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その髪のひとすじでさえも

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桂の手が伸びてきた。
薬袋を取りあげられる。
「おまえに言われたくない」
その顔を見た。
いつも以上に硬い表情をしている。
「無茶ばかりするのは、銀時、おまえのほうではないか」
そう桂は非難した。
銀時は無言のまま、自分の着ている作務衣に手をかける。
上半身、裸になった。
胸から腹のあたりにかけて包帯が巻かれている。
その包帯を解く。
解き終わると、包帯を畳に投げ捨てた。
桂の眼は、銀時の身体の包帯が巻かれていたあたりに向けられている。
銀時は背筋を真っ直ぐに伸ばし、その視線を受け止める。
「見たらわかると思うが、俺の傷は、もうほとんど治ってるんだよ」
鋭く強い声で、言う。
「テメーの傷も、そうなのか」
そう問われて、しかし、桂は口を引き結ぶ。
答えない。
それが、返事だ。
「深い傷を負ったのは、お互い様だ。だが、俺の傷の治りはやたらと早ェんだよ。そんなこたァ、つき合いの長いテメーなら、よく知ってんだろ」
本当はもう包帯を巻く必要はなかった。
それでも巻いていたのは、新八や神楽やお妙の視線にさらされるからだった。
「テメーの傷はまだ治ってないんだろ。痛み止め飲まねーと、つれェぐれェなんだろ」
なぜ傷の治りの速さが違うか。
桂が虚弱体質なのではない。むしろ、桂は標準より丈夫なほうだ。
銀時の傷の治りが異様に早いのだ。
ただし、それは、この国の者としては、である。
天人には、神楽のように傷の治りが早い種族もある。
自分の母親はこの国の者だったが、おそらく父親は違う。
つまり、自分と桂の違いは、人種の違いなのだろう。
そのことに桂は気づいているはずだ。
戦場などで、一番近くにいて、銀時の驚異的ともいえる傷の治りの早さを何度も見てきたのだから。
「同じ無茶をしても、テメーと俺じゃ、結果が違うんだよ」
作品名:その髪のひとすじでさえも 作家名:hujio