つま先立ちの恋に慣れたら
「毎日怜治さんにキス、されます。夢で」
「・・・え?」
「おかげで寝不足です」
彼女は吹っ切れたのか、今度はしっかりと目を合わせてきた。どうしてくれるのかと言いたげな顔である。色っぽい表情に、怜治は一瞬気を取られてしまう。
「・・・れいじさん?」
「夢って自分の願望をうつす鏡っていうよね」
「・・・・・・!」
「つまり、そういうことなのかな?」
「~~~~っ」
「ねえ、俺にどんな風にキスされるの?」
顔を近づけて尋ねてみると、口をへの字に曲げて、一向に口を割らない。奈々が話せるはずもない答えをあえて質問するのだから、我ながらいい性格をしていると怜治は思った。彼女から甘ったるい酒の香りがして、まるで煽られているようだ。自分も酔っているからなのか、いつもより自分の気持ちに我慢がきかない。
「・・・・・・・・」
「話せないようなこと、されたんだね」
「からかわないでくださいっ・・・・」
「・・・・じゃあ、現実の俺は、どんな風にキスすると思う?」
「・・・・・・知りません!」
「つれないなあ」
いつもよりからかい甲斐のある奈々の反応を見るのが楽しい。最初はゆっくりと唇を重ねるだけだったが、徐々に深いものへと変えていく。だんだんと息苦しくなったのか、背中にしがみついてくる奈々の手が愛おしくてたまらなくなる。普段ならここでやめるが、今日は気持ちが盛り上がってしまい、そのままソファへ押し倒してしまった。
「んん・・・・ちょ、はなして、れいじさ・・・・・やっ」
「今日はいつもよりキスしたい気分なんだ。誰のおかげだろうね?」
「っ・・・・・・ばか」
「なにか言った?」
「なんでもないです」
「俺も奈々に夢で会いたいよ」
「これ以上いじらないでください・・・・・!」
限界ですと言ったきり、奈々は疲れたのか、あきらめて抵抗しなくなった。頬にキスした後、その小さな体を抱きしめる。
「夢に出てこれなくなるのは残念だけど」
「いい加減寝させてくださいっ・・・・!」
「まだしたほうがいい?」
「いつ頼みましたか!?」
本気で嫌がらないと やめてあげない
(嬉しいの、顔に出てるよ。言わないけど)
お題元:確かに恋だった 様
作品名:つま先立ちの恋に慣れたら 作家名:yuuuuuka