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Lovin' you 6

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ハヤトやクワトロ大尉から事情を聞いていたブライトは子供を見やる。
連邦のアムロに対する非道な行いに腹を立てたが、アムロが子供を自分の家族として育てると聞いた時には複雑な思いだった。
しかし、こうして母親をしているアムロの姿に少しだけ安堵する。
「はい。カイルって言います。もうすぐ10ヶ月になります。」
そう言って、カイルをブライトに見せる。
アムロに似た赤茶色の癖毛にスカイブルーの瞳。そして、その顔立ちは…。
「アムロ…、この子の父親は…。」
ブライトは驚愕した瞳をアムロに向ける。
「はい。多分あの人です。本人とのDNA鑑定はしてないけど、セイラさんとは一致してるので。」
「なんてこった!」
ブライトは手で顔を半分覆うと、そう吐き捨てる。
「私もまさかこんな事になるとは思いませんでした。悪趣味な科学者の仕業で…!」
と、アムロは軽く言うが、事はかなり重大だと言うことをブライトは理解している。
何しろ、シャア・アズナブルの子だと言う事は、即ち"ジオン"の血を継ぐ直系だ。
それが公になれば、ミネバ・ザビ同様この子供の運命は嵐の中に放り込まれる事になる。
アムロがクワトロ大尉の誘いを断ったと聞いて、初めは流石に過去のわだかまりがあるからかと思ったが、カミーユがアムロはクワトロ大尉、いやシャア・アズナブルを愛している。と言っていたのを聞いて、それならば何故?と、疑問に思っていた。しかし、この事実を知って納得した。アムロがシャアと行動を共にすれば自ずと子供の事も明るみに出る。そうなれば、ただでさえ脱走兵、いや研究材料として連邦に追われる身のアムロは子供を巡り、ネオ・ジオンからも追われる身となってしまう。
「はぁ、なるほどな…。」
ブライトは頭をかきむしると、ため息を漏らす。
「まったく、お前の人生は嵐の連続だな…。」
「ははは。嵐ついでに実を言うと。今、お腹にもう一人居るんです。あの人の子」
「はぁぁぁ!?」
ブライトの雄叫びが艦橋内に鳴り響いた。


ーーーあのダカールの夜。最後に一度だけでもとあの人に抱かれた。産後まだ生理も来ていなかったから大丈夫だと思っていたけれど、あの人に別れを告げてしばらくした後、身体の異変に気が付いた。
簡易検査薬で調べてみたらやはり陽性反応が出た。アルやセイラさんは複雑な表情をしていたけれど、(私自身もかなり戸惑ったが)正直私は嬉しかった。この子は間違いなく私とあの人が愛し合って出来た子だったから。
とは言え、やはりこの子の出自も決して公には出来ない。けれど今度こそ、あの人に真実を伝えたいと思う。そして、あの時の自分の決断が間違っていたことをあの人に謝りたい。
自分を信じて、あの人も子供も守ろうと思っていたら、あの人を失わなかったかもしれない。
いや、失われたわけじゃない。あの人は生きて居る。あの人の魂がこの世のどこにもいないとは思えない。ただの直感だけれど多分間違いない。

「ところでアムロ、お前カミーユの気配とかわからないのか?ほら、あのア・バオア・クーの時みたいに…。」
「う~ん。さっきから探ってはいるんですけどなんだかはっきりしなくて。なんて言うか、この街は雑音が多くて…」
「プルもそんな事言っていたな。」
「プル?」
「ああ、さっきここに居た10歳くらいの女の子だ。ジオンの強化人間でな。まあ色々あって面倒見てる。」
「強化人間…。」
その言葉にアムロは固まる。
「強化人間と言ってもジオンのだからな。お前とは関係ないはずだ。」
ブライトが慌ててフォローする。
「はい。わかってます。フォウの時とは違うから…。」
ーーーなぜ人工的にニュータイプを作ろうなんて思うのか…。ニュータイプは戦争の道具ではないのに…。けれど、1年戦争での自分の行動が"ニュータイプ"="戦争で役立つと"いう事を世間に認識させてしまった事も理解している。自分はただ死にたくなかっただけなのに…。


「あ、ブライトさん。大変だ。そのプルっていう子、腕を破損したMk-Ⅱで出撃していった。」
「なに!?」
「私が迎えに行きます。使える機体はありますか?」
「いや、捜索に全て出払ってる。」
「まずい!敵機と交戦してる!ここから20km北の方」
アムロは遠くに視線を向けて言う。
決して目視している訳ではない。
「何!?トーレス!ジュドー達に援護に向かわせろ!」
「了解しました!」
トーレスはジュドー達に通信しながらアムロに視線を送る。
『彼女には見えているのか?!それに艦長も何の疑いもなく彼女の言葉を信じてる…。』

しばらくして、遠くに視線を向けていたアムロがボソリと呟く。
「あ、カミーユを見つけた。海岸だ。」
「どの辺りだ?」
ブライトが言うのにアムロが目を瞑る。
「大丈夫。プルが見つけてファ達を案内してます。」
ほぅと息を吐くとアムロはフラリと椅子に座り込む。
「大丈夫か!?」
「ん。大丈夫です。色んな人の思惟が重なってチョット疲れました。ジュドーって子もニュータイプの素質があるんですね。他の子達も弱いけど…。カミーユがみんなに声を届けて助けてた。それをみんなちゃんと受け取ってましたよ。」
アムロのその言葉に、ブライトを除く艦橋に居たクルーは驚きを隠せない。


帰艦したジュドーが休憩室に飲み物を取りに来ると、そこには椅子に座り子守唄を歌いながら赤ん坊の背を優しくトントンと叩いているアムロの姿があった。
ジュドーはアムロが子供に向ける慈愛に満ちた表情に心が暖かくなるのを感じる。しかし、同時にその姿が昔、妹のリィナを寝かしつける母親の姿と重なって少し悲しくなった。
「リィナ…」
アムロはジュドーに気がつくと、優しく「おかえり」と声をかける。思わず「ただいま」と応えると、ジュドーは飲み物を手に取りアムロの横に座る。
『何だかこの人の側は居心地がいいな…。』
そんな事を思いながら、テーブルの上に腕を組み顎を乗せてアムロを見上げる。そして疑問に思っていた事を聞いてみる。
「ねぇねぇ、お姉さんがあのアムロ・レイなの?」
「"あの"っていうのはよくわかんないけどアムロ・レイだよ。女だったのが意外?」
「うーん。そうだね。ガキの頃何かで見た時は男だと思ってた。」
飾らず、思った事を素直に口にするジュドーにアムロは好感を抱く。
「ははは、そうだね、あの頃は男のカッコしてたからね。」
「何で男のカッコしてたの?」
「たいした理由じゃないよ。ウチは父親と二人暮らしでさ、その父親も仕事人間で殆ど家に居なかったから、女の子一人じゃ危ないってんで、男のカッコしておけって言われてたんだ。軍に入ってからも何となくそのまま…ね。」
「マジで!?」
「うん。ホント。」
「へ~。あ、それからさ、お姉さんはやっぱりニュータイプなの?何かさ、お姉さんからカミーユと同じ匂い(?)がしたんだけど。」
「同じ匂い?」
「うん。匂いっていうか感じっていうかそう言うのが同じ」
アムロはジュドーの直感に感心する。
「そっか…、そうなんだ。そういえば、ジュドーっだけ?君は何でここにいるの?他の子もみんな民間人だよね?」
「ああ~」ジュドーはバツが悪そうに頬をポリポリ掻きながら、
作品名:Lovin' you 6 作家名:koyuho