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同調率99%の少女(12) - 鎮守府Aの物語

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--- 5 提督と艦娘たち




「今の…聞かれちゃったかな?」
「どうだろ?うちら小声だったから大丈夫なんじゃない?」
 普段の様子と裏腹に本気でさきほどの自分の発言に対する反応を気にする那珂。三千花は無事であるだろうと想像して平然と適当なフォローをする。

 五十鈴は何度かチラチラと背後の提督を見るが彼と川内や神通たち5人が気づいた様子はないとふんで一息つく。
「って、なんで私までドキドキしなきゃいけないのよ!」
 努めて小声で那珂に怒鳴る五十鈴。
「知らないよぉ〜。勝手に五十鈴ちゃんドキドキしちゃってさ〜。あたしの発言のほうが聞かれたらまずいよ〜。」
 またしてもわざとらしくクネクネと身体をツイストしておどけながら恥ずかしさをアピールする那珂。三千花も五十鈴もその行動にはもはや触れずに那珂の言い分だけに反応して返す。

「あんたこそいつもの冗談なら平気でしょ?」
「だから言ってんじゃん。ホントだってぇ〜。」
「……え?ほ、本当…なの?」
 五十鈴は上ずった声になって那珂に確認する。那珂は大きくコクンと首を縦に振った後、声に出した。
「ホントホント。那珂ちゃん嘘つかない。」

 那珂の言い方と態度には普段のおちゃらけが混じっている。五十鈴は那珂の今の言葉さえ、本当かどうか怪しいとふむ。つまり、那珂の告白はすべて信用出来ない。判断しかねる。一緒に艦娘の仕事をし始めてある程度経つとはいえ、五十鈴は那珂のことを大して理解できていない。真面目な点では信じる・頼るに値すると思っているが、普段の様はからっきしである。

 疲れる。
 五十鈴の心境はこの一言に満ちた。真面目に振る舞うときは割りと好きになれるが、目の前の少女は妙に他人の感情や思いを察するのが得意ときている。自分の思いに感づいていておちょくるためにわざと発言している可能性も否めない。
 中村三千花という彼女の同級生は、よくこんな人と幼い頃から付き合えるものだ。きっと彼女なりの苦労があったからこその今なのだろうが……。いっそのこと光主那美恵使用マニュアルでもいただきたいものだ。
 そう頭の中で思いを張り巡らせる五十鈴。

 とりあえずは、真に受けないこと。五十鈴は三千花からそれとなく聞けたその忠告を念頭に置いて那珂に反応することにした。
 五十鈴はジーっと那珂を真正面に見つめる。那珂はまさか五十鈴が黙ってじっと見つめてくるとは思わなかったので少し焦りを見せた。
「な、なに五十鈴ちゃん?あたしのこと見つめちゃって。」
「……ま、いいわ。そういうことにしておきましょ。」
「?」

((もし本当だったら、一番やっかいなライバルだし、嘘だったら私の気持ちを弄ぶ那珂を許すことはできない。))


--

「あ。」
 三千花が少し上ずった声で一言だけ発した。
「どしたのみっちゃ……あ!?」
 那珂と五十鈴は三千花と向きあうように立っていた。それは川内たちに背中を向ける形になっており、そこから近づいてきた提督にすぐには気づけなかった。三千花が一言発した拍子に振り向くことで初めて後ろに迫っていた気配に気がついた。

「や!3人は何を話してたのかな?」

 五十鈴は心の中で思いを張り巡らせていた直後、那珂は自身の発言の後だったため提督の何気ない語りかけにすぐには対応できない。二人とも「あ。ええと……」と焦りで言葉を濁している。
 そこで至って平常心な三千花が助け舟を出して先に対応した。

「ガールズトークですよ。だから西脇さんは聞いたらいけません。」
 決して強い言い方でもなく、本気で言ってるわけでもないがピシャリとした言い方の三千花の一言。
「ありゃ。それはおじさんにはつらいな。それじゃあ引き続きお楽しみくださいな。」
 提督は肩をすくめて軽くおどけて冗談を言いながら踵を返し、食べ物を置いてあるテーブルのほうに向かっていく。
 提督が背を向けたので視線が交わう心配がなくなりホッと胸をなでおろした那珂らはいつもの調子で提督に一言だけ茶化し混じりの声をかけた。

「自分でおじさん言わない〜!提督十分若いよ!ちょっと歳の離れたお兄ちゃんで通じるって〜。ね、五十鈴ちゃん。」
「へっ!?あ、そ、そうね。そうよ提督。……私はどっちでもいいけど。」
「ははっ、ありがとう。」
 五十鈴は急に振られて焦りつつも平静を取り戻しつつ同意する。最後の一言は非常に小さな声でモゴモゴ言ったので提督"には"聞こえなかった。

((てか五十鈴ちゃん、分かりやすすぎるよぉ〜!さすがにこんな五十鈴ちゃんはいじったらかわいそうか〜))

 なお五十鈴の頬は少し赤らみ、引きつっていた。対する那珂は赤らめてはいなかったが、引きつるというよりも頬の感度が少しだけ高ぶっていて、誰かに触れられたら非常に危ないところであった。


--

「あ〜今度はマジでビックリしたね〜。」
 那珂は自身の胸元に手を当ててホッと撫で下ろす。五十鈴もそれに倣って行うが、ノリツッコミのような態度になってしまった。
「ホントよ……ってだからなんで私まで!ち、違うんだからね!?」
「五十鈴ちゃん逆ギレかぃ。わけわかんないよぉ。」

 三千花の目の前でそんなやりとりをする那珂と五十鈴。三千花はそれを眺めていた。自分と那美恵とは違い、かなり凹凸あるコンビだが、五十鈴こと五十嵐凛花ならば、なんだかんだで良き付き合いをしていけるだろうと評価した。

 ただ五十鈴があまりに感情出しすぎ、反応しすぎなところが気になっていた。そこを親友である那美恵に突かれすぎないか、それだけが目下最大の心配事である。
 そんな、ついでの心配をする三千花であった。