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Lovin' you after CCA 2

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返事をするとハロの口が大きく開く。そしてウィーンというモーター音と共に小さな記憶媒体が中から現れた。カイルがそれを手に取るとハロの口が閉まり、またピピっと音がしてカイルの手から降り立ち床を跳ねる。
「ナナイさん。母からこれを渡すように言われました。」
カイルは手の中にある記憶媒体をナナイに手渡す。
「これは?」
ナナイは状況がよく分からずカイルに確認する。
「母が連邦の研究機関で被験体をしていた時のデータだそうです。母はこのハロをいつも持ち歩いていて、実験の際にも必ず連れて行ったそうです。このハロは母が改造をしたもので、カメラとマイクを内蔵し、研究所のコンピュータにもアクセスしてデータを抜き取っていたそうです。」
「アムロ・レイの実験データ!?」
ナナイは記憶媒体を両手で大事そうに握る。
「ハイ。父からナナイさんがニュータイプ研究所の所長だと聞き、母はこのデータをナナイ大尉に有効活用して欲しいと。…それから、そのデータを渡す代わりに、僕たちを一切実験に関わらせない事を約束して欲しいと言っていました。」
ナナイはシャアへと視線を送る。
「大佐…。こんな貴重なデータをよろしいんでしょうか?」
シャアはため息を漏らすとカイルの髪をクシャリと撫ぜる。
「アムロ…」
おそらく、できる事ならばこの忌まわしい記録は誰の目にも触れさせる事なく封印したかったであろう。しかし、子供達を守る為の取引材料として身を削る思いで差し出したのだ。もちろん、ナナイを信用し、彼女ならばこの取引に応じ、子供達に危害を加えないと信用した上での判断だ。
「ナナイ、アムロからも釘を刺されたな。そのデータは君に託そう。ニュータイプ研究に活かしてくれ。」
ナナイはシャアを見上げると大きく頷く。
「ハイ、大佐。アムロ・レイ大尉の決意を無駄にせぬよう、この貴重なデータを役立たせていただきます。」
「ああ、よろしく頼む」

カイルは少し切なげにシャアの顔を見上げる。
それに気付いたシャアはそっとカイルの肩を抱く。
「アムロが決めた事だ。お前が気にする事はない。」
「はい。…でも、いつもお母さんは僕たちのために自分を…。」
「そうだな。少しは私にも頼って欲しいのだがな。アムロの悪い癖だ。今度よく言っておこう。」
「うん」
カイルはシャアにしがみついて頷く。



ーーーそして、1ヶ月後ネオ・ジオンと地球連邦政府との間で停戦条約が結ばれ、ネオ・ジオンが要求するスペースノイドの自治権についての話し合いが始まった。

「大佐、明日ロンデニオンに入港後15:00より連邦政府との交渉に入ります。」
ナナイは手元の端末を操作し交渉の為の資料をシャアに送信する。
シャアはその顔に余裕の笑みを浮かべながら頷く。
「お父さん、なんだか余裕綽々って顔してます。」
カイルがシャアを見上げると、ふふんと笑みが返って来る。
「この1ヶ月遊んでいたわけではないのでな。」
今まで地球連邦政府からの圧政を恐れ、沈黙を守り続けていた各コロニーの代表への根回しと、アデナウアー参謀次官を始め今回のアクシズ売却に関わった高官達にも圧力や裏工作をした。そして、今回のアクシズ降下作戦そのものを無かったものとしてネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルへの制裁は下されない事になっている。
「この宇宙空間で生きていく為、スペースノイドはこれからもっと進化していく。その際たる存在がニュータイプだ。そしてその革新を妨げる古い体制を改革してゆかねばならん。私はネオ・ジオンの総帥としてだけでなく、スペースノイドの未来を切り開く者としてお前達やアムロに恥じない生き方をしなければと思う。」
シャアは暖かな眼差しをカイルへと向ける。
そして、その眼差しにカイルは「うん」と頷く。

ナナイはそんな2人を見つめ、あの時捕虜として囚われたアムロ・レイが訴えていた事を思い出す。

『そうじゃない!シャア!貴方ならもっと他の方法で人々を導く事が出来るだろう?ネオ・ジオンの人々が貴方を支持するのはそれが出来るとわかっているからだ!だから!考え直してくれ!その為なら何だってするから』

彼女が側にいれば大佐はそのカリスマ性と手腕を発揮してスペースノイドを導いて行ってくれるだろう。
彼を愛していた…。今でも大切な人だと思っている。しかし、己の全てを、命までも投げ打ってまで彼を愛する彼女には敵わないと思う。彼女の人となりを知ってしまったからかもしれないが不思議と悔しい気持ちは湧いてこなかった。

「大佐、ロンド・ベルのラー・カイラムも明日ロンデニオンに入港の予定です。明日の交渉後の予定は全てキャンセル致しました。翌日もレウルーラの補給の為ロンデニオンに停泊の予定です。」
ナナイのその報告にシャアが目を見開く。
そして小さく微笑むと「ありがとう」と告げる。

地球連邦政府との交渉後、シャアはナナイ、ギュネイ、カイルを伴いロンデニオンでも屈指のホテル内のある一室へと向かっていた。
扉をノックすると同時に扉が開き、シャアの元へ金髪の少女が駆け寄る。
「お父さん!!」
駆け寄った少女、ライラはシャアの胸に飛び込むとギュッと抱きつく。
「お帰りなさい!!」
シャアはライラを抱き上げると、その頬にキスを贈る。
「ああ、ただいま。ライラ、いい子にしていたか?」
「うん!」
シャアの首にしがみつくライラを片手に抱き、その頬をそっと撫でる。
「しかし、ライラ。危ないぞ。扉の外に居たのがもし危険な人物だったらどうするんだ。」
自身に敵意を持っている輩の多いシャアは、常に危険に気を配り、慎重に行動する事を心掛けている。子供であるライラにそれは難しいと思いつつも、今後は気を配るよう言い聞かせる。
しかし、ライラはキョトンとして何を言っているんだろうと首を傾げる。
「ええ!だってお父さんが来たってわかったもん。」
その言葉にシャアは「ああっ」と思う。
『この子もやはりニュータイプの素質があるか…。それもかなり強い。アムロ…、いやもしかするとカミーユ並みか…』
シャアが考えに耽っていると部屋の中からクスクスと笑い声が聞こえる。
「シャア、後ろでナナイ大尉達が困ってるよ。とりあえず皆んなを中に案内して。」
制服ではなく、白いノーカラーのブラウスに紺色のスカートのアムロが姿を現わす。

「アムロ!!」
シャアはライラを抱えたまま反対の腕でアムロを抱きしめる。
「ちょっ!シャア!みんな見てるから!」
顔を真っ赤にして焦るアムロの耳元で、「会いたかった」と囁くと更に顔を真っ赤にしてアムロが固まる。
そして涙目になりながら小さい声で「私も」と答える。
シャアがそのままの勢いでキスをしようとするとアムロは腕を突っ張って逃げ出した。
部屋を見ると、ブライトとジュドー・アーシタ、そしてアルフレッド・ウォレスが居た。
シャアは仕方ないなと溜め息を吐く。
アムロはシャアの横をすり抜け、ナナイの元へ駆けよった。
「ナナイ大尉。その節はありがとうございました。」
にっこり微笑みながら右手を差し出す。
ナナイは微笑みを返すとアムロの手を取り握手を交わした。
「こちらこそ貴重なデータをありがとうございます。」
作品名:Lovin' you after CCA 2 作家名:koyuho