ヘレナ冒険録
[地下城の発見] 『ついにモンタナの手記にあった地下城を発見する。やはり、彼の冒険録は真実だったのだ。今は廃城になってしまっているが、その原因は? それに、誰がどんな暮らしをしていたのだろう』
「ほら、地下のお城!! モンタナは嘘なんてついてない! おとぎ話じゃない! これが現実なの!!」
ついに見つけたな、ヘレナよ。
「本当に冒険が好きなんだ…………好きなのだな」
「人生そのものよ!」
そう、人生は冒険であり、君は冒険が人生になりつつある。
「これ……古代文字!? 『ブラン……は……ルネラ……を……』」
「読めるのか?」
「すぐには解読できない。そのまま写し取っておくわ。だけど……この文字は……! うん、エルフ語! 古代の種族がここにいたのよ!」
言語学者の家に生まれた恩恵がここで発揮されたわけであるな。きちんと勉強したわけではないのに、この石板に刻まれた文字……単語だけでもしっかり読み取れているようだ。
「エルフに、地下城……物語の中に迷い込んだ気分だ」
そうだろう、カーミル。モンスターの相手ばかりではなく、たまにはロマンに身を委ねるのも良いものだろう?
「私は、知りたい。どんな人が住んでいたんだろ……」
さあ、もっと探索してみよう。荒らさないように、情報だけを受け取るのだ。それが、真の冒険家たるものの掟である。
「こっちは見覚えがあるわね。確か、ドワーフ式の設計図。あっちは……エルフ文字の記録か。スケッチだけしていこう」
「よくやるわね……オッホン。手際がよいものだな。さすがの学識だ」
「知識は、伝説をただの伝説で終わらせないための道具。次に残していかないと…………あれは!?」
エルフ文字とドワーフ様式、この二つが同じ部屋にあるということは……。
「やっぱり、ドワーフの道具だわ! 【モンタナ冒険録】のとおり……両者が共存していた!?」
異種族の共存。まさにそれこそ、この廃城が語るストーリーの主題である。ここからだ、ヘレナよ。
「エルフ族とドワーフ族は仲が悪いものだって、おとぎ話は言ってる」
「実際は違ったのか?」
「ううん、だいたいはそのとおりだったみたい。自然を愛するエルフたちは自然から資源を得るドワーフたちを下賤だと思っていたの」
「しかしキミは、この城ではエルフとドワーフ、両方の痕跡を見つけているぞ」
「そこなのよ! 彼らがどうして共存できたのか。きっとここを調べたらわかるはず!」
自分の見つけた発見からさらなる好奇心を引き出す。冒険家冥利に尽きるな、ヘレナよ。
「共存の秘密か……。これ、帝国に持ち帰ったらきっといい情報になるよね」
おっと、帝国……とは。このカーミルという女剣士。悪意は微塵も感じられないとはいえ、油断ならないな。冒険家を政治に巻き込むのだけは、やめて欲しいものだ。