなたに

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 朝食を終えるとポピーが沢山の杖を抱えてアンジェリークのところへやってきた。
「ポピーちゃん、その杖どうしたの?」
 よっこいしょ、と杖の束を床に置いて額の汗を拭った。
「アンジェ様が装備できそうなのを見て貰おうと思って持って来ました。あの、お祖父ちゃんのいる村ってルーラじゃ行けないんで、近くの街から船で行って、そこからちょっと歩くんです。その間敵が出るんで、一応何か持っていたほうがいいと思うんです」
「まあ、そうなの。じゃあちょっと見せて貰うわね」
 とは言ってもどれがいいかなどアンジェリークには分からないため、とりあえず片っ端から手に取りその中の一本の杖に目を留めた。
「あ、これ……」
 杖の先には青い宝玉を掲げる天使の彫像がついている。アンジェリークはその彫像に釘付けになった。
「お顔が先代の女王陛下に似ているわ……!」
 驚いて思わず手に持った途端に杖から青白い光が放たれて、アンジェリークの周囲を小さな光の粒がきらきらと星屑のように降り注いだ。
 ポピーがわあ、きれい、と声を上げて頬を紅潮させている。
「アンジェ様、それは祝福の杖と言って、怪我をしたときに回復ができる杖です。今のところ装備できる人は誰もいません」
「そうなの? ……うーん、装備できてるのかどうかがいまいちよく分からないんだけど……」
 アンジェリークはそんなことを言いながら宿の外へ出た。理力の杖のときのように何かを真っ二つにしてはいけない、という危惧からだ。
 周囲に対象物がないのをよく確認して思い切り杖を一振りしてみるが、特に何も起きない。
「やっぱりよく分からないけど、これお借りするわ。この天使の顔がね、知ってる人にすごーく似ているから」
 そのとき背後の木の扉がギイと軋んだ音を立てて開き、ルヴァがひょっこりと顔を出した。
「アンジェ、ここにいたんですかー。探しましたよ」
 ぱっと花開くような満面の笑みを浮かべるアンジェリークに、ルヴァの頬も緩む。
「あ、ルヴァ! いいところに〜。ねえねえ、わたしも杖を選んでいるんだけど、これなんてどうかしら。祝福の杖ですって」
 ルヴァに祝福の杖を手渡すと、しげしげと杖の先にある天使像を見つめた。
「……この顔、先代の陛下になんとなーく似ているような気がするんですけど、もしかしてそれで選んだんですかー?」
「ええ。どれがいいのか良く分からないし。やっぱり似てるわよね?」
 顎に手を添えてじっと考え込むルヴァ。おもむろに背に手を回して理力の杖を腰布から引き抜いた。
「こちらと比較するとどっちが重たいですか」
 アンジェリークはルヴァに言われるがままそれぞれの杖を持ち、重さを確かめた。
「祝福の杖のほうが断然軽いわね。そういえばちっとも重さを感じないわ」
「では、こちらはどうです?」
 次にマグマの杖やいかずちの杖を手渡された。
 どれもずしりとした重量を感じて持っていられず、すぐにルヴァに返す。
「おっ……重たーい!」
 この時点でルヴァにはある確信があった。
「あなたは攻撃に使える類のものは、恐らく装備できないのだと思いますよ」
 彼女はこの世界で回復や防御といった効果の力を発揮していた。
 唯一攻撃と言えたのは、ドラゴンマッドとの戦いで見せたマダンテのような魔法だけだ。
「この祝福の杖は中立の杖なのだそうです。かつては敵味方関係なく、公平に傷を癒したと書物にはありました」
 例えどんな存在であれ、傷を負ったものに分け隔てなく救いの手を差し伸べる杖────アンジェリークに最もふさわしい杖ではないか。
 これまで装備できる者のいなかった祝福の杖は、まるであつらえたかのようにアンジェリークの手にしっくりと馴染んでいる。
「持ちやすいのでしたらそれが合っている証拠なんでしょうね」
「じゃあ、アンジェ様の杖はそれで。あとは片付けますね!」
 そう言ってポピーは散らばった杖を一纏めにして紐で括り始めた。アンジェリークが手を貸して一緒に片付けている最中、木の扉が再び軋んだ音を立てた────リュカだ。

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち