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つま先立ちの恋に慣れたら

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 「いらっしゃい、奈々」
 「お、おじゃまします」
 「・・・?」

 怜治の休みの日に合わせ、2人は彼の家で過ごすことにした夕方のこと。奈々は玄関で会ったものの、やはり彼の目を見ることができずにいた。怜治は奈々の様子がおかしいことにすぐに気づく。

 「あっ、これ差し入れです。すごくおいしかったから、一緒に食べたいと思って買ってきました!」
 「ほんとう?ありがとう、冷蔵庫に入れておくから、あとで持ってくるよ」
 「はい!」

 怜治は奈々から差し入れを受け取り、冷蔵庫に入れる間、自分に思い当たる節がなく、疑問に思った。その後も一緒にご飯を食べ、適当に会話をしながらテレビを見たりしてくつろいでいるときも、やはり奈々はどこかぎこちなかった。ますますあやしくなり、お酒を飲んでいる途中、怜治は隣にいる彼女に問いただすことにした。

 「最近、なにかあった?」
 「へ!?べ、べつに、なにもないです。ふつうの日常です!」
 「ふうん・・・」
 「どうして?」
 「目、合わせてくれないから」
 「!」

 あからさまにおどろき、奈々は下を向いた。お酒も入っていることもあってか、動揺が隠しきれてない。自分には話せないようなことがあるのかと怜治はもやもやし、少し苛立ちを覚える。

 「俺には、話せない?」
 「・・・・・・・・」

 奈々はカクテルの入ったグラスを傾けた後、ゆっくりと怜治と顔を合わせた。彼女の頬はほんのりと赤く染まり、瞳は潤んで揺れている。すこし見つめ合った後、彼女はおもむろに口を開いた。