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「FRAME」 ――邂逅録1 不易編

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 エミヤは驚きながらシェード見ていた。
 守護者というものになり果てて、そこに存在する人と関わりを持つことも、まして、協力を依頼されることも、初めてのことだった。
(こんな経験は……ない……)
 記憶は伴わないが、経験値は積まれていく。だが、現存の人間との協力、などという情報は一切ない。
 エミヤは、どう答えたものか、と思案するも、表情には全く現れない。
 反応のないエミヤに、シェードは焦れてしまったらしい。
「なんだよ、臍曲げちまったぁ? シロー、こいつ、説得してくれねぇか? 協力してくれってさぁ」
 困り果てた顔でシェードは士郎に頼んでいる。
(まあ、こんなことも……)
 悪くはない、と思い、ふ、と笑う。ここまで付き合ったのだ、最後まで関わってみようという気になった。
「こちらこそ、協力願おう」
「え? ほんとか!」
 エミヤの返答に、シェードは顔を輝かせる。シェードに呼ばれた士郎も、同じような顔をした。
(似た者同士か……、はたまた、このリーダーに似てきたのか……)
 士郎の変化をもう少し見てみたいとも思う。
 右手を出したエミヤの手を取り、ぶんぶん上下に振って、シェードはよろしく頼む、と笑った。



「なあ、あいつらってさ、もしかして、この先、すごい面倒なことをやる奴らなのか?」
 双眼鏡で監視を続けながら士郎が訊く。
「だろうな」
 エミヤの答えに、士郎は顔を上げた。
「知らないのか?」
「私は潰せと言われれば潰す。それだけだからな」
「…………そっか……」
「同情はいらん」
「し、してない!」
 士郎とはこのところ、こんな軽口ばかりを言い合うようになった。
(あの頃とは大違いだな……)
 そんなことを思いながらエミヤは、いつの間にか居心地の悪さを感じていないことに気づく。
(まあ、こいつを殺したところで、私は消えることはないからな……)
 そう諦めることができるようになったのは、あの聖杯戦争で士郎と刃をぶつけ合ったからだ。あれで救われたと今は思える。
 間違いではないと言い切った士郎の言葉が、全てを塗り替えた。
(私がこれほど単純だったとは、思ってもいなかったな……)
 エミヤはつい笑ってしまう。今までの懊悩はなんだったのかと、ひとり笑いを噛みしめた。


「シロー、お前は偵察と援護だ。外の様子をロイズとともに伝えてくれ、いいな?」
「……了解」
 士郎は不貞腐れながら頷いている。
「お前は目がいい、おれたちを俯瞰して見れる。状況判断もまずまずだ。迷うときはロイズに訊け」
 シェードはそれだけ言うと、突入部隊との打ち合わせに入る。
「未熟者め」
 ぼそり、とエミヤが言うと、士郎はむっつりとした顔で睨んでくる。
「偵察と援護を甘く見るな。下手をすれば、お前の判断ミスで部隊は壊滅することになる」
「え……」
「それだけお前を信用している、ということだ」
「そ……っか、そ……だな、うん。て、いうか、俺は何も言ってないだろ!」
「その顔に書いてある。俺にも突入させろ、とな」
「か、書いてない!」
 士郎は憤慨するが、エミヤはそれを、ふふん、と笑う。
「まぁた、はじまったぁ」
 それを見守るSAVEの面々は、このところの二人のやり取りを、微笑ましい、と笑っている。
「エミヤー、シローの相手はそれくらいにして、こっちに入ってくれよー」
 シェードが苦笑まじりに手招きする。エミヤは士郎の入れない実行部隊の一つに加わるのだ。突入ではないが、アジト周辺での援護と、敵の応援を防ぐ位置に配置されている。
「私は一人で十分だ。こちらに人数を割くのなら、建物の裏に回した方がいい。人質を盾にされれば元も子もない」
「いや、そうは言うが、一人でやらせるわけにはいかない。それに、数十で応援が来たら、お前が、」
「問題ない」
 シェードの心配をよそに、エミヤは不遜に笑う。その顔を見て、シェードは眉をあげ、やがて、はぁ、とため息をついた。
「親戚だかなんだか知らねぇけど、ほんっと、シローとそっくりだな」
 エミヤは二の句を継げなかった。
 まさか、士郎と似ていると言われることなど予想だにしていない。
 アレと私のどこが、と言いたいが、反論するとそれを認めている、などと言われそうで、苦々しく押し黙った。
「ぶっ!」
「なんだ」
 ムッとして訊くと、シェードはニヤニヤしている。
「鉄面皮どころか、いろんな顔、できんじゃねえか!」
「鉄面皮だと?」
「シローが言ってたぞ、無表情の、鼻持ちならない身内だってな!」
「みうっ……、う、まあ、間違いでは、ないが……」
 納得がいかず、エミヤはさらに不機嫌に眉間にシワを刻む。
「会うのは久しぶりなんだろ? この仕事が終わったら、呑みにでも行けばいい」
 エミヤはそんな時間はない、とは言わず、頷くに留まる。
(ゆっくりと話すことができるなら……)
 何を話そうか、と考えて、苦笑いを浮かべる。
「エミヤ」
 呼ばれて目を向けた。
「後悔なんかする生き方はするなよ」
 シェードはいつものように茶化すのではなく、真剣そのもので言う。どきり、とエミヤの鼓動が乱れた。
「後悔など……」
 言いかけて、士郎を見る。士郎は偵察位置をロイズと打合せしている。
「……いや、そうだな。後悔などせずに、生きよう」
 真剣に返すこともないと思いながら、口から出任せ、というのでもなかった。エミヤはシェードの真剣な言葉に、誠意をもって答えたいと思ったのだ。
「時々、連絡取ってやってくれ」
「連絡?」
「シローだよ。あいつ、お前にはなついてるからな!」
「なつ……?」
 エミヤは、目を丸くした。
「おれたちには気を許してるようで、どっか構えてやがんだよ、ガキのくせに。けど、お前には、それもないみたいだ。
 あいつは、無鉄砲が過ぎる時があるんだ。何度も注意した。命を落としかねないってな。けど、あいつはそれでもいいと、どこかで思ってるんじゃないかって、不安に思う。やっとそれが薄れてきてはいるが、また、いつ無茶をするか気が気じゃない。若い奴は生きなきゃなんねぇ! 酸いも甘いも知るくらいにはな!」
 エミヤは、頷くことしかできない。自己に対する配慮の無さはやはり変わっていないのか、とため息が漏れる。
「私の目には、アレはずいぶんまともになったと、見えるがな」
「はあ? じゃ、じゃあ、もっと酷かったのか?」
「ああ。よく生きていたものだ、と呆れたよ」
 肩をすくめて言うと、シェードは額に手を当てて空を仰ぐ。ジーザス、と口内でこぼしたのがエミヤにも聞こえた。


 作戦通りに突入は成功し、人質の救出と、建物内は制圧された。
(仕事は終ったか……)
 今回は長かった、とエミヤは夜空に息を吐く。星が雲間から見える。キナ臭い風が鼻につくが、いつものようなやるせなさは感じない。
 ざざ、と風が木々を揺らす。強い風に、トタンの壁がバタンバタンとあおられている。
 ハッとしてエミヤが弓を構えた目前に、トラックが突っ込んできた。
「新手か!」
 敵は街道近くにいた部隊を呼び戻していたらしい。
「そう楽な仕事でもなかったか」