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しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
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わたしにとって、あなたにとって

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 そうして、念のためロザリアの名を伏せて女王陛下が夜間に外出していると報告があったこと、尾行した先で見たことをかいつまんでルヴァに説明した。
 ルヴァはその話を聞きながら、険しい顔を崩さずに顎に手を宛がいじっと考え込んでいたが、おもむろに口を開いた。
「私と良く似た背格好と声の男……ですか。あの、陛下は今夜もそこへ向かうんでしょうか」
「また明日来る、と言っていたからそうなんだろう」
 ルヴァが小さく嘆息して、そっと目を伏せた。それからゆっくりと瞼を持ち上げて話し出す。
「ではこの案件は私に預からせて下さい。今夜私が行って、この目で確かめてきます」
「大丈夫か? その……無理しなくてもいいんだぞ、今日も俺が行けばいい」
「逢っているのが他の見知った誰かならともかくとして」
 そう前置きをしてルヴァはこほんと咳払いをする。
「私に成りすました者が陛下に近付いているとは、何やら不穏なものを感じますからね。何らかの対処は必要でしょう」
 オスカーが横目でルヴァを流し見ながら口の端を上げる。
「ほう。それを一言で表現すると?」
 ルヴァもちらりと横目でオスカーを流し見て、片眉を上げる。
「……いい度胸ですね、と」
「はははは! 策士の貫禄だな、ルヴァ。流石はジュリアス様に一服盛っただけのことはある」
「そんな昔のことを。陛下の御身に災いを為す者かどうか、しっかり見てきますよ。あなたは聖殿周辺の警護を厚くしておいて頂けますか」
「分かった。何かあればすぐに連絡してくれ。くれぐれも無理はするなよ」
 常に冷静に状況を判断して適切な行動をとる────それは戦いの場においても必要な能力の一つだ。
 オスカーが尊敬してやまない光の守護聖の口癖でもあるが、その実本当に冷静沈着なのはこの男だと思っている。
 聖地の懐刀の切れ味は鋭い。物腰の柔らかさで舐めてかかれば痛い目に遭う。
 オスカーとしては女王陛下の懐刀を自認しているし武力では圧倒的にこちらに分があるが、その武力分が全て知力に上積みされたルヴァという男は決して敵に回したくないタイプの人間だ。
 どうやら湖にいた地の守護聖を騙る者は、その切れ味を試される運命にあるようだ────と、オスカーは微笑する。

 そして彼は自分の執務室へと戻っていった。