同調率99%の少女(11) - 鎮守府Aの物語
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「なるほどね。二人のことやっとわかってきたよ。あたしたちこれから仲良くやれそうって確信得たよ。なんたって同じ学校の生徒で、なおかつ川内型っていう似たような艦に選ばれた繋がりだもん。これで仲良くできないわけがないよ。ね!ね!そう思わない?」
「はい! なみえさんの言葉、ありがたいです。信じてついていきますよ。」
「……私も、です。」
流留と幸も、身を乗り出さんばかりの勢いで語る那美恵と同じ気持ちそして確信を得ていた。
幸も着替え終わり、流留と幸は背格好や体型はやや違えど、二人ともほぼ同じ姿になった。それは、川内型の艦娘の制服のなせる効果である。ここで那美恵も着替えれば3人揃うが、那美恵本人はその日着替える気はさらさらなかった。
着替え終わった二人の様をマジマジと見る那美恵。着慣れていない感も相まって流留と幸は恥ずかしがっている。
「ハハッ。いざ着替えると、まーだ恥ずかしい感じしますね。なんかコスプレみたい。」
「まだ……しっくりこないです。」
流留は胸元を隠すように両腕で自身を抱きしめるような仕草をし、幸はもともと引っ込み思案で自信なさげな態度がさらに悪化したように身をかがめて姿勢を悪くしてしまう。
そんな二人を見て那美恵はフォローするついでに提案をした。
「いやいや似合ってるよ二人とも。これで艤装すべてつければ完璧だけど今日は制服までね。さーて、その姿でいっちょ出歩いてみますか!」
「えっー出歩くの!?なみえさんに見せたからもういいんじゃないですか!?」
流留が拒否を訴え出ると幸もコクコクと素早く頷く。しかしそんなわがままを許す那美恵ではない。那美恵がニンマリと嫌らしい笑顔になっていくのを流留と幸は見てしまった。
「あたしだけ見たって仕方ないじゃん。ホントは提督に見て欲しかったけどいないし、せめて五月雨ちゃんには見てもらお? ほらほら、試着なんだからフィット感を秘書艦さまにお伝えしないといけないでしょー?」
那美恵は流留と幸の手を引っ張った。着替えも終わり、見せに行かなければならない。気恥ずかしかった流留と幸だが、やや諦めの表情を浮かべ引っ張られるがまま、那美恵に付き従って更衣室を後にした。
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再び執務室に来た3人は早速中にいた五月雨に、流留と幸の川内と神通としての姿を初お披露目した。入ってきた3人の姿、特に流留と幸の姿を一目見て沸き立つように五月雨は席から立ち、跳ねるように机を迂回してトテトテと駆け寄ってくる。
「うわぁ〜!すごく似合ってます! 那珂さんもよかったですけど、お二人もいいですね〜。」
二人の艦娘の正装の様を喜び素直に褒める五月雨。
「寸法は大丈夫ですか?なんかあったら測りなおして制服直してもらうので遠慮せず言って下さいね。」
流留と幸は服をところどころクイッと引っ張ったりだぶついたところ、きついところがないかどうかをひと通り確認する。
「うん。大丈夫かな。」
「私も……大丈夫です。」
「二人ともこれでバッチリ〜」
那美恵が二人の背中をポンと叩きながら一言念押しした。
「それじゃあ写真とろ?五月雨ちゃんも入ってさ。」
那美恵はそう言って学校のブレザーのポケットに入っていた携帯電話を取り出して流留たちにプラプラとかざして見せる。二人ともそれぞれの友人に見せる約束をしていたので快く承諾した。
流留だけ、幸だけ、流留と幸、那美恵・流留・幸、五月雨・流留・幸、4人は思い思いの組み合わせで写真を撮った。
「よーし。満足ぅ〜。」
「なみえさん。あとであたしの携帯にも写真送っといてくださいよ?」
「あ……あの、私もお願いします。」
「あ、那珂さん。私にもください!」
「おっけぃおっけぃ。それじゃあ早速送っちゃうよぉ〜。」
そう言って那美恵は流留、幸、五月雨3人のメールアドレスにさきほど撮った写真を添付して早速送信した。流留と幸は携帯電話を更衣室に置きっぱなしのためすぐには確認できなかったが、五月雨は秘書艦席の上に置いてあったためすぐにピロロロと通知音が鳴り、写真を確認できた。
写真を送った那美恵は流留たちを連れて更衣室へと戻ろうとしたが思い出したことがあるので扉の手前で立ち止まり方向転換して五月雨に問いかけた。
「あ、そうだ五月雨ちゃん。一つ聞いていい?」
「はい。なんですか?」
「あのね、二人の着任式にみっちゃんたち、つまりうちの高校の生徒会のメンバーも参加させたいんだけど、ダメかな? 記念に同席してもらいたいんだけど……。」
那美恵から問い合わせを受けて五月雨は数秒考え込んだ後答えた。
「わかりました。提督にあとで確認しておきます。多分大丈夫だと思いますから、中村さんたちには先に連絡しておいてもらってかまいませんよ。」
「おぉ! さすが秘書艦さんだ〜頼もしいぜぃ〜。」
「エヘヘッ。那珂さんに頼られるってなんだか嬉しいですっ!」
那美恵の言葉を額面通り素直に受け取り、素直に満面の笑みで喜ぶ五月雨。茶化し混じりの五月雨への言葉は、彼女の自尊心を満足させるものになった。
聞くものも聞いたので那美恵たちは五月雨に別れの挨拶をし、流留と幸を連れて更衣室へと再び案内した。途中にある艦娘の待機室に寄ろうと奈美恵は思ったが、もし全員いようものなら今日中に二人の制服姿を見てしまうことになり、着任式の楽しみを減らしてしまう可能性があるためあえて寄らずにまっすぐ更衣室へと戻った。
当初の恥ずかしさはどこへやらと、騒ぎたい気分になっていた流留が案の定寄ろうと言い出したが、那美恵は彼女の要望を却下した。
作品名:同調率99%の少女(11) - 鎮守府Aの物語 作家名:lumis