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機動戦士ガンダムRSD 第21話 蒼天の剣

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 研究員の1人が楽観的に言った。
「彼等には、記憶はない方が幸せだと思いますよ?
指示された敵をただ倒すだけの戦闘マシーンに余計な感情は邪魔なだけです。
効率も悪くなる」
 別の研究員は、記憶はない方がいいと断言した。
「ああ、分かっている。
何を知っても思ってもどうせ何にもならない。
あの子達には」
 ネオ大佐は、そういうと最適化ルームを去ろうとした。
「情を移されると辛いですよ」
 研究員が忠告した。
「デートになんか行かせてしまったからな。
いろいろなんだろうが、メンテナンスは入念に頼むな」
 ネオ大佐は、研究員に丁寧に仕事をするように言った。
「はい」
 研究員が答えた。
「あれほど死ぬのを怖がるあの子が死なずに済むには、敵を倒し続けていくしかないんだ」
 ネオ大佐は、そうつぶやくと最適化ルームから出た。
 ミネルバのモビルスーツ格納庫には、新型のグフイグナイテッドが配備された。
「GAT-X2000、グフか」
 ヴィーノ兵長がグフイグナイテッドを見上げてそうつぶやいた。
「どんどん増えるな、新型の機体が」
 ヨウラン兵長は、新型機が増えていく現状を見て改めて戦争中なんだと認識した。
「ほらマニュアルだ。
ちゃんと読んでおけよ」
 そういうとマッド大尉が皆に整備マニュアルを配った。
 アスラン中将は、ハイネ大佐をパイロットルームに案内した。
「レイ・ザ・バレルです」
 そこには、レイ少尉がいた。
レイ少尉は、敬礼し挨拶した。
「ああ、ブレイズザクファントムね。
ハイネ・ヴェステンフルスだ。
よろしく」
 ハイネ大佐も敬礼し自己紹介した。
「しかしさすがに最新鋭だな、ミネルバは。
ナスカ級とは、大違いだぜ」
 ハイネ大佐がそういいながら奥に進むとシン中尉、マユ少尉とルナマリア少尉がいて3人はハイネ大佐に気付くと立ち上がりハイネ大佐に敬礼した。
ハイネ大佐も敬礼で返した。
「そうですね」
 しかしアスラン中将は、長らくナスカ級に乗船していないためナスカ級の空気が分からなかった。
「ヴェステンフルス隊長は、今まではナスカ級に?」
 ルナマリア少尉が前の配属艦を聞いた。
「ハイネでいいよ。
そんなの堅苦しい。
地球軍のパイロットは、それが基本だろ?
君は、ルナマリアだったね?」
 ハイネ大佐は、自分を呼び捨てにするように言った。
「はい」
 ルナマリア少尉は、名前を確認されたので答えた。
「俺は、今までアルザッヘル基地所属だよ。
この間の開戦時の侵攻戦にも出たぜ?」
 ハイネ大佐は、これまでの戦歴を紹介した。
「隊長、自分たちは誰の指揮下に入られるのでしょうか?」
 シン中尉は、指揮系統がどうなるのか分からなくなった。
「ヴェステンフルス隊長の方が先任だ、シン」
 アスラン中将は、ハイネ大佐が先任隊長であると言った。
「ハイネ」
 ハイネ大佐は、呼び方を訂正した。
しかしその呼び方は、アスラン中将には難しかった。
「でも何?
お前は、隊長って呼ばれてるのか?」
 ハイネ大佐は、皆がアスラン中将を呼ぶときの呼び方に興味を持った。
「はい」
 アスラン中将は、戸惑いながら答えた。
「戦闘指揮を執られますので我々は、そう呼んでいます」
 そこにレイ少尉が捕捉説明をした。
「いやでもさ、そうやって壁作って仲間はずれにするのはあんまり良くないんじゃないの?」
 ハイネ大佐は、社会の上下関係に嫌気がさしていた。
それに皆が驚いた。
「俺達地球軍のモビルスーツパイロットは、戦場へ出ればみんな同じだろ?
フェイスだろうが士官だろうが下士官だろうが命令通りにワーワー群れなければ戦えないコロニー軍のアホ共とは、違うだろ?」
 ハイネ大佐は、戦場で戦う兵士皆を平等に考えていた。
「はい」
 アスラン中将も異論は、なかった。
「だからみんな同じでいいんだよ。
それとも英雄だからっていじめてるのか?」
 ハイネ大佐は、アスラン中将にパワーハラスメント疑惑をかけた。
それにルナマリア少尉が驚きアスラン中将が否定しようとした。
「そんなことは、ありません」
 それを否定したのは、シン中尉だった。
「なら隊長なんて呼ぶなよ?
お前もお前だな、アスラン。
何で名前で呼べって言わないの」
 ハイネ大佐は、アスラン中将を怒った。
「すいません」
 アスラン中将は、素直に自分の未熟さに反省した。
シン中尉は、そんなアスラン中将の姿に新鮮さを感じていた。
「今日からこのメンバーが仲間ってことだ。
息合わせてばっちり行こうぜ」
 そういうとハイネ大佐はレイ少尉、ルナマリア少尉とマユ少尉を連れて歩き始めた。
「俺もああいう風にやれたらいいんだけどね」
 アスラン中将は、願望を言った。
それにシン中尉が気付いた。
「なかなか難しいな」
 しかし現実は、自分の未熟さで実現は難しかった。
「アスラン中将」
 シン中尉は、アスラン中将を心配した。
「アスランだ、シン」
 しかしアスラン中将は、呼び方でも訂正して一歩ずつでも近づこうとした。
それにシン中尉は、驚いた。
「おい、何やってるんだ、アスラン。
お前が案内してるんだろうが」
 ハイネ大佐がアスラン中将を怒鳴った。
「はい、すいません」
 アスラン中将は、急いでハイネ大佐の許に走った。

              ※

 オーブ派遣艦隊は、局地低気圧の中を航行していた。
ユウナは、士官室で船酔いで嘔吐していた。
「だいぶ荒れてきましたね」
 ブリッジでは、アマギ一尉が波の高さが高くなったと感じていた。
「まだ序の口だろうがな。
一時間くらいか?
こいつを抜けるのに」
 トダカ一佐が低気圧を抜けれ時間を聞いた。
「そうですね。
そう大きい低気圧ではありませんから。
しかしまさか喜望峰回りとは、思いませんでしたよ」
 アマギ一尉は、黒海に派遣されるとは思ってもみなかった。
「仕方ないさ。
ステージは、黒海だ。
インド洋では、観客がいないんだろ。
戦う相手は、同じでも」
 トダカ一佐は、インド洋でオーブ軍が武勲を上げても地球軍が見てくれるとは思っていなかった。
「しかしこのようなことは、口にしてはいけないのでありましょうが。
今回の派兵に関して自分には、やはり疑問です。
他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない。
それがオーブの理念であり我等オーブ軍の理念でもあったはずです。
なのに地球軍が再び核を使用できるようになったばっかりに」
 アマギ一尉は、地球軍がNジャマーキャンセラーを開発したためにウズミ前代表がこれに屈し地球連合に属したことを今も後悔していた。
「ああ、解っている。
だがこれも国を守るためと言えばためだ。
本当は、如何なることがあろうともオーブの理念は守られて欲しいと我等はアークエンジェルに願いを掛けたがな。
間に合わないならせめてこの戦闘でアークエンジェルが増援に来ることを祈ろう」
 トダカ一佐は、アークエンジェルが増援に来ることを期待していた。
「はい」
 アマギ一尉も同じ気持ちだった。

               ※

 スエズ基地に入港中のガーティー・ルーのブリッジでは、ネオ大佐がオーブ軍派兵艦隊の戦力を見ていた。
「オーブの派遣軍ね」