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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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わたしにとって、あなたにとって

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 翌日、執務中のオスカーの元を訪れたロザリアに昨夜の顛末を話して聞かせた。
 カプチーノを口に運びながら、オスカーは暫し考え込んでいた。
「ロザリアの言う通り、何か引っかかる感じはあったが……それが何なのか、まだ掴めていない。こちらの杞憂であればいいんだがな」
 戦いに慣れた者の勘ともいうべき感覚で感じ取った微かな違和感。
 だがそれを証明できるような証拠は今のところ何もない。あるのは自分の感覚だけだ。
 そこへ黙って話を聞いていたロザリアが口を開いた。
「やはり何かがおかしいですわ。あの子、今は守護聖たちを敬称つきで呼んだりしていないもの」
「……ルヴァと二人きりのときだけは別、という可能性は?」
 君だってそうだろう? と言いたげにアイスブルーの瞳が女王補佐官を見つめた。
「そう……なのかしら。そうだといいんだけれど」
 じっと見つめられて僅かに頬を紅潮させたロザリアが俯く。
「しかし妙だよな。あのルヴァが恋人を、しかも現女王陛下を黙って見送るだけとは。マイペースだが人への気遣いにかけてはそつがないと思っていたが」
 顎をさすりながら考え込むオスカーへ、ロザリアが頷きを返す。
「ええ。試験中でも過保護だと思ったくらいですもの、今回のお話はにわかには信じられませんわ……」
「もう少し様子を探ってみるとしよう……さあ、この話はこれで終わりだ。俯いていないでこっちを見てくれないか、麗しの補佐官殿?」
 ロザリアの青紫の瞳が緩く弧を描き、オスカーはその表情に愛おしさを滲ませた視線を投げかけてそっとくちづけた。

 その後いつものように淡々と執務をこなし、昼食を摂ってから気晴らしに公園へと散歩に出かけた。
 そこには午前中に話題になっていたルヴァがベンチに腰掛けて読書に勤しむ姿があった。
 この聖地髄一の頭脳に太刀打ちできるとは思っていなかったが、少し探りを入れてみようと側へ近づいていく。
「奇遇だな、ルヴァ。今日は本体ごと虫干し中か?」
 厚めの書物から視線を上げ、にこりと微笑むルヴァ。
「おやオスカー。ええ、お天気もいいのでたまには外に出て陽に当たらないとね。あなたはお散歩ですかー?」
 そう言いながらルヴァがベンチの端へと寄り座る場所を空けたので、オスカーは遠慮なくそこへ腰掛ける。
「俺もたまには健康的にな。活動範囲が夜間限定ってのは不健康だとせっつかれるもんでな」
 誰にと言わずとも彼の恋人である女王補佐官からだとルヴァには伝わっていた。
「あなたやオリヴィエはアルコールが活力源ですものねえ」
 その言葉に、オスカーは違いないと言って笑う。
「そういうルヴァもここ最近は宵っ張りらしいじゃないか。一時期は心配していたが、仲睦まじくて何よりだ」
「は……? はぁ、確かに私は宵っ張りの読書の虫ですけれど。心配って一体何の話ですか?」
 きょとんとした顔のルヴァの様子に、また奇妙な違和感を感じ取るオスカー。
「うん? 昨夜は森の湖にいただろう? その……陛下と」
 ルヴァの表情にさっと緊張の色が奔る。オスカーはその様子をじっと観察しつつ、更に言葉を続けた。
「何だ、照れてるのか? 聖地公認の仲なんだ、今更照れる必要もないだろう」
 そう言ってからかってみるものの、ルヴァの表情は硬いままだ。
「いえ……夕べは続きものの本を三冊一気読みしていましたから、一歩も外へ出てはいませんよ。何かの見間違いでは?」
 確かに顔は確認できていなかった。
 だがこの聖地で、ターバンを身につけた者といえばこの地の守護聖しかいない。そして、その声音も確かにルヴァのものだった。
 オスカーは念のために改めて確認を取る。
「……夜間に外出はしていないのか」
「ええ、執務が終わって私邸へまっすぐ帰って、それから夜半過ぎまで本を読んでいましたが……」
 いつの間にかオスカーの顔からも笑みが消え、おぼろげだった胸騒ぎが単なる疑念から確信へと変貌を遂げ始めていた。
「ここ数日はどうなんだ、夜に湖へ出かけたのか」
 オスカーの問いにルヴァは困惑を露わにさせて無言で首を横に振る。
「あの、陛下とってことは、そこに陛下がいたんですか。……陛下が、ここ最近夜間に誰かと逢っていた、と……」
 青褪め愕然とした表情に変わっていくルヴァに、慌ててオスカーがフォローを入れた。
「あ、いや、俺の見間違いかもしれん。今の発言は忘れてくれ」
「いいえ! ……教えて下さい、あなたは夕べ何を見たんですか。アンジェは……誰と逢い何をしていたというんですか!」
 ルヴァはその場から離れようと腰を上げたオスカーの腕を掴み、引き止めた。
 振り払うのは造作もないことだったが、その余りにも真剣なまなざしに気圧された。
 自分の恋人が別の男、それも得体の知れない者と逢瀬を重ねていると知れば、動揺するのも無理はない。
 ルヴァはこういうことで嘘をつくような性分ではない。きちんと話してみるべきではないか────そう逡巡して、オスカーはひとつため息をついた。
「……分かったよ、ちゃんと話す」