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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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--- 6 三人で行く鎮守府



 ついに那美恵の高校から3人の艦娘が揃うということで、那美恵は翌日の放課後に鎮守府に行こうと流留と幸を誘った。流留は一度行っているので別にいいと言ったが、那美恵はそんな意見は無視して流留を強制参加させた。一方の幸は初めての鎮守府ということで、どもりながらも行く意思を伝える。
 三千花らは艦娘部の勧誘活動から解放されたため、先日をもって艦娘部と生徒会の協力関係は一旦終了と区切りをつけて那美恵たちとは以後別行動をすることになる。その後は親友の那美恵からの要請で協力したり、一緒に鎮守府に行って用事を手伝うだけとなる。

 翌日土曜日の放課後。那美恵は授業が終わったらすぐに行く旨を流留と幸に伝えていた。一旦生徒会室に二人を呼び出して集まって準備を整えた後、鎮守府へ向けて学校を出て駅へと向かう。三千花らは提督や五月雨によろしくと言い那美恵たちを見送った。


--


「内田さんはこれで2回目だけど、さっちゃんは初めてだから、ドキドキするでしょ?」
「は……はい。あの…その…そのさっちゃんという…のは?」
 先日より何かとさっちゃんと呼ぶ那美恵に幸は戸惑った。生徒会長というすごい人とはいえ、面識がなかったのでいきなり親しげに呼ばれるのは違和感がある。そんな幸の様子を察してか、那美恵は一言断った。
「あ、そういうふうに呼ばれるの嫌だった?やっぱり苗字で呼んだほうがよかったかな?」
「う…え……と。あの、別に……どう呼んでいただいても…いいです。」

 先輩でもあったので幸は那美恵に妙な威圧感を感じており、逆らわないことにした。ただ冷静に考えると、呼び名はどうでもよかった。
「じゃあ今日から神先さんはさっちゃんで。あ、でもこれから神通になるんだから、神様とか?」
「う…あ……えと。」
 調子に乗って呼び名を変える那美恵に流留が突っ込んだ。
「会長、それじゃかみさまですよ〜!もっと普通に呼んであげないと。」
「エヘヘ。そっか。それじゃあ、普段はさっちゃん、艦娘のときは神通ちゃんとかじんちゃんだね。」
 不満はないのか幸はコクンコクンと二度頷いた。隣でその様子を見ていた流留が那美恵に再び口を開いた。
「会長。どうせならあたしも何かあだ名で呼んでくださいよ。神先さんだけあだ名はずるいよ!」
 その意見にわざとらしくハッ!とした表情で口に手を当てておどけてみせる那美恵は、オーバーリアクション気味に腕を組んでうーんうーんと唸り、思いついたという表情に切り替えて流留を新しい呼び名で呼んでみせた。

「普段は流留ちゃん。艦娘のときはかわうちゃん。」
 那珂の発案に流留は一瞬目を点にして呆け、そしてツッコむ。
「……そりゃ川内ってかわうちとしか読めなかったっすけど、もはや別物じゃないですか!」
「うーん。注文多いなぁ〜内田さんは。じゃあふつーに川内ちゃんで。」
「まぁそうなりますよね。」

 二人のこれからの呼び名を決めた那美恵は、逆に自分の呼び名を求める。
「じゃあ二人ともこれからはあたしのこと生徒会長とか会長って呼ぶのやめて。これからは同じ艦娘仲間なんだし、もっと気軽にあたしのこと呼んで欲しいな。」

 那美恵はそうは言うが、流留も幸も那美恵の学年と学校内での立場がどうしても頭にちらつき、気軽に呼ぶには躊躇してしまう。だが那美恵はどうしても会長以外の呼び名で呼んで欲しいという目で訴える。二人はそのわかりやすい視線に負け、両者一致でこう呼ぶことにした。

「じゃあ普段はなみえさん。艦娘の時は那珂さん。」
 さん付けかよ……と那美恵は少し不満を持ったが、自分の校内での影響力からして1年生の二人からすればこれが限界かと納得し、OKサインを出した。
「うーん。まぁいいや。それで。じゃあこれから電車に乗って鎮守府に行くよ、流留ちゃん、さっちゃん。」
「「はい、なみえさん。」」
 適当な雑談を交えつつ、気づいたら駅前までたどり着いていたので3人は電車に乗り、となり町にある鎮守府Aへ向かっていった。



--

 鎮守府Aのある町の駅についた3人。那美恵の案内のもと、流留と幸は町の周辺施設の案内を受けながら鎮守府までの道のりをてくてくのんびりと歩き続けた。やがて工事現場によくある仕切りが見えてきた。鎮守府Aのある区画まで辿り着いた証だ。

 2回目である流留は初回と同じようなリアクションで鎮守府の区画をキョロキョロしながら進む。一方で幸は、ノーリアクションで周りをほとんど見ずに先頭を進む那美恵の方向だけを見て進んでいる。そんな幸の様子を見かねて流留がツッコミを入れる。

「ねぇさっちゃん。せっかく鎮守府に来たんだからさ、もっと周り見たらどう?結構面白いよ?」
「え、あの……えと。いいです。」

 さらりと言う幸。そのあまりにクールで現実的で味気ない一言に流留はカチンときた。
「さっちゃんさぁ。それじゃ楽しめないでしょ?せっかく学校とは違う場所に来てるんだからもっと周りを見ないと。面白いものも見過ごしちゃうよ?」

 流留はもっとキョロキョロしようと幸を促すが、彼女はそれでも周りを見ようとしない。黙りこくって那美恵のほう、つまりこれから行こうとしている方向だけをまっすぐ見つづけたまま。一切視線を外そうとしない。その様子を見た流留は呆れた表情ではぁと溜息をついて、それ以上は言わないことにした。


 那美恵は鎮守府の本館へと歩いてきた。後ろからなんだかんだ話しながらついてくる二人を特に気に留めない。那美恵は、自分や三千花たちとは違う内田流留と神先幸という、どことなく凹凸がありそうな二人をこれから艦娘をするにあたり、教育のしがいがありそうだと楽しみでワクワクしていた。
 本館の玄関についた3人。ちょっとした市民会館ほどの大きさとはいえ、鎮守府の本館を目の前にして流留はもちろんのこと、さすがの幸も建物の前まで来ると、味気ない感想は鳴りを潜め、心臓の鼓動が早くなって緊張して畏怖の一言が飛び出る。

「ドキドキ……します。」
「でしょ〜!?でしょ?この前初めて来た時あたしも同じだったもん。あたし艦娘って全然知らなかったけどさ、人知れず戦ってる人たちがこんなところにいるなんて知って、もうドッキドキだもの。ねぇ、さっちゃんは艦娘って知ってたの? 艤装の同調を何度も試しに来たようだったらしいけど。」

 流留が幸の身の上を聞こうとしたが、幸は口を開かず視線を地面に向けてしまう。それを見た流留はまたしてもため息をついて呆れ顔になってしまった。