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同調率99%の少女(12) - 鎮守府Aの物語

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「ま〜あたしたちはそんな艦娘になりましたが、五十鈴さんや。」
「なによ?」
「真面目な五十鈴さんは今気になってる人、いらっしゃるのでしょーか?」

 急に話題を変え、姿勢を前かがみにして上目遣いで五十鈴の顔を覗き込む那珂。二人の間にいた三千花は親友が時折人を多大にからかう時のいやらしいニヤケ顔になっていることに気づいた。と同時に嫌な予感しかしない。
 このままでは五十鈴の危険が危ない!などと三千花は悟ったがとりあえずそのまま見ていることにした。

「え……何よ突然!?」
「え〜あたしたちは艦娘である前にぃ〜、花の女子高生ですし、ねぇみちかさんや。」
 同意を求められて三千花は心臓が一瞬跳ねた。
「私に同意を求めないでよ!それにその言い方、いちいち古いのよ。」
「え〜だっておばあちゃんやママが女子高生だった時に使ってたって言い方さ、逆に新鮮じゃない? それはそうと。みっちゃんも気になるでしょ? 艦娘の恋愛事情。」

 親友が言葉巧みに誘いかけるのを聞いて、三千花は実はそれなりに気になっていた。艦娘というよりも、艦娘になった他校の生徒の素行が気になっているというほうが正しい。三千花には那美恵、あるいは後輩の流留や幸がいる。その二人であってもそれほど知っているとは言えないが、せっかく知り合えた同学年の五十鈴こと五十嵐凛花についてもうちょっと知りたいと思い始めていた。
 そんな思いが湧き上がっていたため、那珂の言うことに微妙な反応を示し始めす。三千花は心のなかで、"五十鈴さん、ゴメンなさい"と謝りつつ今の考えを口にした。

「んーと。ええと。そう言われてみるとそ、そうかな?せっかくこうしてお招き頂いてるんだし。なみえ以外のか、艦娘の方のこと知りたいかな……?」
 親友からその言葉を聞き出したその瞬間、那珂はしてやったりの薄らにやけた顔になる。三千花だけでなく五十鈴もその表情の示さんとするものを感じ取るのは難くなかった。

「じゃあちょっとこっちこっち。」
 那珂は三千花と五十鈴を手招きして会議室の端っこに連れて行った。そうすることで川内たちのいる場所とも、五月雨たちのいる場所ともほぼ等間隔で間が開くことになった。
「なになに?なんなのよ端まで来させて。」
 五十鈴は那珂の意図がわからずに問いただしながら移動する。三千花はもうどういう展開になるのか想像がついていたためあえて何も言わずに親友の動きに追随する。
「じゃあ準備おっけ〜ということで。五十鈴さんにインタビューです!」
 那珂は箸をマイクに見立てて箸頭を五十鈴の口元に近づけた。

「あ、あんたねぇ〜何のつもりよ!?」
「え〜、アイドル目指すたるもの、街行く人や他の艦娘の皆さんにも積極的に話しかけられないといけないでしょ?あたしが艦娘アイドルになるための練習だと思ってさぁ。付き合ってよ?なぁに、恥ずかしいのは最初だけだよ。」
「アイドルって……。」と五十鈴は呆れて一言。
 那珂は五十鈴の反応なぞ気にせず続ける。
「うちのみっちゃんなんか長年あたしに付き合ってくれたおかげで今じゃ黙ってたってペラペラ語ってくれるんだよぉ〜。そりゃもうあんなことやこんなことまで恥じらいなんてなんのそn
「コラ!ホントだと思われたらどうするの!?」
 言葉の途中で三千花から怒られて遮られ、たじろいで見せる那珂の仕草は誰が見ても演技丸出しだった。いつもの調子でエヘヘと笑ってごまかすのみ。

 五十鈴はそんなやりとりをする二人を見て額を抑えてため息一つついた後、三千花に向かって労いの言葉をかけた。
「中村さん、那珂…那美恵の友人やってるの大変でしょ?」
 それはねぎらいというよりも同情の念が強い言葉だった。三千花はコクリと頷いて返事をする。
「アハハ……なんというか、はい。よそ様に申し訳ないというかなんというか。」
「お気持ち察するわ。私にもそれなりに変わり者の友人いるけれど、那珂ほどじゃないわ。」
「まぁ、これでも10年位付き合いあるんで。なみえの手綱の締め方とでもいったらいいのかな。わかってくれば楽して頼もしい娘なんで、どうかよろしくお願い致します。」
「フフッ。わかってるわよ。こっちでは任せて頂戴。」
 二人は学校と鎮守府、お互いそれぞれの場所で那珂の手綱を締めるべき似た立場なのかもと共通認識を得て、分かり合っていた。

「ブー!二人とも勝手にわかり合わないでよぉ!!インタビューの途中だぞ〜」
 那珂はやはり演技丸出しの憤慨する仕草でもって三千花と五十鈴に文句を突きつける。
「え、それ続けるつもりだったの? ちょっと中村さん、彼女に何か言ってあげてよ。」
 五十鈴は話題をはぐらかすつもりで確認の言葉を投げかけた。しかし三千花の反応は芳しくない。
 三千花はそれとこれとは別、と言わんばかりに先ほどの分かり合えた感情とは違う感情でもって五十鈴に向き合い、そして視線を外した。五十鈴はそれを見て頭に?がたくさん浮かび困惑する。
 五十鈴の混乱を察知した那珂は彼女の様子を一切に気にせずインタビューごっこを再開した。

「むふふ〜。じゃあ改めて聞きます。五十鈴さんは今気になってる人はいるのでしょーか?」
 親友のサポートを受けて那珂は改めて手に持った箸の頭を五十鈴に向けて問いかけた。
 五十鈴は深く大きくため息をついた。この女、この表情ということは、きっと何を言っても茶化す気満々だなと悟った。ならば逆に驚かせてやれという考えが五十鈴の頭の中に浮かぶ。
 そして目を細めて視線を下向きにしながら答え始めた。

「わかったわよ。答えればいいんでしょ答えれば。……いろんな意味であんたが気になってるわよ、那珂!」
「ドキッ!! 五十鈴ちゃんそーいう趣味だったの!?あ、あたしにはまだ早いよぉ〜。五十鈴ちゃん不健全〜!」
 頭をブンブンと横に振ってわざとらしく拒絶と照れを演出する那珂。ただ五十鈴の回答は那珂にとっては予想の範囲内である。平然と五十鈴の回答に鋭く反論した。

「も〜五十鈴ちゃんったら。それは反則ぅ。ダーメ!ちゃんと答えなさい!」
「だ、誰が真面目に答えるのよこんな場で!」
「すみません五十鈴さん。この娘こういうノリになったら止まらないんで、ノってあげてください。」
「ちょっと中村さん!?あなたちゃんと那珂の手綱締めてよ!」
「大丈夫です。締めるときは締めるんで。」
「今が締め時じゃないの!?」
 五十鈴の叫び(周りに人がいるので小さな声だが)は那珂と三千花の耳から耳へと素通りしていった。観念したのか五十鈴は半泣きになりながらも答えた。