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月と太陽

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アムロ・レイが探し求めているのはおそらくシャア・アズナブルだ。1年戦争では好敵手として、先の戦争では同朋として戦った人物。
その整った顔立ちと金色の髪。そして金色のオーラを纏った自分たちの指導者となるべき男。
アムロ・レイがスウィートウォーターを訪れたのは、グリプス戦役で行方不明となったクワトロ・バジーナ大尉いや、シャア・アズナブルを探す為だろう。アムロはそのニュータイプ能力でシャアの居場所を感じとり、ジオンの拠点という危険を冒してでもやってきたのだ。
ナナイは目を閉じ深呼吸をすると心を決めた。
『アムロ・レイにシャア・アズナブルを会わせよう』と…。


翌日、ナナイから事情を聞いたシャアは、アムロと会うべくナナイの自宅へと車を走らせていた。
門を潜ると、ナナイが玄関先でシャアを待っていた。
「ナナイ、アムロは?」
シャアは逸る気持ちを抑えきれずナナイに詰め寄る。
「こちらです。ご案内します。」
「アムロの怪我はもういいのか?」
心を落ち着かせようとシャアがナナイに質問をする。
「はい。頭の傷もほぼ塞がりました。懸念された脳への損傷も検査の結果、異常ありませんでした。」
「そうか…。」
「ただ…、やはり記憶の方はまだ…。」
シャアは何も答えず眉を顰める。

案内された庭に出ると、笑い声が聞こえる。そこにはギュネイと共にベンチに座り、笑顔でハロを修理しているアムロの姿があった。
シャアは立ち止まり、眩しいものでも見る様に目を細めてその光景を見つめる。

「アムロ、俺さパイロットになりたいんだ!モビルスーツで戦ってみんなを守りたいんだ!」
意気揚々と語るギュネイにアムロは笑顔で答える。
「そっか凄いね!ギュネイならなれるよ!」
「アムロは?アムロは何になりたいんだ?」
ギュネイは25歳のアムロがパイロットだという事は分かっていたが、今、目の前にいる15歳のアムロは何になりたかったのだろうと思い聞いてみた。
「僕?僕は…。父さんみたいに技術者とかメカニックになりたいなぁ。」
ハロの修理を終え、持っていたドライバーをギュネイに向けて微笑む。

その笑顔にシャアは息を止める。
そして自分が見た事のあるアムロの顔を思い出す。
1年戦争の時にはサイド6での戸惑った顔とア・バオア・クーでの必死な顔。
カラバで共に戦った時には鬱屈とした己をどうする事も出来ずにいた辛そうな顔とそれを吹っ切った後の戦士の顔。
そしてもう一つ…。ダカールの夜、想いを通わせ身体を重ねた時の、はにかんだ笑顔…。
気付くとシャアは庭へと足を踏み入れ、アムロの前へと歩き出していた。

それに気付いたアムロがシャアを見つめる。
「アムロ…」
シャアは思わずその名を呟く。
アムロは不思議な感覚を覚え、目を見開いたまま動きを止める。そして…、
「貴方は…誰ですか?」
アムロからシャアにとって絶望的な言葉が発せられる。
『やはり分からないか…。』
予想はしていたが思った以上に胸に突き刺さる。
しかし、次の瞬間大きく胸が高鳴った。
アムロの美しい琥珀色の瞳から大粒の涙がポロポロと溢れ出したのだ。
自分でも何が起きているのか分からないのか、アムロは頬を流れる涙に触れ、困惑している。
「あれ?え?何だろう。どうして涙が…。すみません。いきなり…。あれ?どうしよう…止まらない。」
シャアは思わずアムロの腕を引き寄せるとその身体を己の胸の中に抱き入れる。
アムロはシャアになされるがまま、その胸に顔を埋めた。
その瞬間、シャアとアムロの間に宇宙が広がった。そして、アムロの脳裏を過去の風景が走馬灯の様に駆け抜けた。その衝撃にアムロは意識を飛ばすとシャアの胸の中に崩れ落ちた。
2人が見た景色を側にいたナナイとギュネイも目の当たりにしていた。
『これがニュータイプ同士の共感!?』
初めて感じたニュータイプ同士の共感にギュネイは立っていられず、その場に座り込んでしまった。

シャアは意識を飛ばしたアムロを大事そうに腕に抱えると、部屋の中へ連れて行きベッドに寝かせる。
「大佐…。アムロ・レイは…。」
ナナイは心配気にシャアに尋ねる。
シャアはベッドの端に座ると、アムロの柔らかい髪を梳きながら答える。
「先ほどお前達もアムロの記憶の波を感じただろう?急激なフラッシュバックで脳がオーバーロードしたのだ。」
ナナイは眠るアムロの顔を見つめて思う。
ーーーおそらく目を覚ました時には15歳の少年ではなく25歳の軍人、アムロ・レイなのだろう…と。
安堵すると共に少し残念な気もした。
"技術者なりたい"と夢を語った、あの純粋な少年にはもう会えないのだと…。

ふと、横を見るとギュネイも察しているのだろう。自分と同じ様に寂しそうな目をしてアムロを見つめていた。
そんな2人を見てシャアはクスリと笑う。
「いつの間にか、アムロは君たちの心に深く入り込んでしまっているのだな。」
その言葉にナナイは「ああ、そうなのだ」と思う。
「アムロは魅力的だろう?ニュータイプだからというだけではなく、アムロ・レイという人間に皆、魅せられる。私とてその1人だ。」
ギュネイもシャアのその言葉に頷く。

「あの日…、アムロは爆発の直前に危険を察知してた。多分…そのまま逃げれば爆発に巻き込まれることは無かったんだ。でも、アムロは戻って来た。そして俺を腕の中に抱え込んで庇ったんだ。」
ギュネイの瞳からホロリと涙が一筋溢れ落ちる。
「馬鹿だなぁ」
「ふふ、アムロらしいな。」
すると、アムロの手がギュネイへと伸びる。
「…ギュネイ…、君が無事で…良かった…。」
その長い睫毛がフルりと揺れると、その下から綺麗な琥珀色の瞳が姿を現した。
「アムロ!!」
ギュネイがその手を握る。
アムロはギュネイを見つめて微笑む。
そして、自分の髪を優しく梳く金色の男に視線を移す。
「シャア…、やっと見つけた。」
「ああ…」
シャアはそのアイスブルーの瞳をアムロにむけると優しく微笑む。
「記憶は…全部戻ったのか?」
アムロは目を閉じると「うーん」と考え込む。
「まだ…色々混乱してるけど、貴方の事はちゃんと分かるよ。」
「そうか…」
アムロは身体を起こすと、自分の手を握り続けるギュネイをそっと抱き締める。
「ギュネイ、ありがとう」
「何言ってるんだよ!お礼を言うのは俺の方だ!」
アムロはクスリと笑うと、ギュネイを離し向き合う。
「記憶の無い間、ずっと側にいてくれただろ?俺、昔は人付き合いが苦手で友達なんて幼馴染みのフラウぐらいしか居なかったんだ。だからギュネイはさ15歳の俺にとって初めての男友達なんだ。」
にっこり笑って話すアムロにギュネイの目から涙が溢れる。
「俺にとってもそうだよ!チクショウ!なんかいきなり大人っぽい口調になりやがって!さっきまであんなに可愛かったのに!」
「か、可愛っ!?」
アムロが顔を赤くするのを見てシャアが笑い出す。
「ははっは。私も可愛い15歳のアムロにもっと会いたかったな。」
「シャア!」
真っ赤な顔をして照れているアムロにギュネイも笑い出す。
そんなやりとりを側で見ていたナナイはそっと微笑む。
作品名:月と太陽 作家名:koyuho