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艦隊これくしょん―艦これ― 第2艦隊健在なり

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 1600に第2艦隊は鎮守府へ帰投。富山長官の執務室で結果を報告した。そして今日の夕食の配膳担当だった、那珂が司令本部棟前のロータリーで食事を受け取りに行くと、その場には先に人が居た。
「あれ、長官、何やってるの? 今日の配膳は私が担当だよ?」
「あ、いやあ、なんか1日休みだと、どうも手持ち無沙汰でね。夕食が待ちきれなくなっちゃったから、手伝いに来たよ」
「いや、それはだめだよ! 嬉しいけど!」
「えっ、え、なんで?」
 腰が引け、明らかに動揺した様子で寺西が聞き返す。腰に手を当て仁王立ちした那珂は、鼻からふっと息を吐くと、訳を語る。
「だって那珂ちゃんはみんなのものなんだよ! そうやって親切にしてくれるのは嬉しいけど、那珂ちゃんは長官のこと、特別に見ることは出来ないから!」
「そ、そうかい」
 手の甲で、少し水分の付着した額を拭いつつ、寺西はゆっくり息を吐く。
「今後は気をつけるようにするよ」
「うん! 手伝ってくれるのはありがたいけど、そこは那珂ちゃんがみんなに愛をあげるための、大切な覚悟だからね! それだけはちゃんと知っておいてね!」
「よ、よくわかった。それじゃあ食堂まで運ぼうか」
「うん! お手伝い、よろしくね!」
 2人は食事の入った容器を持ち上げると、そのまま食堂の方へと向かっていった。
 まだ17時より前だったため、食堂には誰も居ない。那珂と寺西が大きな容器を調理場に持っていくと、那珂が右手を顎先に当てて考える。
「長官」
「どうしたんだい?」
「私が食事をよそうから、長官はお盆に並べて渡してもらっても良い?」
「ああ、構わないよ」
 那珂は準備前に食堂を出ていった。寺西は少し首を傾げつつも、せめて髪の毛が入らないように、帽子をいつもより深くかぶり、作業に取り掛かった。彼が念入りに手を洗っていると、那珂が食堂へと戻ってきた。声をかけようと寺西が入り口を向くと、そこには私物と思しきエプロンと三角巾を身に纏った彼女がこちらに来ていた。
「おまたせ長官! いやー、みんなで回して使ってる割烹着も、かわいい那珂ちゃんには似合うんだけど、やっぱり配膳もおしゃれにしないとねっ」
「あ、ああ」
 突然の衣装チェンジに驚きが隠せない寺西だったが、そんなことは気にせず那珂は調理室に入って作業を続けた。寺西もそんな那珂を見て、少しそわそわしたまま、夕食の準備作業に取り掛かった。
 2人が配膳作業をしていると、何人かの艦娘たちが食堂へとやってきた。一番にやってきたのは第2艦隊の満潮だった。
「え、なんであんたがここにいるのよ」
「いや、どうも休み中は手持ち無沙汰で落ち着かないからね。せっかくだから、那珂の手伝いをしてるんだよ」
「あ、そう。もしかして那珂さんに変なことしてないでしょうね?」
「い、いや、そんなことするわけないだろ」
「ふーん。ま、あなたにそんなこと出来るわけ無いわよね」
 横を向きながら自分の悪口を言ってくる満潮に対して、寺西は眉をしかめる。そんなことは気にしないかのように、満潮は続ける。
「ま、自分の配膳担当じゃない休日にこうやって手伝うのは、良い心がけね。戦略・戦術面では論外だけど、性格面では少し見直したわ」
 そこまで言うと、お盆をサッと取って席についた。寺西は気付かなかったが、満潮の耳先がうっすら紅梅色に色づいていた。
「なんだったんだ……」
「満潮ちゃんも長官を心配してたんだって―」
 那珂はそう言いながら、柔らかな湯気を出す茶碗を寺西に手渡した。
「え、心配していたのかい? そうは見えなかったけど」
「言い方は良くないけど、満潮ちゃん心配してたんだよー。警備任務中だって、長官がそこまで落ち込んで――」