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しょうきち
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novelistID. 58099
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わたしにとって、あなたにとって

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 とぼとぼと私邸へと戻ったルヴァはいつものように本を開く気にもなれず、そのまま眠る準備をして寝台へと身を投げ出した。
 何とはなしに思い返すのは、その昔守護聖たちを恐怖と混乱の坩堝に陥れたソリテアのことだ。
(……ソリテアは精神体……現守護聖の意識を乗っ取るしか肉体を得ることは叶わなかった。しかし今日のあの男は……何から何まで私と同じ身体を持っていた)
 目撃した一つ一つを思い返して情報をまとめようとしたものの、その度にアンジェリークの幸福に満ちた笑顔がちらついて胸が痛んだ。

 とにかく今はあの男の目的が不明な以上、このままアンジェリークを近づけておくわけにはいかない。
 彼女はまた聖殿を抜け出すだろう。そこで捕まえて説得できれば御の字だ。

 時刻は既に深夜三時を過ぎていた。
 それでも眠れそうな兆候は一向に訪れないまま、無理やり目を閉じて余計なことを考えないようにしながら、ただ夜が明けるのを待った。

 結局明け方に浅い眠りに落ちたものの熟睡するほどではない状態で出仕して、いつも通りに執務をこなした。
 昼の休憩中にオスカーが執務室へとやってきて、お互いの情報を交換しながら対策を練る。
 読書で徹夜をすることもしばしばなルヴァとしては睡眠不足には慣れていたものの、どうやら酷い顔をしていたらしくオスカーから半笑いで指摘された。
「目が充血しているぞ。今日の見張りは俺が代わろうか」
「いえ、私が行きますよ。夕べは少し考え事をしすぎてしまいましてね、眠るタイミングを逃したもので」
「……で? 考えとやらはまとまったのか」
 その問いには首を横に振った。
「ざっくり大まかに、という段階ですね。まだ謎が多いので今夜はもう少し証拠を掴みたいところです」
「そうか。それなら俺は湖近くで待機しているとしよう……もし何か危険が差し迫ったら、遠慮なくサクリアを放て。すぐに駆けつける」
 ルヴァは唇を一文字に引き結んで頷き、僅かに口角を上げた。
「そうですね……何かあってからではいけませんし、その方向でお願いします。もし可能であればあの男と接触してみますから」
 一瞬にしてオスカーのアイスブルーの瞳からからかいの色が消え失せ、鋭い視線がルヴァを射抜く。
「もう一度言う。くれぐれも無理はするなよ……陛下が悲しむようなことだけはしないでくれ」
 その言葉にルヴァは微かな笑みを浮かべた。
 どこか悲壮さが漂うその微笑みに、オスカーはそれ以上追求することもできずに執務室を後にした。