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What's the name of the Game

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「…この仕事が終わったら」
「え?」
 だが、いじめてばかりいるわけにもいかない。
 苦笑して切り出したロイの言葉に、今度は期待に満ちた瞳が向けられる。本当に素直で、可愛い。
「連絡してみるよ」
「ほ、ほんと?」
「ああ」
 ぱあっと幼い顔が喜びに輝いた。
やっぱり笑っているのが一番可愛い、とロイはそんなことを思った。



 夕食を終え、さて就寝をどうしようか、と思っていた時だった。
「…?」
 ロイがぴくりと動きを止めた後、壁にさっと身を寄せあたりをうかがう仕種を見せると、エドワードが目を丸くした。
「君は伏せて」
 しかしロイは、冷静な声で彼に警告した。
 ――慌てて従ったエドワードがようやくテーブルの影に落ちたかどうか、という時だった。

 ダダダダダ…!

「うわっ」
 突然の銃撃に、窓ガラスや何やらが割れる高い音がする。ロイは思わず舌打ちし、しかしすぐに行動を起こす。渾身の力をこめ、テーブルをひっくり返して盾にすると、苦心して明かりを落としてエドワードの肩を抱え、耳元で告げる。
「こちらへ!」
「う、うん…!」
 その時二人がいたのはリビングダイニングで、そこから一番近いのは、階段脇の隠し部屋だった。本当はエドワードだけをそこに置いてロイは防戦したいのだが、さすがにまだ一応正体を隠している身だ。そこまでは出来ない。
 隠し部屋に慌てて二人で入り、ドアを厳重に閉めた後、ほとんど間をおかずに複数の足音が屋内へ入り込んでくるのが聞こえた。間一髪、間に合ったらしい。
「……」
 気づけば小刻みに震えている少年に気づき、ロイは、そっとその小柄を今度こそ腕に抱きしめた。ぴくりと震えたのには、しい、と人差し指を口の前に立てて黙らせる。
「探せ、まだ中にいるはずだ!」
 荒々しい声と足音がしていた。エドワードにはそれは半ば恐怖に近い「実戦」を予感させたが、ロイの耳には勿論そうは聞こえなかった。あいつら、楽しんでいやがるな、というのが純粋な感想である。今の声も腹心のひとりと重なるから、彼らは本気で、上司をおちょくるこの絶好の好機を楽しんでいるに違いない。後で覚えてろ、と思うくらいしか今のロイに選択肢がないことが悔しい。
 階段脇の隠し部屋の前にも勿論人はやってきた。しかし幸か不幸か傍目にはわからないつくりである。変な気配さえ放たなければまあ、普通の兵士なら素通りするに違いない。ロイの性癖や思考を理解している腹心達なら多少危ぶむかもしれないが。
 しかし辿り着くのは思ったより早かったな、とロイはどこか暢気にそんなことも思ってはいた。車が襲撃を受けた後撒いたと思っていたが、やはり経路はある程度掴まれていたのだろう。その後どうやってここを探り当てたかわからないが、まあまあ及第点という所か。全く辿り着けなかったら、かえって部下の能力に不安を抱いたかもしれない。
「……っ」
 ロイは近くを人が通ろうとも比較的安定していたが、少年はそうもいかなかった。そのことに気づいたロイは、後ろから抱きしめるようになっていた向きを変え、前からしっかりと抱きしめなおした。息を飲む音がしたが、それはかまわない。あたりがうるさいので、気づかれるほどの音量ではなかった。ぽんぽん、と背中を叩き、おちつきなさいと態度で示してやる。
 そうしていれば、少し落ち着いたのか、感じる鼓動は平静なリズムに近づいていた。ロイの鼓動を感じたのかもしれない。
 やわらかな金髪に頭をつけながら、これは手放せなくなりそうだな、と自嘲気味にロイは思う。警護官になどさせたくないのだが、別の道でそばに起きたい気持ちが沸き起こる。だが勿論それに流されるほどロイは分別のない人間ではなかった。
「……」
 気配はまだ屋内に張り詰めていたが、とりあえずドアの近くからは誰もいなくなったらしいことにロイは気づいた。腕の中で安堵の息をついている少年は気づいていないかもしれないが…。
「…エドワード、約束をしてくれないか」
 そんな状況を見計らい、ロイはその白い耳元に囁いた。驚いたのだろう、少年は頬を染めて慌てて顔を上げた。なんだか違う気分になりそうだ、と苦笑しつつ、ロイは続けた。
「この仕事が終わったら、さっきの話の彼に紹介しよう、だから」
「……?」
 ロイはそっと、もしものときのために歯の奥に仕込んでいたカプセルの存在を舌で確かめた。そうして、じっとこちらを見上げている少年ににこりと微笑むと、唐突にその唇を塞いだ。金色の目が驚きに見開かれ、体が硬直する。全く予想外の出来事だったに違いない。まあ、ロイだってこんな事態はさすがに脚本に取り入れてはいなかったが。
 驚きに固まっているのをいいことに、ロイは、やわらかな唇を割って、器用に舌先でカプセルを相手の口腔に運び入れ、飲み込ませる。さすがに異物の混入にびくりと大きく相手の体が跳ねたが気にしない。それからしばらくエドワードはもがいていたが、だんだんとろんと瞼が落ちてきたのを見て、ロイも体を離す。かくりと傾いだ体を受け止めて、ロイは、まだ頑張って意識を保とうとしているこめかみにあやすようなキス一つ、だから、の後を続けた。
「――しばらくここでじっとしていてくれるかな」
 飲ませたのは筋弛緩剤。
 エドワードが暴走したら使おうと思っていたのだが、その前に使う機会に見舞われしまったらしい。
 何が起こったかわからない、という目をしているエドワードの髪をさらりと撫でた後、ロイは音もなく隠し部屋から外に出、鍵をかけた。

 案の定ドア付近には人はおらず、細心の注意を払い、ロイは地下へともぐった。配電盤をいじるためと、武器を調達するために。
 どうやら地下への通路は発見されていないようで、地下室には誰の気配もなかった。だが慎重を期して明かりはつけない。
 まず配電盤ですべての電源をオフにする。瞬間地上から驚きの悲鳴のようなものがあがったから、切れてはいるのだろう。ただ照明くらい持ってきているかもしれないので急場しのぎではあるが、一時の混乱くらいは招けたと思いたい。
 それから、次は武器の調達だ。
 勿論相手は同士だから命を奪うわけには行かないが、多勢に無勢だ。それに、向こうもここぞとばかりロイを本気で狙っている節がある。手が検していたら逆にロイが危ないので、ここはあまり遠慮しないことにした。
 銃、ナイフ、ロープを装着して素早く身支度を終える。殴打用の武器も手につけた。遠距離攻撃の機会はほぼないと考えられるので、短距離、近接戦闘といったことだけを念頭に置く。
 まあ、昨夜の襲撃者程度のレベルだったら一撃でも効果ありということが既にわかっている。あれを基準にしていいかどうかはわからないが、全く通じないということもないだろう。
「…さて、殲滅戦の始まりだ」
 ロイは面白くも呟き、しかし口元には面白がるような笑みを浮かべて行動を開始した。
作品名:What's the name of the Game 作家名:スサ