電撃FCI The episode of SEGA 2
真帆は一馬の背後を取って優越感に浸っているのか、はたまた、自らの言う切り札とやらに自信があるのか。いずれにしても不敵な笑みを浮かべていた。
「真帆、紗季! 危ないよ、戻ってきて!」
いくら戦いでは決して傷付くことがないと言っても、今は智花の一部となっている真帆達には危険な行為であった。
智花とあまり距離を置きすぎると、この世界がメインでもサポートでもない二人を異質なものと捉えてしまい、最悪存在を消されてしまう可能性があった。
そんな危険は承知の上なのか、判断しかねるが真帆と紗季は何かを取り出した。
「これを見ろ、もっかん!」
真帆がほれほれ、とこれ見よがしに揺らしているのは、どうやら写真のようだった。
「そ、それは……!?」
写真に写っていたのは、智花達のバスケのコーチをしている少年、長谷川昴であった。しかし、この程度ならそこまで驚くことでもない。問題は真帆が持っているその他の写真である。
「今のあたしらはもっかんの一部だからな、もっかんの記憶を探ることだってできるんだぞー! そしてこれは、あたしの力でもっかんの記憶を写真にしたものだ!」
「な、なんでそんな事……!?」
紗季は写真を見ると、その目をギラギラと輝かせた。
「ふわあ! これはいけないわ! トモったら大胆すぎよ!」
真帆の持っている写真に写る智花は、昴の部屋にて様々なことをしていた。
昴がいない隙を見計らい、ベッドの上に放ってあったシャツを羽織ってみたり、ベッドに潜り込んで枕を抱き抱えて彼の臭いを嗅いでいたりと、智花がこっそりとやったことのある行為が写真に写っていたのである。
「ひょっとしたらトモ、本当は長谷川さんのシャワーシーンも盗撮してるんじゃ……!? きゃー!」
「まさかホントにここまでやってるなんて、さすがもっかん、それでこそエースだ!」
智花の羞恥心は最高点に達していた。
「よーし、紗季! もっと探してみようぜ! 探せばもっとすごいのが出てきたりして」
「真帆ダメよ! これ以上は刺激が強すぎるわ!」
そう言う紗季も、興味津々な様子である。
戦いの最中に突然起こった子供の戯れに、一馬は呆気に取られて言葉を失っていた。
「ふ、ふえぇ! だめえぇぇぇ!」
智花は本当に火が付きそうなほどに顔を赤らめ、まさに恥の最高点にいた。するとどうしたことか、智花は光に包まれ、その瞬間、物凄い力が智花に宿った。
「どいてくださーい!」
智花は両手をバタつかせ、一馬に突っ込んでいった。
「うおおっ!」
智花はただ手をバタバタと動かし、ぶつかってくるだけであるが、謎の光に包まれた智花の攻撃はすさまじい威力であり、偶然であったが一馬の急所を的確に突いていた。
「ごめんなさーい!」
最後の一撃は両手の掌による押し飛ばす攻撃となり、一馬はかなりの距離を飛ばされた。
一馬を吹き飛ばすと、智花は二人のもとに急いで駆け寄った。そしてボールをスティールするかのように、真帆から写真を取り上げた。
「もう、いつの間にこんなもの……!」
「あの大きなカズマノスケを簡単に吹っ飛ばすなんて、さすがエースだ!」
「何がエースよ、もう……!」
智花は恥の余韻を感じながら写真を処分した。
「さて、あたしらにできるのはここまでだ。後はもっかんを全力でサポートするぜ!」
「諦めちゃだめよ、トモ!」
真帆と紗季は一言残して消えていった。
「ふざけやがって……」
智花の不意の強力な攻撃をくらい、ダウンしていた一馬が起き上がる。
体力のバロメーターは三割ほど減少している。智花の切り札攻撃がどれほど威力のあるものだったのか、如実に表れていた。
更に、智花を覆う光は輝き続けていた。切り札状態というもので、パワーアップブラストほどではないが攻撃力が上昇し、攻撃の各所にキャンセルをかける事ができるようになっていた。
真帆によって引き出された智花の切り札が、自身をかなり強化しているのを智花は感じていた。
「行くぜ! うあああ!」
一馬も切り札を使い、青白いオーラを発してヒート状態となった。
どちらも切り札を使用し、戦いはいよいよクライマックスへと差し掛かった。
「先ほどはお見苦しい所を見せてごめんなさい、一馬さん」
「いいさ、どんな力であろうと、あれは智花自身の力だ。そろそろ決着をつけよう。悔いのないように全力でやろうぜ」
一馬は小さな笑みを見せた。
「行きますよ、私、いえ、私達の全開の力、受けてください!」
智花はボールを手にした。
「ひなた!」
智花はひなたにパスを回した。
「かくごー!」
しかし、ひなたのリバースショットは一馬にガードされる。
「んんん……!」
智花は力をためて後ろにパスした。後ろには既に紗季が控えている。
「フリーだよ!」
「はっ!」
紗季はロングシュートを打つ。同時にゴール下に愛莉が出現し、距離の足りなかった紗季のシュートをゴールへと導いた。
「もう逃げない!」
その瞬間、虹の光がゴールを中心に発生し、三つの光が一馬へと降り注いだ。しかしこれもガードされてしまう。
「真帆!」
「待ちわびたー!」
真帆にパスを回すと、花火のような光を出しながら智花にパスし返した。これもガードされるものの、一馬を引き寄せることができ、攻撃しやすくなった。
そしてこれらのチームプレイで仲間全てを呼び出したとき、智花に更なる力が生まれる。
「これは……! うん、なんでもできる気がする!」
智花の固有ポテンシャルが発動し、攻撃力が更に上がった。ここが好機と智花は一馬に攻めかかった。
「来やがれ!」
一馬は挑発し、智花の攻撃を誘う。
「その手には乗りませんよ!」
智花は、攻撃すれば一馬からカウンターを貰うと読み、一馬に掴みかかった。
「よいしょっ!」
智花はくるりと回りながら、スポーツバッグで一馬を打った。
「ぐお!」
スポーツバッグには一体何が入っているのか分からなかったが、硬質のものが一馬の顔面を打ち、一馬からダウンを奪った。
「紗季!」
智花はボールを紗季にパスした。
紗季の放つボールは、ゴールが決まると不思議な力でゴールそのものを一瞬で凍り付かせ、氷柱の尖った氷の塊となって一馬に降りかかった。
「ふん……!」
一馬は、起き上がりと同時に氷付けとなったゴールをガードするが、多段ヒットするゴールにガード硬直してしまう。
一馬は起き上がりに攻撃を重ねられ、低姿勢でガードしてしまった。上段攻撃も下段攻撃も防げる鉄板のガードであるが、今回そのガードは仇となってしまった。
「てりゃ!」
「何っ!?」
智花は小さめにジャンプし、スポーツバッグで一馬を攻撃した。智花の中段攻撃は一馬の頭を打ち、一馬はガードを崩してしまった。
ガードが崩れた瞬間、落下してくる頭上の凍り付いたゴールを受け、一馬はちくちくとダメージを奪われる。そこへ更に、智花のスティールが入り、一馬はなすすべなくボールに吸い込まれた。
「シュート!」
智花は一馬を吸い込んだボールをゴールへと放った。再びダウンを強いられる事になった一馬の上で、智花は真帆を呼び、パスワークで攻撃を続ける。
「邪魔だ邪魔だ!」
「うあっ!」
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 2 作家名:綾田宗