つま先立ちの恋に慣れたら
計測会会場に西星学園も来ており、怜治も他校の選手の走りを見て闘争心がを燃やしていたところ、ふと目を違う方にやると、奈々と陸が何か話している。すると、陸が奈々に近づきすぎているではないか。奈々の後ろ姿しか分からないのではっきりしないが、まるでキスしているような2人の姿に、怜治は少し不機嫌になった。
「・・・怜治様?」
「ちょっと外すよ」
不思議そうな静馬を横目に、奈々が一人になったのを見計らって、彼女の方へ向かうと、こちらに気づいて大きく手を振り、満面の笑みで迎える。
「怜治さん、お疲れさまです!」
「うん、おつかれさま。ちょっといいかな?」
にこにことしながら、こっち、と手を招いて、人目のつかない裏側へと連れていく途中、陸たちと目が合った。さっきのおかげで気が立っていた怜治は、陸に黒い微笑をおくった。それを見ていた方南一行は背筋が凍り、陸はひざが震えた。
「怖!なんだあの笑顔、お前見たよな?」
「・・・なにかやらかしたんじゃないのか」
「なんもしてないって!」
「自分ではそう思ってなくても、他人は違う受け取り方をするときがあるから、人間とは全く怖いものですなあ、小日向氏」
「門脇氏、拙者もそう思うでござるよ」
「同情するぜ・・・桜井」
「・・・・・だからなにもしてないですってば!」
方南メンバーの白い目を一身に受け、陸は居心地が悪くなったが、とりあえず心の中で奈々に謝った。
(何か分かんないけど・・桜井さん、ごめん!)
作品名:つま先立ちの恋に慣れたら 作家名:yuuuuuka