ヘレナ冒険録
[おかしな魔道士] 『そう言えばゴロノアの地下城を見て思い出した。確か、ミシディアにもいまだ目的のはっきりしない古城があるらしいということを。今度はグランシェルト経由でミシディアに向かってみよう』
「はあ……もう腕がパンパン……。こんなことならやっぱりオルデリオンに寄って、メルセデスに頼めばよかったかなぁ」
ヘレナよ、よくまあグランシェルトまで手漕ぎボートで渡れたものだ。本当に、随分とタフになった。
「さてと、この大港グランポートならゆっくり休めそうだわ。宿屋、宿屋……」
「やあっ! ちょっとそこのキミっ!」
「ん?」
おっと、なんともおかしな格好の女の子が話しかけてきたではないか。全身緑色の衣裳。普通の格好にしては派手すぎるし、魔道士と呼ぶにも派手すぎるな。
「私?」
「そう! ボク見てたよー! キミさ、手漕ぎボートで上陸してたよね!? それにそのおっきなリュック、もしかして探検家さんかな!」
人当たりが良いというか、馴れ馴れしいというか、なんとも不思議な少女だ。それにしてもおしい。
「おしい!」
「おしい?」
「そう! 私はヘレナ。冒険家よ。探検家とはちょっと違うわ」
そう。ヘレナよ、その通り。
「ふーん。そうなんだ! どっちでもいいけどね! キミさ、冒険家ってことはモンスターとも戦うよね!? 仲間はいないの?」
「前の大陸では一人、いたんだけどね。……彼女は他の任務があるみたいだから、今は私一人よ」
「えへへへへ……。ねえっ! ボクを連れてってよ! きっと役に立てると思うんだっ」
なんと、普通ではないと思っていたが、やはり戦闘に特化した魔道士……か?
「え!? ほんと? それは助かるわ。カーミルにも護衛を雇うようにって言われたばっかりだし。それで、あなたは見たところ魔道士のようだけど、使うのは黒魔法? それとも白魔法?」
おっと、急にむすっとした顔をしたな、この少女。
「そんなチンケな魔道士どもと一緒にしないでよー!」
「え? じゃあ、もしかして赤魔道士……とか」
そうか。黒白両方の魔法を操る赤魔道士か。それなら彼女が怒ったのも無理はない。……っと、さらにふくれっ面になったな。これも違うのか?
「違う違うー!」
大きく腕をバツの字にしてピョンピョン跳ね始めたぞ。大丈夫か、この少女……。
「じゃーん! ボクはマリーちゃん! 極限緑魔道士でーす!」
「極限……緑……魔道士??」
「そう! キミにどんな強化ができるのか、今から楽しみだねっ!」
おいおい、ヘレナよ。本当に大丈夫なのか? なんだかおかしな魔道士が仲間になってしまったぞ。