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同調率99%の少女(10) - 鎮守府Aの物語

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 季節はすでに夏に入りかけており、汗が筋を成して滴り落ちる程度に暑くなってきていたため、室内に入って3人はやっと落ち着いて安堵の息を漏らす。まだ人が少ない鎮守府Aではあるが、勤務する人間のために人が入りそうなところだけはエアコンが効いている。つまりロビーと、艦娘待機室、そして執務室の3部屋だけだ。

「ふぅ。暑かった〜。エアコン効いててよかった〜。」
「あたしはこれくらいの暑さが好きだなぁ〜。」
「……。」
 黙っている幸もフェイスタオルで頬や額を拭ってその暑さを示している。那美恵もハンカチで汗を拭ってパタパタと手で仰いでやっと手に入れた涼しさを堪能している。流留は汗をかいてはいるが、至って平気な顔をしている。


「早速だけど二人には提督に会ってもらいます。流留ちゃんは一度会ったことあるからもう大丈夫だよね?」
「はい!」
「……はい。」

 那美恵は執務室のある3階へと二人を引き連れて執務室の前で待機させた。コンコンとノックをして那美恵は室内からの返事を待つ。やがて男性の声で「どうぞ」と声が聞こえた。
 那美恵は来る前に確認しなかったが、どうやら提督がいることがわかった。今度から来る前に一報入れて確認しないとなーと思いつつ、扉を開けて中にいる提督に向かって挨拶をした。
 執務室には提督だけがいた。

「こんにちは提督。また来たよ!」
「いらっしゃい、光主さん。昨日四ツ原先生から連絡受けたよ。ついに3人目も揃ったんだってな?」
「よかった。ちゃんと連絡受けてたんだ。」
「あぁ。ともあれこれで光主さんの高校との学生艦娘の提携は完全に成ったな。俺も肩の荷が降りたよ。」
「うんうん。あたしもやっと安心して那珂としてお仕事に集中できるよ。」
「ははっ。よろしく頼むよ。そうそう。3人目の子を紹介してくれないか?」
「もちろんそのつもりで今日は来たんだよ。さ、挨拶挨拶。あちらにいらっしゃるのが、鎮守府Aの提督こと責任者の西脇さんだよ。」

 那美恵と提督と呼ばれた男性のやりとりをぼーっと見ていた幸はいきなり自分に振られたので一瞬慌てるが、すぐに冷静さを取り戻して那美恵の言うとおりに挨拶をし始めた。

「あの……神先幸と申します。わ、私は……今回神通の艤装と同調できました。艦娘部の部員にもなりました。よろしくお願い致します。」
 生徒会長の那美恵よりも偉く、四ツ原先生よりも敬うべき対象と判断した幸は口調を意識して挨拶を口にし始めた。普段のドモリや自信の無さをなるべく出さないためと心がけたが、結局普段通りの口ぶりになってしまった。

「はい。よろしくお願いします。私は鎮守府Aの総責任者、みんなには提督と呼ばれてます、西脇と申します。公式には支局長という役職です。この度はうちの鎮守府に来てくれてありがとう。神先さん、あなたにはこれから神通の艤装との同調をまた試してもらいます。俺や工廠の者達が確認して正式にあなたは合格です。すでに結果は出ているとのことで、あくまで俺の目であなたが本当に同調できてるねというただの確認です。よろしいですか?」

 提督から同調の再確認の話を受けて幸はコクリと頷く。了解したという意思表示だ。

「それじゃあみんなで工廠に行こう。」
 提督はそう3人に言うと、すぐに机の上にある電話で内線で明石に連絡した。そして那美恵たちとともに執務室を出て、本館から工廠に場を移した。


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 工廠へと来た4人は明石とひとまず会い、しばらく工廠の入り口で話をしていた。すると工廠の奥から4人の少女、女性が出てきたのに那美恵たちは気づいた。それは、五月雨を始めとして、時雨・妙高・不知火の4人だ。いつも五月雨たちが一緒にいる夕立・村雨を含めた4人ではないのが那美恵は気になる。


「あ!那珂さん!みんな!」
「おぉ!!五月雨ちゃん、みんなお帰り〜。」
「那珂さん、こんにちは。」と時雨。
「こんにちは。ただいま帰還いたしました。」丁寧な口調で軽く会釈する妙高。
 一番後ろにいた不知火はペコリと無言でお辞儀をして挨拶するだけだった。4人はそれぞれの挨拶をして那美恵たちからの出迎えに対応する。

「どしたの?今日は出撃?」
「はい。無人島付近に新手の深海凄艦がいると通報を受けたので、海上警備を兼ねてです。」
 旗艦五月雨の代わりに時雨が答えた。

 さらに那美恵は先に気づいた二人がいないことを聞いてみた。
「夕立ちゃんや村雨ちゃんがいないけど?」
「あの二人は今日はちょっと……体調が悪くて待機室で休んでます。待機室行かれなかったんですか?」
 五月雨が少し言いづらそうに答える。
「あ〜まっすぐに執務室に行っちゃったから気づかなかったよ。」
 二人の体調の意味を察した那美恵は提督がいることもあり、それ以上は聞かないことにした。
 2〜3会話したのち、五月雨たちは那美恵の後ろにいた新顔の二人に気づいた。五月雨は流留のことはすでに知っていたがもう一人は知らない。時雨と不知火にいたってはどちらも知らない。一人だけなら五月雨たちもすぐに対応できるが、二人もいるとなんとなく聞きづらい。五月雨も時雨も積極的な性格ではないためなんとなく萎縮してしまう。
 それを察してか、鎮守府Aの最年長者である妙高が話題の助け舟を出した。

「そちらのお二人が提督がおっしゃってた、那美恵さんの学校から今度艦娘になる生徒さんなのですね。」
「そうです!みんなには紹介できてなかったよね。ささっ。」
 那美恵は流留と幸を促して前に押し出し、全員の前で自己紹介をさせた。

「初めまして!あたしは○○高校1年、内田流留といいます。この度正式に川内になることが決まりました。よろしくです!」
 元気よく、ハキハキと自己紹介をする流留。

「あ、あの……○○高校1年、神先幸と申します。これから神通にならせていただきます。よろしく…お願い致します……。」

 幸本人的にはまともな自己紹介をできたつもりであったが、聞いている側からするとぼそぼそと小声になっていたので聞き取りづらい印象をほぼ全員が持った。初見の五月雨・時雨・不知火は正直名前聞き取れなかったが、3人共それを口に出すような積極的な性格をしていないため、それとなくニコッと笑顔で会釈するだけにした。そんな幸を那美恵がフォローする。

「あのね、うちの神先幸は、実は昨日神通と同調出来たばかりなの。だからこれから提督に見てもらって、正式な合格をもらうの。鎮守府来たのも他の艦娘見るのも今日が初めてでさ、まだ全然慣れてないからまた後でみんなに改めて自己紹介させるよ。今日はこれで、ね?」

 那美恵のフォローを理解した妙高や提督は五月雨たちに合図を送り、これから用事があるからと彼女らを先に本館へと戻らせた。工廠前には大人たちと那美恵たち高校生の3人が残った。