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同調率99%の少女(11) - 鎮守府Aの物語

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--- 3 着任式当日



 着任式当日になった。その日は土曜日だ。土曜が休みの学校もあるのだが、那美恵たちの高校は土曜日も授業はあり半日で終わる。授業が終わると同時に同じクラスにいた那美恵と三千花は帰り支度を素早く済ませて生徒会室へと向かう。
 前日までに阿賀奈や1年生組全員に連絡を済ませていたので、生徒会室でしばらく待つことにした。


「いよいよだね、川内と神通の着任式。先輩としてはいかがですか?」
 三千花が珍しく茶化すようにマイク代わりのげんこつを那美恵の口元に持って行き尋ねる。
「ん〜そうですね〜。あたし主役じゃないけどドッキドキですよ。初同調したときのように恥ずかしいことになったらどうしよーとか思っちゃってますよ。だからみっちゃん、側にいてぇ〜!」
 くねくねしながら今の気持ちを口にすると、最後に那美恵は三千花に抱きついた。
「あ゛〜暑い! 真夏に抱きつくんじゃない!」
 ペチン!と那美恵のおでこはいい音を立てた。

 しばらくすると三戸が入ってきた。
「お疲れ様っす〜。」
「三戸くん〜1年生組だと君が一番乗り〜!」
「うおっまじっすか! なんか本人たちよりワクワク楽しみにしてるみたいだなぁ〜俺。」
 後頭部を頭をポリポリと掻きながら三戸は生徒会室に入り、那美恵たちの向かいの席に行ってバッグを置いて座った。
「いいんじゃない?外野が盛り上げたほうが内田さんたちも喜ぶわよきっと。」
「そーそー。あと三戸くんは提督を除いた唯一の男子なんだから、頑張って盛り上げてくれないと!」
「俺責任重大じゃないっすか!!」
 三戸と那美恵・三千花が冗談を言い合いながらしゃべっていると、続いてその数分後には和子・流留・幸が生徒会室に入ってきた。

「お疲れ様です。あ、三戸くん、先に来てたんですね。」と和子。
「おっつかれ〜。おぉ、三戸くんもう来てるし。はや〜。」流留は胸元をパタパタさせながら入ってくる。
「……お疲れ様です。」
 最後に入ってきた幸は至って涼しい顔をさせて一言言い、生徒会室の戸を閉めた。
「あとは……四ツ原先生が来れば皆揃って出られるね〜。」
「少し待ってましょ。」と三千花。

 那美恵たちは生徒会室でそれぞれ適当に時間を潰した。


--

 開けた窓の側に立って風に当っていた三戸が流留や幸に話しかけた。流留たちは椅子に座っている。

「そういえばさ、内田さんと神先さんの艦娘姿、バッチリ見たよ。いや〜眼福眼福。」
 やや下心ありな目線で流留たちを見る三戸に流留が反応した。
「どう?カッコ良かった?あたし決まってた?」
「うん。カッコ可愛いって言えばいいのかな。とにかくグッとキたよ。」
「う〜可愛いって……あたしはカッコいいほうが〜。」

 可愛いと言われ慣れていないのか、流留は三戸からの評価に鈍い反応しか見せない。その表情には照れなどは一切含まれていない残念そうな表情。三戸は彼女の反応を見て付け足す。
「あーいやいや。どっちかっていうとカッコいいと思うよ。あとは艤装フル装備した姿見てみたいなぁ〜。絶対カッコいいよ!」
「それいいね! どうせならその姿見てもらいたいなぁ。」
 三戸の方を向いていた流留が正反対の位置にいる那美恵に視線を移して那美恵に言った。
「ねぇなみえさん。着任式終わったら艤装全部装備して海出られるのかな?」
「うーん。どうだろう。提督に言えば出させてもらえるんじゃないかなぁ。記念の日だし、それくらいは許してくれると思うよ〜。」

 回答ともつかない那美恵からの想像を聞いた流留は三戸の方を再度向いた。
「三戸くん!もしOKもらえたら、フル装備川内になったあたしをちゃーんと撮ってよね?」
 ウィンクをして三戸にお願いをする流留。三戸はそれを受けて親指を立てて了解のサインを送った。
「うん。OK! 任せてくれよ。」


--

 三戸たちが話しているその端で、和子と幸は静かに話していた。二人の話題もやはり先日撮った幸の神通の制服姿やこの後の着任式である。

「さっちゃんどう?今ドキドキしてる?」
「……うん。それなりに。」
「そっか。そうそう、さっちゃんの神通の制服姿、なかなか可愛かったよ。」
 幸は無言でコクコクと頷いた後ぼそっと呟いた。呟いたその表情には密やかな笑みがあった。
「……ありがとう。」

「さっちゃんさ、どうせ普段と違う格好になるなら髪型変えれば? 前髪煩わしくない?」
 和子からの指摘を受けて、長い前髪で隠れて見えづらい表情を悩み顔に変化させて数秒悩む。前髪で隠れてなくとも和子以外の人にはその表情から感情は見えづらい。

「でも私……流行りのヘアスタイルわかんないし、多分似合うのなんてないよ……。」
「そんなことないと思うけどなぁ。ちょっとゴメンね?」

 和子は一言断って、幸の顔に両手を近づけ、彼女の顔の左右にかかっていた前髪をそうっと優しくかき分けて顔のすべてを外に出す。幸の素顔が露わになった。
「前髪をこうやってはねるようにパーマ当てるだけでも違うと思うな。私もあまりヘアスタイル詳しいわけじゃないからこれくらいしか言えないけど……。あとは会長や内田さん、鎮守府にいる他の艦娘の人たちに意見求めれば似合う髪型探してくれると思うよ。」
「……うん。」
「思い切ってイメチェンしちゃえば一気に変われるよ。頑張ってね。」
「……ありがと、和子ちゃん。」

 ほのかに周囲を花が舞い散ってそうな雰囲気でおしゃべりをする幸と和子。その二人を少し離れた場所で見ていた那美恵は三千花に小声で話した。

「さっちゃんってば前髪上げると印象すっげー変わるね!?」
「そうなの?」
「さっきわこちゃんが彼女の前髪クイッと手櫛で分けてたのちらっと見たの。そしたらすげー可愛いの!」
「へぇ。……ってあんた三戸くん並に興奮してるわね。」
 やや興奮気味になっている那美恵に突っ込んだ。

「あんたは漫画かドラマのヒロインかよ!って話っすよ、みちかさんや。根暗な少女が突如イケイケの美少女にって。」
「あんた……テレビの見過ぎ。そしてさりげなく悪口言ってるわよ。まあでも神先さん自信なさげなのは仕方ないとしても、前髪くらいきちんと分けたらいいのにね。」
「そーそー。さっきちらっと見たさっちゃん、かなりイケてそうなのにもったいないよ。なんとか口説いて食べちゃいたいくらい。」
 そのセリフを那美恵が言うと、また那美恵のおでこがペシリといい音を立てて叩かれた。
「だから、そういうおっさん臭い茶化しはやめなさいっての。」
「うぎぃ。でもホントに可愛かったんだよぉ。でもね、お胸の大きさはあたしが勝ってるんだよ?」