ルパン三世~赤い十字架~
Episode.1 業~カルマ~
「ひっ!?うちの店には何も…ッ!」
とても小さな宝石店。従業員は年老いた男が1人。
「何も…ねぇ。こんなデケェ店にか?」
「デカい…あんた何を。うちの店はこんなに小さいのに!安い宝石しかないが…も、持っていっていいから、命だけは」
「だから、よぉ…ジイさん、アンタの店はデケェ」
そういうとルパンは、靴の踵でコンコンと床を叩き、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「最近、羽振りのいいイタリア系マフィア、スコレリーファミリー…その隠し財産がこの店の地下に眠ってる。だろ?ジイさん」
「あ、あんた…い、一体!?」
「あァ?俺か?俺の名はルパン三世…知らねえとは言わせねぇぜ?」
「ル、ルパン!?」
店主の顔色はますます悪くなっていく。
地下に眠る隠し財産を強奪されれば、自分の命は間違いなく、ない。
「どうした?ジイさん…俺に撃たれるか、スコレリーの手下に撃たれるか…まあ、事と次第によっちゃあ…俺はアンタを生かす事は出来る」
「に、逃がしてくれるのかッ?い、いや…あのファミリーから逃げ出せる訳が…」
「おいおい、俺の名前をもう忘れたのかい?どうとでも逃がしてやるよ、アンタ1人、手品のように存在を消してしまうなんざ簡単な事さ…。分かったら早く地下への道を開けな」
「本当なんだな…ああ、分かったよ」
店主は古ぼけた机の上に置いてある、キツネの置き物に人差し指でゆっくりと触れる。
「指紋認証…へぇ、この店にしちゃハイテクだね。まったく」
床の一部がゆっくりと開き、何やら番号らしきものを打ち込むキーボードがせり上がる。
震える指で店主が番号を打ち込んでいく。
次第にルパンの口元が欲望で歪む。
「終わったかい?ジイさん…」
「あ、あぁ…しかし、ロックが解除されれば、コンピュータによってファミリーに自動的に通知が行く事になってる。だから早く…私を遠くへ」
「そんな仕組みかあ…感謝するぜジイさん」
ガチリ、と撃鉄が鈍い音を鳴らす。
ルパンのワルサーが店主へと向けられた。
「あ、あんた…はじめから…私を…ッ!?」
「だから言ったろ?アンタ消すくらい簡単なんだよ。遠くね…その願いは聞いてやれそうだぜ?」
「は…?!」
「遠くにあるらしい、あの世ってやつに逝ってきな…」
「ま、待ってくれ!頼む…頼むから…」
「ごくろうさん」
1発の銃声が、荒野の小さな田舎町に響いた…。
作品名:ルパン三世~赤い十字架~ 作家名:Kench