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艦隊これくしょん―艦これ― 第2艦隊健在なり

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 五月雨は駆け足で廊下へと飛び出した。寺西はそんな彼女を目で追って、やれやれと思いつつも、彼女が来る前より明るい気分でドアを閉じた。

「五月雨ちゃん、長官の様子どうだった?」
 警備任務中に、そう那珂が尋ねる。
「特に落ち込んでる様子じゃなかったです。あ、もちろん昨日のことは反省してると思います!」
 慌てて五月雨がフォローを入れる。その五月雨の発言を聞いた3隻は、同時に少し固かった表情を緩ませた。
 警備任務中の第2艦隊の周りには、水平線の果てまで深い青の海が続いている。今日の海は敵艦の1隻も、大きな波も無い穏やかな海だ。
「目に見えて落ち込んでないようなら安心だね」
「全く、こんな忙しいときに休むなんて言語道断ね! 明日から馬車馬のように働いてもらうわ!」
「あ、那珂ちゃん、長官の前で元気になれる歌、歌っちゃおー!」
「はは、それはいいアイディアだね。ボクも何か元気になれそうなことをやろうかな」
「あ、私も! 時雨ちゃん、一緒に考えよ?」
「まったく、あなた達は本当にお人好しね」
 先程まで彼女らの頭上にあった太陽は真っ白のままだが、いつの間にか傾き始めていた。
「那珂さん」
「うん、みんな〜ここで変針! 後、中継点は2つだから、がんばろー!」
「はーい」
 那珂の号令に3隻は答える。警備任務はまだ続く。

 クリーニングのために外出届を出した寺西が、昼食を外で食べて戻ってくる頃には、時計の針は14時を指していた。夕食までは時間があるため、彼はどうしようかを悩んでいたが、工廠へと向かっていった。工廠では明石が大きなミシンの様な機械に腰を掛けて、作業を行っていた。
「あ、長官! すいません、すぐ作業終わらせますので」
「いやいや、特に火急の用事じゃないから、焦らなくていいよ」
「いえ、あとちょっとでキリの良いところまで行くので、すぐ終わらせますね」
「ごめんね」
 工廠の壁に作業音が反響する。ふと寺西は工廠の一角に丸いすが並んでいたので、その一つに腰掛ける。腰掛けると、ぼんやりと右の手のひらを見て左手で揉み始めた。
「ふう、これでオッケーです。お待たせしました長官。今日はどういったご用事ですか?」
「いや、特に用事というわけではないんだ。ただなんとなく寄ってみただけで」
 明石と顔を合わせると、少し頬を赤くしながら、寺西は後頭部に手を当ててそう言った。彼の指はスッと彼の髪の間をすり抜けた。
「あ、いえいえ、別に用事がなくてもいいんですよ! いや、長官、昨日の件があったじゃないですか。何か悩まれてたりとか、愚痴を言ったりしたいんじゃないかなーって」
「いや、別にそんなことはないよ。確かに僕は日本を守る軍人だからね。富山長官のような、確固とした意思を持つべきだということは重々分かったよ」
 寺西はうんうん頷いて、自分の言葉を探すように話す。
「でも、僕は彼女たちも守りたい。冨山さんは最後の手段と言っていたけど、そんな最後の手段になるような状況を、僕の目が黒いうちは絶対に作らせない。そうすれば、国を守ることと彼女たちを守ること、両方できる。難しいかもしれないけど、そのためなら努力も惜しまないよ」
「大変なことをさらっと言いますね」
 明石が寺西の隣の丸いすに座る。明石はぼんやりと正面を向き、寺西の顔の向きは少し明石の方に傾けたが、ゆっくり正面に戻った。
「でも、私は応援してますよ」
 寺西の眉がピクリと上方に動いた。
「無理ですよ、とは言わないのかい?」
「確かにその考えは、ただの理想で実現できないものかもしれません。でも、そんなのやってみなくちゃわからないじゃないですか。いくら設計段階でいい作品が出来上がっても、実際に試作してみたら理想からかけ離れた性能になってしまったなんてこともあるんですから」
 寺西の視線が少し下がり、腕を組む。小さなため息が漏れた。
「ただ、長官なら出来ますよ。私達のこと、ちゃーんと考えてくれてますから」
「……そうか、ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」
 寺西の視線がまた上がり、少し口角を上げて頷く。