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電撃FCI The episode of SEGA 2

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 大河は終始面倒そうな様子のまま、その場から立ち去っていった。
 一馬はひとまず安心していた。この、今の状態の神室町に遥は呼ばれていない。ひょっとすると、神室町とは別の場所にいるかもしれないが、ここよりはまず安全であろうと思われた。
 それにしても、と一馬は思う。
 形振りはまるで違うが、大河と遥は非常によく似た声を持っていた。
 姿からすると、大河も十五歳ほどの高校生と思われ、遥ともそう歳は違わない。
 まさかこの世界には、似たような何か、例えば声といったものがあれば、どちらかに統合されるような理でもあるのか、と一馬は勘繰ってしまった。
 さらに、一馬は大河という名前の男を知っている。冴島大河(さえじまたいが)というかつての仲間であるが、彼はとてつもない怪力の持ち主であった。
 さっきまで一緒にいた大河も、電信柱を倒壊させてしまうほどの力を誇っている。
 もしかすると、あの大河は、遥と冴島大河が合わさって出来上がった存在なのではないか。もしもそうならば、あの力も声もある意味辻褄が合う。しかし。
――途方もない話だな……――
 一馬は自分で思ったことをおかしすぎると一蹴した。
――それよりも……――
 一馬は後ろから、駄々っ子のように何度も名前を呼ぶ存在を、どうにかすべきだと思う
「桐生チャン! さっきから呼んどるのにシカトかいな!?」
「分かっている、少し考え事をしてただけだ」
 一馬は、吾朗が駄々をこねている理由はよく分かっている。
 サポートキャラゆえに、自ら戦えないことにストレスを感じていたのだ。
 大河の言っていた野試合とやらには、一馬も少なからず興味を抱いていた。この世界の理の中で戦うと、元の世界と違ってどのような相手でも対等な戦いとなる。
 ただの暴力とはならず、正々堂々とした戦いになるのは、吾朗とは違うが戦いに楽しみが生まれる、そんな気がしていた。
「劇場前に行ってみようか。何かもとの世界に帰る方法が見付かるかもしれないしな」
「おぉ! 桐生チャン! やっとその気になったんやな! そしたら善は急げや、劇場前に行くで!」
 吾朗はすっかり興奮しきっていた。
「……真島、アンタはこの世界じゃ戦えない。あくまで俺と共に戦う存在だというのは忘れるなよ」
「分かっとるがな! ワシャ桐生チャンの手助けするで。全力でな! 何故なら桐生チャンを倒すんはオレやからな! こんな所でわけの分からん奴に負けられちゃかなわんねや」
 吾朗の言葉は心強いのか、そうではないのか、一馬はやはり彼を読めない男だと思うのだった。
「……とにかく行くぞ」
「まってえな、桐生チャン!」
 二人は神室町、劇場前広場へと向かっていった。
    ※※※
 神室町劇場前広場。
 ここには自らの力を暴力として振るうことに愉悦を覚える者、その者共が力をぶつけ合う様子を見る事を楽しみとする者でごった返していた。
 この世界の理によって、暴力に興じる者達は、傷を作るどころか死ぬこともない。ただ、己が体力のバロメーターが消費されるだけである。
 そのようなルールがあるためか、元の神室町で時折起こる暴力沙汰を見物するだけであった者も、自らの力を試してみようと戦いに参加する。
 それによりこの劇場前広場は、自然に野試合の会場と化していた。
 そんな無法地帯ともいえるこの場所に、ひどく不釣り合いな者達がいた。
「慧心女バスー……!」
 五人の少女が円陣を組み、サイドテールに結った髪の少女が掛け声を上げる。
「ファイト、おー!」
 その掛け声に乗じて、五人組の少女は空に向かってその手を突き上げた。
 この暴力渦巻く神室町に現れたのは、慧心学園(けいしんがくえん)の初等部六年、つまり小学生であった。
 皆同じピンクのフリルワンピースの制服を身に付け、戦いとは縁遠い姿の美少女達である。
 五人のメンバーは皆それぞれ、二つ名を持っていた。
 打ち上げ花火(ファイヤー・ワークス)。名は体を表すという言葉がまさに合っているというほど、天真爛漫なツインテールが特徴的な三沢真帆(みさわまほ)。
 氷の絶対女王政(アイス・エイジ)。こちらもまたその名の通り、氷のように冷えた冷静沈着な判断力を持つ、腰までありそうな髪を二つに三編みにし、スポーツ用アイウェアを着けた永塚紗季(ながつかさき)。
 七色彩蕾(プリズマティック・バド)。五人の中では妙に成長が著しく、他のメンバーに比べると頭一つ分以上の長身を誇るが、それを悩みにして自己主張が少し苦手な香椎愛莉(かしいあいり)。
 無垢なる魔性(イノセント・チャーム)。五人の中では一番小さな体をしているが、ウェーブの長髪、大きな瞳はまるでフランス人形に例えられる、とてもおっとりした少女であり、その容貌は見る者全てを惹き付ける袴田ひなた(はかまだ)。
 そして、このチームをまとめるキャプテンであり、非常に礼節を重んじる性格でありながら、バスケットボールにおいては性格が変わったように前へと攻めていくプレイスタイルを持つ少女。
 彼女のシュートには見る者を魅了する力があり、その無駄のない美しさはまるで花の美しさにも匹敵する。
 雨上がりに咲く花(シャイニー・ギフト)、彼女の名は湊智花(みなとともか)である。
 円陣を組んで、これから挑む戦いに決意を固める彼女らの傍らに、彼女らよりも更に幼く見える少女と痩身の少年がいた。
「おー! ってミサカはミサカはみんなの真似をしてみたり!」
 水色に白の水玉模様のワンピースの上に白衣を羽織ったショートヘアの少女は
、屈託のない笑みを浮かべて腕を突き上げる。
 彼女は学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)の第三位、電撃使い(エレクトロマスター)のクローンである妹達(シスターズ)の一人であり、最後のクローンである。名前はそのまま最後を表すような、打ち止め(ラストオーダー)といった。
 幼い少女らしくはしゃぐ打ち止めの隣に立つ少年は対称的に、非常な厄介ごとに巻き込まれているかのように気だるそうな顔をしていた。
「……ったく、なンでこのオレがこンな事しなきゃなンねェンだァ?」
 パンク調な白黒の縞模様のロングティーシャツにジーンズ姿であり、真っ白な髪を除けば、その出で立ちは、どこにでもいそうなものであるが、この少年は常人とはまるで異なっていた。
 彼こそが学園都市最強を誇る第一位の超能力者(レベル5)、能力名は一方通行(アクセラレータ)であり、能力名がそのまま彼の名前になっている。本名は定かではないが、ありふれた名前であり、名字は二文字、名前は三文字との事であるが、その名を知るものは彼自身を含めても多くない。
 しかし、そんな最強を誇る能力者の彼であるが、その最強の力を無闇に振るうことはできなくなっていた。
 それはこの世界の理が原因というわけではなく、もとの世界にて脳に傷害を受けていたためだった。それ以来、彼の能力の根幹である演算能力はなくなり、更には言語、運動障害までも出てしまった。
 しかし、彼の首に付けられた装置が脳に繋がっており、打ち止めを主体とするミサカネットワークを利用することでそれらの能力の使用を、制限的であるが可能にしていた。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 2 作家名:綾田宗