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今宵、役者たちはしめやかに舞台袖に立つ

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Side:Duke


 花かごを持った侍女は、年齢が曖昧に感じる無口な美丈夫の横顔に気鬱を見つけ、そわそわ落ち着かずにいた。少し離れたところで元騎士団主席隊長の身支度を手伝っている年配の侍女に助けを求めたくて彼女を振り返るが、どうやら其方は其方で何か別の件を抱えているらしく大層忙しそうな様子でいて、会話という会話もない状態で何の問題もないまま着替えを済ませてしまった美丈夫の傍に、涙目で立ち竦むしかない。

 「手を煩わせたな、礼を言う」

 まだ城に召抱えられて間もなかったうら若き侍女は、そう不意に声を掛けられ、思いのほか優しく響いたその低い声に、侍女の心得をすっかり忘れて年頃の娘のように微笑んだ。そして横顔ではない表情を見上げ、最後の仕上げである花かごを差し出す。

 「あの、何かご心配があるのですか?」
 「………いや」

 侍女が差し出すかごの中から白い花を取ると、デュークは慣れた手つきで胸ポケットに挿し、ゆるく首を横に振った。