電撃FCI The episode of SEGA 2
そんな時に助けに入ってくれたのが、智花であった。
智花はメインキャラであり、一方通行は智花をサポートする事で能力の発動が可能になり、そのギャングを追い返す事ができた。
その時智花にはサポートキャラがおらず、メインキャラであっても戦うことはできず、彼女の願いもあって、そのまま一方通行をサポートキャラとして今ここにいた。
一方通行もまた、慧心女バスのメンバー同様に、智花へと恩のある人物であった。
「……借りはきっちり返すぜ。学園都市最強、この一方通行(アクセラレーター)の力でなァ!」
素直になれない一方通行は、穏やかな表情から一変して猟奇的な顔になる。
「一方通行さん、お願いします」
智花は一方通行にサポートを頼む。
「さァて、スクラップの時間だぜ、クソ野郎!」
智花に応じるわけでもなく、一方通行は猟奇的な笑みを携えて叫んだ。
「一方通行さん……」
彼は戦いとなるとずいぶんと人が変わってしまうものだ、と智花は思うのだった。
「真島、戦いが始まる。手を貸してくれるな?」
「当たり前やろが、桐生チャン!」
「フッ、そうだな、よろしく頼む」
「強い奴の頼みや。漢(おとこ)、真島吾朗、いっちょやったろやないかい!」
吾朗は短刀を器用に手の中で回し、その切っ先を次なる対戦相手へと向ける。その先はわずかに、一方通行を向いていた。
「行くぞ」
一馬と吾朗、智花達慧心女バスメンバーと一方通行、打ち止めのコンビが野試合の会場、神室町劇場前広場の中心に立った。
「おいおい、あのガキども本気で戦うつもりなのかよ? 相手はあの堂島の龍と嶋野の狂犬だぜ!?」
「誰か止めた方がいいんじゃないのか?」
「いや、下手にでしゃばったら、嶋野の狂犬とあの妙におっかねえ白髪のガキにブッ飛ばされんぞ!?」
群衆にどよめきが走る。これより始まろうとしている戦いは、方や伝説の元極道と恐ろしい二つ名を持つ現役の組長。方や若冠十一歳から十二歳の小学生と学園都市最強を謳われるレベル5の超能力者である。
戦いの結末は既に見えていそうなものであったが、どちらも並のキャラではなかった。
「ふん、小さな体だが良い目をしてるな。手加減はしねえ!」
「挑むところです、よろしくお願いします!」
二人が掛け合いをすると、女バスのメンバーの姿が消えた。メインキャラに付随するキャラクターは戦闘中、メインキャラの意思のままに出現、消失するためであった。
――もっかん、いつでも呼んでくれよ!――
――おー、ひなもひなもー!――
――氷の絶対女王政(アイス・エイジ)の力、見せて上げるわ!――
――恐いけど、私もう逃げない!――
智花の頭の中にメンバー一人一人の声が響いた。
「うん、みんなで頑張ろう!」
智花はその声に応じる。
「桐生チャンはオレが倒すんや。だから絶対に負けるんやないで?」
「分かっている。だが今はサポートに徹してくれ」
「負けたら絶対に許さへんからな!」
一馬に一言残し、吾朗は後ろに下がっていった。
「ラウンドワン、ファイト!」
どこからともなく響くラウンドコールと同時に、桐生一馬と湊智花のイグニッションデュエルが始まった。
さて、どう出るか、二人は様子見をすべく間合いを広げた。通常攻撃の届かない間合いであるが、智花はボールを手に取り、一馬の頭上に向けて放った。
「シュート!」
一馬の頭上にバスケのゴールが出現し、智花のシュートが決まるとキラキラした光が一馬に降り注いだ。
「ぬおっ!?」
光には攻撃判定があり、それは一馬に少ないながらもダメージを与える。
牽制から先手を取ったのは智花の方だった。
「よっ!」
ダメージを受けて隙のできた一馬に向かって、智花は滑走するかのように距離を詰め、ラッシュをかけようとする。
一馬はすぐに体勢を直したが、智花はすぐそこまで来ており、ひとまずガードに徹することにした。
「はっはっ! とおりゃあ!」
智花はどこからか取り出した扇を手に下段へ攻撃をしかけ、仕上げにスティールの要領でボールで連続して攻めかけた。対する一馬は智花の攻撃を防ぎきる。
次に隙を見せた智花に、一馬は反撃を試みる。
イグニッションデュエルの最中ではあるが、やはり一馬は、神室町のギャングにならばいざ知らず、子供に手を上げるのは気が引けた。そうした思いから拳を思わず止めてしまう。
攻めに転じるチャンスであったが、一馬は攻撃できず、智花の攻めをガードするしかなかった。
「これくらいならば……!」
一馬はリフルクションガードを使用した。一馬の前に円形の光が出現し、智花を後ろへと押し返す。
「どうしたんですか、一馬さん?」
まだ、一度も攻めてこない一馬に智花は訊ねる。
「私が相手では不服ですか?」
「……いや、そういうわけじゃないんだが……」
やはり小学生を相手に拳を振るうのは気が引けることだった。しかし同時に、何もしないで戦う意思を見せないのは、智花に対して失礼に当たることも分かっている。
「やっぱり、私達に気を遣っているんですか?」
勘のいい智花は、一発で一馬の確信をついた。
「それは……」
「でしたら大丈夫です。攻撃されてもちょっと痛いくらいで、絶対に死んだりはしませんから。一馬さんもそれをご存知ではないんですか?」
「確かに、お前の言う通りだ。間違っても相手を殺す事がないのがこの世界の掟らしい。それでも智花のような子供を殴るのは、やはり……」
「そうですか、でも試合はもう始まっているんです。来ないのならこちらから攻めさせてもらいます!」
智花はボールを手にし、バウンドパスをするように放った。
「ひなた!」
ボールは一馬のわきをすり抜けていった。
「おー、いくぞー!」
「何だと!?」
ひなたがいつの間にか、一馬の後ろに立っており、智花からのパスを受け取った。
「かくごー!」
またしても空中にゴールが出現し、ひなたは、後ろ向きでシュートを打った。
「うおお!」
一馬は不思議な力のこもったリバースショットに巻き込まれ、空中のゴールに吸い込まれ、輝くゴールの光によってダメージを受けた。
空中でダメージを受ける一馬に向かって智花はジャンプで近付き、ブラストを放った。
「ここからですよ!」
智花のパワーアップブラストは見事に決まり、クライマックスゲージを多く得ることに成功した。
「ふん!」
ブラストの波動に吹き飛ばされる一馬であるが、空中で回転して体勢を立て直して着地した。
「……うあああ!」
着地と同時に一馬もパワーアップブラストを発動した。クライマックスゲージが増加し、更に先ほどのダメージも少しずつ回復していく。
「フッ、どうやら、全身全霊をかけて当たっても問題はなさそうだな……」
一馬は智花の力を十分なものと認めた。そして戦いへの意思を新たにする。
「手加減はしねえ。全力でかかってこい、智花!」
一馬は、これまでの戦いにて当たった誰よりも強い力を持つと思われる智花を相手に、うっすらと期待の笑みを浮かべた。
「私、絶対に負けませんよ!」
智花も、堂島の龍という伝説的な人物を前に、僅かにたぎる闘争心を感じていた。その感覚はバスケの試合とほとんど変わりはなかった。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 2 作家名:綾田宗