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しょうきち
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novelistID. 58099
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わたしにとって、あなたにとって

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 そして翌日、オスカーは朝一番に彼の執務室へと押しかけてきた心配性の女王補佐官に昨夜の出来事を教えた。
 滑らかな白磁のごとき肌が、良く見れば今日はこころなしかくすんでいる。
 昼食にでも誘ってゆっくり話そうと思っていた矢先に来られてしまったが、それほど気がかりだったということだろう。
 紅茶のカップに視線を落としながら、解決の知らせにほうと息をつくロザリア。
「そうでしたの……。ソリテアといえば、女王交代のときに先代の女王陛下とディア様から聞いたことがあるわ。そんな恐ろしいものでなかったのは幸いだったわね」
「俺としてはルヴァと一騎打ちになるんじゃないかと思っていたから、少し拍子抜けもしたがな」
 高みの見物を決め込むかのような物言いに、ロザリアの目が釣り上がる。
「今回のことだって一歩間違えたら命に関わる一大事、楽しむような事態ではなくってよ。アンスタンがたまたま『あの』ルヴァの想いから生まれた存在だったから良かったものの、これが候補時代にあの子が振ったあの方やあの方やあの方の想念だったら、今頃ルヴァがどうなっていたことか……」
「……あえてそいつらの名前は訊かないでおくぞ」
 想念ならまだしもソリテアのように怨念と化している場合もあったわけか、とオスカーは背筋に寒気が走るのを堪えていた。
「湖に浮かんでいる地の守護聖を発見、なんてことになっていたかもしれなくってよ? ……これを機会に、あなたも日頃の行いには気をつけることね」
 しっかり釘を刺しながらつんとすました顔で紅茶を口に運ぶロザリアに、オスカーの片眉が上がる。
「おっとこれは心外だな、今はすっかり君一筋だと言っているだろう?」
 ロザリアの手を握ろうとした手を上からぺしりとはたかれた。
 ちなみに「今は」がとてつもなく余計な一言であったことに、彼はまだ気付いていない。
「どうだか。炎の守護聖はお口が上手でいらっしゃるから、いまいち信用に欠けますわね」
 ロザリアがティーカップから手を離した瞬間、すかさずオスカーの指が絡む。
「俺が信用できないというなら、信じさせてみせるさ。愛しの補佐官殿のためにな」
 手の甲に唇を押し当てて甘く微笑むと、ロザリアの頬が染まりにっこりと口角が上がった。
「それでは、今日中の執務を午後3時までに全て終わらせて下さったら信用致しますわ」
 見目麗しい女王補佐官は恐ろしく優しい声音でそう言うと、呆然としている炎の守護聖の執務室を後にした。