Lovin' you 8
モニターにアムロの顔が映し出される。
「アムロ!!」
艦橋に安堵の声が響く。
「お前大丈夫なのか?ジュドーは?」
「ジュドーはまだレウルーラの中だ。ネオ・ジオンのナナイ・ミゲル大尉に解放するよう頼んでおいたから大丈夫だと思う」
そうか…、とブライトは安堵のため息をつく。
「…シャアとは…話が出来たのか?」
アムロは悲しげな顔をすると「うん」と頷く。
「話したい事は全部話したよ。でも…私があの人を信じられなかったから…あの人をまた悲しませてしまった。」
「それに…連邦政府の対応があの人の箍を外してしまったんだ。あの人は純粋過ぎるから、地球の引力に引かれた人達を一掃して綺麗にしようなんて極端な行動に走ってしまう。誰かがあの人を止めて、正しい方向へ導かなければ…」
「アムロ…、お前バカな事考えていないか?」
ブライトはアムロの様子に嫌な予感覚える。
「ブライト、私がなんとしてでもあの人を止める!だから…、あの子達の事…お願い!」
「馬鹿野郎!俺はそんな事引き受けんぞ!何があっても帰って来い!!」
アムロは小さく「ありがとう、ブライト。大好きだよ」と笑うと通信を切った。
「アムロ!!」
ブライトの叫び声が艦橋に響く。
アムロはシャアのサザビーを目視すると全速力で追いつく。
「シャア!!」
「アムロ!来たか!」
νガンダムはサザビーに追いつくとビームサーベルで斬りかかる。
「シャア!バカな事はやめろ!!こんな事したら地球は人の住めない星になってしまう!」
サーベルでの打ち合いをしながらアムロは訴える。
「アムロ!言っただろう!地球の引力に引かれた愚か共を粛清し、人類全てを宇宙に上げなければ争いは終わらない!」
「そんな極論!!」
νガンダムはサザビーから離れるとファンネルで攻撃をする。
その攻撃をサザビーのファンネルが跳ね除ける。
お互い一歩も引かぬ攻防に息が上がる。
「流石だな、アムロ!それでこそ私の好敵手だ!」
「シャア!!貴方ならもっと他に方法があっただろう!!」
「愚民どもにその力を利用されている君には言われたくないな!!」
νガンダムのバルカン砲がサザビーのファンネルを撃墜する。その隙にサザビーのサーベルがνガンダムのビールライフルを切り裂く。
その頃、アクシズ内部ではブライト率いるラー・カイラムがアクシズへ爆弾を仕掛けていた。内部からアクシズを爆発し分裂させる作戦だ。
アクシズに取り付いたラー・カイラムの艦橋ではクルー達がアムロとシャアの戦いに見入っていた。
「凄い…。あんな動きをするモビルスーツ戦なんて初めて見た。ものすごいスピードだ…。ファンネルの動きも早すぎて俺たちじゃ追えない!でもあの二人には全部見えてるんだ!」
アムロとシャアの互角の戦いを皆が固唾を飲んで見守る。
「赤い彗星と白い悪魔…二人ともとんでもないパイロットだ!!」
爆弾を仕掛けて終わったクルーが帰艦すると、ラー・カイラムはアクシズから離脱する。
数分後、アクシズから爆炎が上がりアクシズが半分に分断された。
「何!?中からアクシズを爆発させたのか!チっブライトめ!!」
シャアは離脱するラー・カイラムを睨み付ける。
そこにνガンダムがサーベルで斬りかかる。
「シャア!!ここまでだ!アクシズは割れた!」
νガンダムの攻撃にサザビーはサーベルを切り裂かれる。しかしそれと同時にνガンダムのサーベルもサザビーのファンネルからの攻撃で吹き飛ぶ。
「まだだ!!」
お互い武器を失った状態で殴り合いの攻防となる。サザビーの蹴りがνガンダムの右脇に炸裂するとνガンダムがサザビーの首のパイプを引き千切る。
アクシズの爆発に巻き込まれながらも一歩も引かず打ち合う。そしてサザビーをアクシズへ引き倒しその岩場に打ち付けるとサザビーの脱出ポッドが作動し排出された。
「逃すか!!」
νガンダムは指から放ったトリモチでポッドを掴む。
「終わりだ!シャア!貴方の負けだよ!」
すると、シャアから笑いが漏れる。
「イヤ、私の勝ちだ!今計算したがアクシズの後方部はこのまま地球の引力に引かれて地球に落ちる。お前達の頑張りすぎだ!」
「ふざけるな!たかが石ころ一つガンダムで押し戻してやる!」
その頃、ラー・カイラムでもこの事実に艦橋内が騒然とする。
ブライトと副艦長のメランがアクシズの進路を確認する。
「アクシズの前方は離脱しますが後方は地球に落ちます。」
「軽くなって落ちない筈だ!!」
「爆発の勢いが大きすぎたんです!!」
「俺たちはシャアを手伝っちまったのか!?」
ブライトの悲痛な叫びが響く。
アムロはアクシズの先端へ取り付く。そしてサザビーの脱出ポッドをアクシズへ埋め込むとバーニアを全開で吹かす。
「正気か!?アクシズの落下は始まっているんだぞ」
「やってみなくちゃわからない!!私は貴方みたいに急ぎすぎてもいなければ人類に絶望してもいない!!」
アクシズの表面を熱が覆っていく。
そして、それと共にサイコフレームの蒼い光が宇宙に広がる。
すると、地球から無数のモビルスーツがνガンダム同様アクシズに取り付き、アクシズを押し始める。
「何だ!!やめろ!こんな事に付き合う必要はない!!」
アムロが叫ぶ、しかし後から後からどんどんモビルスーツが取り付く。
「大佐!!」
レウルーラではシャアの危機にナナイが叫ぶ!
そして、隣にいたジュドーもアムロの様子を察知し、顔に手を当てうずくまる。
「お姉さん!!駄目だ!!駄目だ!!」
ジュドーの脳裏に昔、初めて会った時のアムロの顔が蘇る。赤ん坊だったカイルを優しく見つめるアムロの顔が…。
ラー・カイラムの艦橋では、いつの間にか上がってきていたカイルとライラ、そしてアルがその光景をを見つめる。
「お母さん…、お父さん!」
カイルが呟く。その声にブライトが反応する。
「二人ともあそこに居るのか!!」
カイルはコクリと頷くとライラの手を握る。
「みんな!やめろ!!無茶だよ!」
アムロが叫ぶが誰も離れない
「ロンド・ベルだけにいい思いはさせませんよ!」
ジムのパイロットが笑う。
そして、ネオ・ジオンのギラ・ドーガまでが押し始める。
「地球が駄目になるかもしれないんだ!それに貴女が言ったんでしょう。ネオ・ジオンの人間全てがこの作戦に同意して居るわけじゃないって!」
「しかし!爆装している機体だってある!」
直ぐ横で一機が爆発して吹き飛ぶ。
「駄目だ!摩擦熱とオーバーロードで自爆するだけだぞ!!」
アムロは涙を流して叫ぶ!
「もういいんだ!みんな離れろ!!!こんなのは私たちだけで充分だ!!」
アムロの体からサイコフレームの蒼い光が放たれる。その光に弾かれ、モビルスーツ達が次々と離脱していく。
その光にシャアは顔をあげる。
「これは…サイコフレームの共振か…人の思いが重なり合って溢れている。…しかし不思議だ…恐怖は感じない。むしろ暖かい温もりに包まれているようだ。」
「そうだよ!人にはこの暖かい心があるんだ!」
アムロは激しく揺れる振動でシートから飛ばされパネルに体を激しく打ち付ける。
『うううっ、しまった…。肋骨が何本かいったか…。』
作品名:Lovin' you 8 作家名:koyuho