同調率99%の少女(9) - 鎮守府Aの物語
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そう言って流留は、これまで自身に起きたことを語り出した。彼女が語り始め二人の少女の隣にいた三戸がふと時計を見ると、資料室に入って話し始めてから30分ほど経っているのに気がついた。流留は、ものすごく安心した表情で、(主に那美恵に対して)自身のことを語り続けた。
「そっか。そうだったんだ。女子って怖いよね〜。あたしだって女だけど。」
「そうだったんだ。敬大のやつがもともと。でもそれ俺聞いてよかったのかな……? あぁいや、敬大の告白を他人に漏らすつもりないけどさ。」
那美恵が苦虫を噛み潰したような表情で同情混じりに感情を漏らす。一方で三戸も苦々しい表情をしていたが、仮にも友人の告白の真相を知ってしまったことで戸惑いを隠せないでいる。
「アハハ、なんか友達の事密告したようでゴメンね。そんなつもりなかったんだけど、敬大くんが告ってきたことは本当だからさ。」
「あ〜別にそれはいいよいいよ。でも内田さんが女子たちが噂するようなことをしてなくてよかったよ。」
「あたしの事、本当に信じてくれるんだ……。」
「当たり前じゃん。内田さん嘘言えるような人じゃないし。」
「アハハ……ありがとね。三戸君が友達として残ってくれてよかったかも。」
見つめ合う流留と三戸。いい雰囲気になりかけたのを那美恵が破る。
「うおぉ〜い、ふたりとも? あたしお邪魔っぽい?良い雰囲気な感じなところ悪いですけどぉ〜〜?」
「「!!」」
見つめ合っていた二人はアタフタとして那美恵に視線を向け直す。
「アハハ、ゴ、ゴメンなさい。そ、そんなつもり全然ないですからぁ〜!」
そのつもり、本気で何も思ってないことが彼女の口ぶりと振る舞いに感じられた三戸はややガッカリして頭をガクッと垂らした。那美恵はそんな二人の反応にクスクスと微笑んでから続ける。
「でも、みんな勝手だよねぇ。」
「ほんっと、そう思いますよ。まぁあたしも人のこと言えないですけど。でも○○たちの口ぶりにはイライラしましたもん。」
那美恵の言葉に同意しつつ、再び自分の境遇の一部を語る流留。苛立ちも復活させてしまい下唇を強く噛み締める。
「人ってさ。誰もがね、自分が見たいと欲する現実しか見れないもんなんだよ。つまり都合の良い現実しか見ないの。」
「あ〜分かる気がします。」
「俺もわかるっす。」
流留と三戸は那美恵の言葉に激しく頷いて納得の様子を見せる。
「ま、これは大昔の本に書いてあったことの受け売りだけどね。で、自分が見たくない・見る必要が無い現実も見られる人こそが、いわゆる天才とか、デキる人ってこと。」
「ふぅん……。」
流留はものすごく感心した様子で聞き入っている。
「……でね、都合の良い現実から一歩距離を置いてその現実の本当の姿を見ようとする努力、これが大事なんだってさ。だから今回のことだって、噂話は真に受けないように心がけたもん。みっちゃんと一緒にね。」
「……あの副会長ですか?」
「うん。あの副会長ってみっちゃんが周りからどう思われてるのかわからないけどぉ〜。」
那美恵のさりげないツッコミに流留は慌てて取り繕う。
「えっ、あーえーと。あたしが単に感じただけなんですけど。副会長さん、厳しそうだし糞真面目で固そうだなぁ〜って。」
「内田さんにかかるとみっちゃんもそうなっちゃうか〜。ま、友人としては否定しないけど。でもみっちゃんも悪気があってあなたに突っかかったりしてるわけじゃないのは、わかってあげて。ね?」
那美恵は言葉の最後にウィンクをしながら流留に視線を送った。それを見て流留は少しだけ苦い顔をしながらも頷く。
「でもな〜、なんとなく、副会長は苦手かもです。」
「アハハ。ま、根は乙女ちっくで良い娘だからそんなに嫌わないでいてあげてね。彼女もあなたのこと本気で心配してくれてたんだし。」
「はい。」
流留は申し訳無さそうに頷いた。
「それで続きだけど、たまには自分が見たい現実を見るのも大事。そうじゃないと疲れちゃうでしょ?そのバランスが大事だって思うの。だって人間だもの〜って頭ではわかってるけど、あたしもまだまだね、絶賛しゅぎょー中です!」
ふざけて敬礼して言葉を締める那美恵。
「へぇ……。そんなことまで考えてるなんて、生徒会長はやっぱすごい人だわ〜。」
「いやいや! あたしだって結構自分が見たいと望む現実しか見てないところあるよ〜!ガンガン失敗してるし人を傷つけちゃうことあるし。」
那美恵は両手を前に出して頭と手のひらを激しく振って否定した。
流留と那美恵の間にはすっかり打ち解けた雰囲気があった。もともと流留は社交性があり、一旦話し込めば大抵の人とは仲良くなれる自信と気質があった。それは今までは趣味がらみであったが、目の前の生徒会長とは、心の底から仲良くなれそうと確信を得ていた。それは、かつて自分の一番大事だった人たちと同じ程度に彼女の中では一気に格上げされていた。
「どーお?少しは気が楽になった?」
「はい。なんだか、スッキリしました。やっぱ同性の友達っていいですね。なんで今まで作ってこなかったんだろうって、今ものすんごく思いました。」
「アハハ。うんうん。苦しいことは溜めない・諦めないで出してスッキリしちゃおーね。内田さんとはもうお友達だよ?」
「はい。それじゃあ改めてお願いします。あたしを助けて下さい。」
「はーい。喜んで。そんであたしに具体的にしてほしいことは?」
「それは……」
作品名:同調率99%の少女(9) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis