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電撃FCI The episode of SEGA 2

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 一馬は寝返りを打って上を見上げた。次の瞬間、一馬は今感じている違和感の正体が分かった。
 一馬は智花に膝枕をしてもらっていたのだった。
 智花の顔を見上げると、やはり子供らしく深夜に弱いらしく、うつらうつらと眠そうにしていた。
 異世界である神室町では、何が起きるか分からないため、智花は戦いの後で気絶した一馬と吾朗を見守っていたのだった。
「……昴、さん……」
 智花はむにゃむにゃと寝言を言った。どうやら誰かの夢を見ているようだった。
 起こすのは憚れた一馬は、取り合えず智花が目覚めるのを待つことにした。いつまでも膝枕をしてもらっているのも悪い気がしたので、一馬は智花を起こさないようにゆっくりと智花から離れようとする。
 しかし、一馬が僅かな動きをしただけで、智花は目を覚ましてしまった。
「うん……? ふあっ! 一馬さん、気が付いたんですね! すみません、見守っててあげようと思っていたのに、私まで寝ちゃって……」
「いや、気にしないでくれ」
 この世界の戦いでの敗北者は、捨て置かれているのが当たり前のルールである。しかし、智花はわざわざ一馬の面倒を見てくれていた。これは感謝すべき事である。
 一馬は体を起こした。
「もう起きて大丈夫ですか?」
「ああ、自分で言うのもなんだが、体は頑丈な方でな。回復は結構早いんだ」
 一馬はもとの世界では、血みどろな戦いを繰り返しており、戦いの後、どこも怪我をしていない今回の場合は非常に珍しいことだった。
 珍しいことと言えば、戦いと名のつくものに、一馬が敗れるのはかなり久しぶりの事だった。
 もとの世界では、次々に喧嘩を売ってくるギャングを返り討ちにしていたが、この世界のイグニッションデュエル、それもギャングを相手とせず、五人の小学生相手に負けてしまった。
 一馬は何気なく、野試合の会場に目を向けた。今もまだ、イグニッションデュエルが行われている最中であった。
 金髪にサングラス、くわえタバコでバーテンダーの衣装を纏う、変わった容姿をした男が暴れまわっていた。
「なぁぁんだそりゃあぁぁぁ!」
 男は相手のギャングの首をふん掴むと、その場でグルグル回り、遠心力を利用して相手をかなり遠くまで吹き飛ばした。
「あれは、平和島静雄(へいわじましずお)さん。臨也(いざや)さんとはまだ会えていないんでしょうか?」
 智花はバーテン姿の男の事を知っているようだった。
「知り合いか?」
「はい、いつだったか、あのお方とは試合をしたことがあります。なんでも、お友達を探しているんだとか」
「なるほど……」
 臨也と言う人物は、一馬には知る由もなかったが、少なくともその二人は仲の良い知り合いなどではないように思えた。あの様子を見る限り、静雄は臨也の命さえも狙っているように思えた。
「ここで倒されてしまったら、いくら怪我をしないとはいえ、心配になって急いで探しているんでしょうか?」
 子供らしい、純粋な考え方であった。
「あれはどうみても、探しているようには……」
「はい? 何か仰いましたか?」
「いや、何でもない……」
 智花の子供らしい無垢な考え方を無下にしないよう、一馬は彼女に倣う事にした。
「それよりも、他の仲間達はどうしたんだ?」
「あちらです」
 智花は指をさした。真帆達は先ほどの戦いに疲れを見せたのか、ベンチの上でぐっすりと眠っていた。何故か吾朗も一緒に大いびきをかいて寝ていた。
「真島……」
 東城会直系組長ともあろうものが、なんとも不用心に寝ている。もとの世界には、吾朗の寝首を刈ろうとする者は掃いて捨てるほどいることだろう。
 仕方なく、一馬は起こすことにした。命の危険はないとはいえ、直系組長たる者にあってはならない醜態をさらしている。この様なところを部下に見られようものなら、示しがつかない。
 その時だった。
「ひ、ひえっ! な、なんだこいつ強すぎる……!」
 静雄の相手をしていたギャングが、彼のあまりの強さに恐怖心を抱き始めた。
「ああ!? ケンカ売ってきたのはそっちだろうがよ!」
「全くだ、ここで怯むなんて情けないねぇ……」
 ギャングのサポートキャラクターが煽るように言った。
「お前!? 前線で戦ってないくせにむちゃくちゃな事を……!」
「ああン……?」
 静雄はふと、相手のサポートに目をやった。
 そのすかしたような態度、言動は静雄のよく知るあの男によく似ていた。
「テメェ、臨也……?」
 臨也に良く似る男は大げさな素振りを見せる。
「イザヤ? 誰だいそれは? 知らないねぇ……」
 ひとを小バカにしたような薄ら笑いも似ている。頭に血が上りきっている静雄は冷静な判断などできなくなっていた。
「やっぱりテメェ、臨也! 今日こそテメェの息の根止めてやんよ、ノミムシ野郎!」
「おやおや……。他人のそら似でひとを殺そうなんて……おおぅ、怖い怖い! サポートキャラクターで良かったよホント」
 どのような世界でも真っ先に殺したくなる男と会ってしまっただけで、静雄の逆鱗に触れた。
「死ななくても殺す!」
 静雄は近くのガードレールに触れ、引っ張ると、きゅりきり、と形容しがたい鋭い嫌な音を辺りに響かせた。
「おわあ! 何やこの音!? カァー! 辛抱たまらんわ!」
 ガードレールが引き抜かれている音を聞き、音には敏感な吾朗は耳を抑えながら目を覚ました。
「ううっ……! 黒板を引っ掻いたみたいな音、気持ち悪い!」
 吾朗の近くで眠っていた仲間達も、さすがの異音に目を覚ました。しかし、ひなただけは何が起きてもすやすやと眠ったままだった。
「行くぞ、真島」
 一馬は野試合の会場へと赴き、乱入しようとした。
「おぉ! 桐生チャン! やる気やな!?」
 吾朗は寝起きであったが、すぐに目を覚ましていた。
「あ、あんたがあいつをやっつけてくれるのか? それは助かる!」
 静雄に怯んでいたギャングは、予期せぬ乱入者の出現に、少し安堵していた。
「一馬さん? そんな、戦うつもりなんですか!?」
 世界の不思議な力によって、一馬は復活していたが、激しい戦いの後ということに変わりはなく、智花はそんな状態でも戦わんとする一馬に驚愕していた。
「大丈夫だ、智花。俺ならもう戦える」
「でも……!」
「嬢ちゃん、止めても無駄やで。ワシらは戦ってなんぼの存在やからな。それに、あのド金髪、ワシの安眠を邪魔した。少しいわしたらな気が済まんねん」
「そういうわけで智花、お前は仲間をつれてここを離れるんだ。神室町の入口近くの廃ビルにセレナっていう元バーがある。そこで休むといい。子供の寝不足は成長に影響するぜ?」
 二人は言い、静雄の所へと歩いていった。最早止めても無駄であろう事は言うまでもなかった。
「あ、あの……!」
 これから始まるイグニッションデュエルの間に一馬と吾朗と別れになるような感じがし、智花は一言告げた。
「試合楽しかったです。またいつかできるといいですね!」
「ふっ、そうだな……」
 一馬は小さく笑う。そして人波をかき分けて静雄のもとへと歩いた。
「た、頼むぜアンタ! あいつをぶっ飛ばし……!?」
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 2 作家名:綾田宗