同調率99%の少女(11) - 鎮守府Aの物語
影を落とし始める流留に那美恵が遮られていた言葉を続ける。
「ちょっとまってまって。話を最後まで聞いてよ。確かに流留ちゃんがすごく可愛い女の子だから接してたってのあるかもしれない。けどね。三戸くんもそうだと思うけど、今まで男子が流留ちゃんと仲良くやれてたのは、可愛い女の子が自分たちに親しげに接してくれるってだけじゃないと思うの。」
「それって……?」
「流留ちゃんがただ可愛いだけじゃない。趣味やフィーリングが合うから、流留ちゃん自身に魅力が揃ってたからこそ、みんな接してくれてたんだと思う。それが人望とか、そういうたぐいのもの。それが大事なポイントなんだよきっと。普通に可愛いだけだったら、あたしやさっちゃん含め他の女子生徒と同じ接し方しかしなかったはずだよ。」
流留は那美恵の言葉に頷くなどのリアクションを取ることをせず、ただひたすら耳を傾けている。
「ただね……あなたのお友達関係が男子だけってのはちょっと極端すぎて女子からは良い感情持たれてなかったのかもしれないのは事実だね。ちょっとつらいかもだけど、言うよ。流留ちゃんは、今まで偏りすぎてた。それはハッキリ言える。」
「う……。」若干俯く角度を深める流留。
「あなたの学校生活はあんなことになってしまったけど、これはある意味チャンスだと思うの。」
「チャンス?」
「うん。艦娘部に入るって決めたことも合わせてね。リセットされたって思えば、新しい環境で、新しい交友関係を築けるチャンスなんだよ。ただそのためには、流留ちゃんは一度ちゃんと自分の女子力を磨いておかないと。」
一拍置いて那美恵は続ける。
「艦娘の世界って圧倒的に女性社会らしいし、今の流留ちゃんにとっては同性と付き合わなくちゃっていうまだ不安があり得る世界だと思うけど、 趣味が合う明石さんや男の人だけど西脇提督がいる。自分の得意分野で艦娘の世界でも交友関係を増やしていくのもアリだけど、もっと同性が憧れる女の子として、自分を磨いて生きたって、誰も何も文句は言わないし、気にしたりしないよ。流留ちゃんにはそれができる、そうあたしは信じてる。自分の魅力を増やして成長することで、今後の学校生活を持ち直せるかもしれない。当然艦娘としても強くなれるかもしれない。これからは男子だけじゃなくて同性、ううん。もっと色んな人にステキな貴方を見せてもいいと思うの。」
流留は那美恵の言葉を聞く傍から強く噛み締めていた。
“偏っている”
同性の友達が今までできなかったことから、それは痛感した。けれど、趣味で繋がれるのはどうしても捨てられない。
自分にとって交友とは何か。女子らしくってなんだ。キャピキャピすればいいのか。いや、さすがにそれは違うのはわかる。
自分らしく生きた結果が今までの人生ならば、どうするのがこれからのためになる?
難しい。何かしようにも、女子らしくするための知識も材料も足りなすぎる。
「わかりません。何をどうすればいいのか、今のあたしには。だから……」
「だから、教えてあげる。もちろんあたしだけじゃないよ?五月雨ちゃんたちもいるし、これから入ってくる人たちもいる。流留ちゃんは社交性高そうだから、とにかくいろんな人にガンガンアタックしていくのがまずは大事かなって思う。きっとみんな、親身になってくれるよ!」
「……はい。あーーー!変に小難しく考えるのはあたしの性に合わない! なみえさんの期待を裏切るようだけど、あたしはやっぱ趣味が合う人がいい! まずはそれで切り込んでみて、他の事はそれから考えます。とにかくアタックすることだけはわかりました。」
片手で髪の毛をくしゃくしゃと乱し、思考をリセットすべく頭を振る。流留は那美恵に今まとめた思いを告げる。すると那美恵はニッコリと微笑んで言った。
「うん、まぁ。切り口はそれでいいと思う。とにかくこれからだから……ね?」
うっすらと苦笑いを浮かべてはいたが、那美恵は流留の決意たる言葉に相槌を打つのだった。
作品名:同調率99%の少女(11) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis