同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語
同調の仕組みは全然わからない流留だが、みな同じ経験をするのかとわかると、なんとなく自分が本当に艦娘の世界に足を踏み入れていることの実感が湧き始めるのだった。
「も、もうそれはいいよね? さて、あとは明石さんのところに行って続きをはなそっか。内田さん、行くよ?」
「え? あぁ、はい。」
初同調のときの感覚の話題を自身が望まないタイミングであまり続けたくない那美恵は早々に本来の話題に矛先を戻そうと流留の服の裾を軽く引っ張った。それに気づいたのと、先輩が話題を変えたので流留はおとなしくそれに従うことにした。
五月雨は二人が出ていこうとする後ろ姿を軽く手を振って見送った。
「はい、行ってらっしゃ〜い!」
「そういえば五月雨ちゃんは何時までいるの?」
執務室の扉のノブに手をかけ、開ける寸前に那美恵は五月雨のこの後の予定を尋ねてみた。するとン〜と小声で唸った後に五月雨は答えた。
「あと20分くらいしたら帰ります。実は待機室に時雨ちゃんたちを待たせるので。本館は私達で戸締まりしちゃうので、那珂さんたちは工廠に行くんであれば、忘れ物無いようにしてくださいね。」
「おっけぃ。わかった。じゃあそっちはお任せしちゃうよ。」
特に用事はないのだが、五月雨たちしかいないとなると本館の戸締まりのことが気になる。那美恵はその心配で尋ねたが、時雨たちもいるとなれば問題無いだろうと察して執務室を後にした。
作品名:同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis