機動戦士ガンダムRSD 第21話 蒼天の剣
ネオ大佐は、援軍はありがたいと感じていたがオーブ連合首長国からここまでの長距離派兵で兵が疲れていないか心配だった。
「空母1と護衛艦6で明日の夕刻には、こちらに入る予定だそうですが」
リー艦長が派兵艦隊の戦力を言った。
「それを使って黒海を取り戻せか。
いろいろ大変だな、俺達も。
やること多くて」
ネオ大佐は、仕事量の多さに愚痴った。
「そうですね」
リー艦長も疲れていた。
「まあ、いい。
解った。
確かにあの辺りは、押さえていないとならないところだからな」
ネオ大佐は、そういいながら立ち上がった。
※
η艦隊の皆は、ア・バオア・クーへの上陸許可が出ていた。
「今日は、どこに行こうか」
シグマン少佐は、マーネリー軍曹をデートに誘った。
「商店街に行きませんか?」
マーネリー軍曹は、行き先を提案した。
「そうしようか」
シグマン少佐も異論は、なかった。
※
スエズに入港しようとするオーブ派兵艦隊の近くを漁船が通った。
しかしこの船の乗組員は、コロニー軍の諜報部員で艦の写真を必死に撮っていた。
※
その日の夕刻には、写真が現像されていた。
「司令官。
スエズからの情報です」
そして写真は、副司令官から司令官に提出された。
※
アイリス曹長は、下士官室で一人サオトメが写った写真を見つめていた。
「またしたいな、キス」
アイリス曹長は、サオトメと会えない日々でどうにかなりそうだった。
※
その報告は、α艦隊にも伝えられた。
リーンホースJr.のブリッジにはマーカー艦長、ミハイル副艦長、サイジョウ元帥にサオトメがいた。
「オデッサを狙うつもりかこちらへ来るかは、まだ判らない。
でもこの時期の増援なら巻き返しと見るのが常道でしょう。
スエズへの陸路は、立て直したいからな。
司令部も同意見だ。
もう本当に鬩ぎ合いだな。
いつものことだけど」
マーカー艦長が状況を伝えた。
その報告にミハイル副艦長は、ため息をついた。
「その増援以外のスエズの戦力は?
つまりは、どのくらいの規模になるんだ?
奴等の部隊は」
サイジョウ元帥が増援以外の戦力を聞いた。
「数は、兎も角あれがいるんだ。
グリーンノア1を襲撃したボギー1とボギー2。
それにアークエンジェルが発進したのも確認されたがその行方は、わかっていない」
マーカー艦長が敵戦力を言った。
「アークエンジェルってアーガマもどきですよね?」
ミハイル副艦長が確認した。
「そうだ。
だからちょっと面倒なんだ。
おそらく彼等も来るだろう」
マーカー艦長は、アークエンジェルが来るだろうと予想していた。
「アーガマもどきってお前が追撃したがついに撃沈できなかった不沈艦か?」
サイジョウ元帥がサオトメに小さな声で確認した。
「はい、そうです」
サオトメが肯定した。
「兎も角α艦隊は、出撃だ。
最前衛マルマラ海の入り口のダーダネルス海峡へ向かい守備に就く。
発進は、○六○○」
マーカー艦長が任務を伝えた。
「はい」
サオトメとミハイル副艦長が敬礼しながら答えた。
「元帥もよろしいですか?」
マーカー艦長がサイジョウ元帥に確認した。
「何も問題は、ない」
サイジョウ元帥は、問題ないといった。
「では、直ちに発進準備に掛かります」
そういうとミハイル副艦長が発進準備に入った。
「ああ、頼む」
マーカー艦長は、ミハイル副艦長にお願いした。
サオトメとサイジョウ元帥は、敬礼しブリッジを出ようとした。
「それとサオトメ」
マーカー艦長は、サオトメを引き留めた。
「はい」
サオトメは、足を止めサイジョウ元帥もつられて足を止めた。
「今度の地球軍の増援部隊として来たのは、オーブ軍なんだ」
マーカー艦長の報告にサオトメとミハイル副艦長が驚いた。
サイジョウ元帥は、状況が読めなかった。
「なんとも言い難いけど今は、あの国もあちらの一国だしな」
マーカー艦長は、オーブ軍が援軍に来たことについては驚きはしなかった。
「オーブが援軍。
そうですか」
しかしすぐにサオトメは、冷静さを取り戻した。
「でもこの黒海への地球軍侵攻阻止は、周辺のコロニー全軍に下った命令だ。
避けられないぞ。
避けようもないしな。
今は、あれも地球軍なんだ。
いいな?
大丈夫か?」
マーカー艦長は、サオトメを心配した。
「大丈夫です」
サオトメは、力強く言った。
いまだサイジョウ元帥は、状況が分からなかった。
※
ドゴス・ギアの艦内でニール少尉がチャールズ少尉に会った。
「よお、チャールズ」
ニール少尉がテンション高めに挨拶した。
「なんだ、ニール。
今日は、やけにテンションが高いな」
チャールズ少尉は、そんなテンションの高いニール少尉を無気味に感じた。
「当たり前だ。
こっちは、寿司屋の長男なんだからな」
ニール少尉は、意味不明な回答をした。
「お前の実家は、美容院だろ?」
チャールズ少尉は、疲れながら突っ込んだ。
「そうだっけ?」
ニール少尉は、とぼけた。
※
アーティー・ジブラルタル基地では、続々とガウにユーピテルが搭載されていた。
「第三滑走路クリア。
ハミルトンのユーピテルは、ナラバに誘導しろ」
管制官が機体の誘導をあわただしく行っていた。
α艦隊は、発進した。
※
援軍の情報は、食事中にルナマリア少尉からシン中尉にも伝えられた。
「オーブ?」
シン中尉は、動揺を隠せなかった。
「そう。
援軍は、オーブだって」
しかしルナマリア少尉は、動揺することなく淡々と伝えた。
「そんな。
あの国がもう一度コロニー軍と戦うなんて」
ヤキン・ドゥーエ戦役でオーブ連合首長国は、コロニー軍によって手痛いダメージを受けたため今回は静観するだろうと思っていた。
しかし現実には、援軍として駆けつけるようである。
「もう信じられないわよね、ほんと。
こんなところまで。
でも今は、地球軍だもんね。
断ったら何するかわからないもんね」
ルナマリア少尉は、オーブの援軍派遣は仕方ないと感じていた。
※
リーンホースJr.のデッキでは、サオトメが1人潮風にあたりながらオーブ解放戦を思い出していた。
「オーブ解放戦には、一時的に指揮権を持っていたようだな。
良い国らしいな、あそこは」
後ろから声を掛けられたので振り返るとサイジョウ元帥がいた。
サオトメは、敬礼しようとしたがサイジョウ元帥は止めた。
「私もそう聞きました」
サオトメも肯定した。
「この辺も綺麗だけどな」
サイジョウ元帥が辺りの景色を見て言った。
「はい」
再びサオトメは、肯定した。
「戦いたくないか」
唐突な言葉にサオトメは、驚いた。
「オーブとは」
サイジョウ元帥は、サオトメの顔を見て質問した。
「別にそんなことは、ありません。
作品名:機動戦士ガンダムRSD 第21話 蒼天の剣 作家名:久世秀一